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第4話

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「せいかーい」



父の緊張した声音に反してあたしは軽やかに言葉を紡いだ。



「凄いじゃない、お姉ちゃん」



最初に祝いの言葉をくれたのは妹のシベハだった。



「疑うわけじゃないけど、本当なの?マーヘン」



前もなくあたしの言葉を聞いた母には眉唾ものなのだろう、確認を取ってくる。



「うん、本当だよ」



「・・・そう、おめでとう、マーヘン」



母もあたしに祝言をくれた。



「・・・やるのぅ、マーヘン。はて?わしも老いたようじゃな。マーヘンが世界大会に出るにはあと二、三年はかかると思っていたのじゃが。それほど、最近のマーヘンの成長が早かったってことかのぅ。とにかくおめでとう」



母の言葉の後、しみじみと祖父があたしに言ってくる。



「私も父さんと同じ意見だったのだが・・。おめでとう」



祖父に続いて父もあたしに祝言をくれた。



「ありがとう!」



あたしは家族全員に、今日飛び切りの笑顔を見せた。



「マーヘン、1つ聞いていいか?」



しばらくして父があたしに尋ねてきた。



「うん、いいけど。何?」



「できれば、選ばれた経緯を話してくれないか?」



「おお、わしも聞きたいぞ」



「私も!」



「そうね私も聞きたいわ。何といっても我が家で初めての事ですもの」



みんなが聞いてくる。

そうなのだ。母の言った通り、我が家で世界大会に選ばれたことのある人は誰もいない。

祖父も父も選ばれるくらい強かったのだが、如何せん運がなかったらしい。2人とも若い時から世界中の戦場を駆け巡り、そのためか、参加の機会に恵まれなかったのだ。



ここで世界大会というものを詳しく話しておこう。世界大会とはいくつかある大陸・・・といっても現在では五大陸とされている・・・の中での頂点を決める大会のことである。



あたしが住んでいる世界ではズバリ!強いものが偉いという概念が確立されている。もっとも国王や都王など、例外が存在するけどね。



大会の形式は勝ち抜き戦で、一日二試合、準決勝や決勝のみ、一日一試合計七日間にわたって行われる。



出場者数は大体決まっている。あと、決勝戦の前は、一日空くらしい。詳しいことは不明、たいした問題でもないしね。



そして出場者の選定は国王が各地に派遣させた人によってされる。

一人によって選定はふたりまでとされており、ふさわしいと思う人物がいないと判断したなら選ばないこともできるみたい。



でも、過去に二人選ぶのを一人にする人がいるくらいで、一人も選ばないというのは例がないんだって。なぜかというと、仮に、選ばれた人が上位に入賞すると、その人を選んだ人にも褒美が与えられるらしいわ。



当然、優勝者を選んだ人は褒美もより高い。つまり強い人を見極めるということも高く評価されるってことね。



次に世界大会で上位入賞、はたまた優勝したらどうなるかということだけど。



まず、上位入賞・・・属に言うベスト4・・・すると名誉とお金が得られるわ。ようするに、名前が売れてしかも賞金が入るってことね。んでもって優勝すると、この上に地位と権力が手に入るの。



これはどういう事かというと、この世界で一番偉く、海術士でもルフトでもクラフトでもないとされる国王の下で数ある特殊部隊を統括する長として仕えることができるわ。



これは各地の『都』と呼ばれる大陸を治めている都王と同等位の地位を与えられることと同じなのよ。でもここ八年優勝者は代わっていないわ。



バガルト・スターリン、彼は史上最強と謳われているわ。



それも今年で終わりだけね。えっ、なんでかって?それはあたしが倒すからよ。



まあ、冗談は置いておいて彼は二十歳のときに優勝したの、最年少でね。本当の化け物なんだろうなー。前からあってみたいと思っていたのよねー。まあ、世界大会についてはこんなとこね。
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