5 / 83
第5話
しおりを挟む
「うーん、詳しくと言われてもねー。何ていったらいいか・・・」
あたしがみんなの質問にどう答えたらいいか迷っていると外から馬のいななきが聞こえてきた。
「ヒヒーン」
「あっ、もう迎えの人が来ちゃった」
「迎え?」
母が不思議がる。
「うん。世界大会出場者は試合開始の十日前から会場に入って、いろいろ手続きがあるらしいの。家まで迎えが来るって言ってたんだけど・・・。あたしが家に着くのが遅かったみたいね。予定では一日泊まっていけるはずだったのに・・・。」
「お姉ちゃん、せっかく久しぶりに帰って来たのにもう行っちゃうの?」
あたしが愚痴をこぼすとシベハが間髪入れずに聞いてくる。
「えっ、ええ。そうなるわね・・・」
悲しそうな妹の顔に目を向けないようにしてあたしは答えた。だって、悲しむ顔なんて見たら辛いんだもん。あたしって人の感情変化に敏感だから。
「これ、シベハやマーヘンだって忙しい中帰ってきてくれたんじゃぞ。あまり、マーヘンを困らしちゃいかん」
「・・・はい」
祖父がシベハを嗜める。
「ごめんね、お姉ちゃん」
「あは、あはは。いいのよシベハ、私の方こそごめんね。ゆっくりしていらねなくて」
「ううん。今度帰る時はゆっくりしていってね」
シベハがあたしに謝って来てくれた。なにはともあれ、よーし、ナイス爺ちゃん。このままじゃ、不完全燃焼になるところだったわ。
トントントン
ちょうどその時誰かがドアをたたいた。あーあ、もう家の前まで来ちゃった。
「はーい、どなたですか?」
母が来訪者に声を掛けながらドアまで歩いていく。
「私は国王から派遣されたものです。マーヘン様をお向かいに上がりました」
緊張しているのだろうか、何やら強ばった声が返された。あーあ、本当に来るのはやいなー。まあ、待ちに待った世界大会に出れるんだから良しとするかな。
「はーい。今開けます」
母が鍵を開ける。
ガチャ
それからまもなくしてドアがゆっくりと内側に開けられた。
ドアの向こう側に立っていたのは案の定、王国に仕える者であった。・・・
まあ、これで違ったら殴ってただろうけど・・・。全身を赤色に染めた動きやすそうな服を着ている。服装で目立つ点と言えば“袈裟”をつけているところだろう。
王国に仕えるものの証である。色によって階級があるらしい。今尋ねてきた男は黄色で統一されている。
どの色の“袈裟”も変わりなく、王国の象徴である“獅子”が刺繍されている。
ちょうどいいから、あとで誰かに階級の色について聞いてみよーっと。
身長はあたしぐらいで体格はあまりよくないわね。武器も持ってないみたいだし。まっ、海術士やらルフトだったら武器を持っていようがいまいが関係ないんだけどね。
「ねえ、すぐに行かないと行けないの?」
あたしがみんなの質問にどう答えたらいいか迷っていると外から馬のいななきが聞こえてきた。
「ヒヒーン」
「あっ、もう迎えの人が来ちゃった」
「迎え?」
母が不思議がる。
「うん。世界大会出場者は試合開始の十日前から会場に入って、いろいろ手続きがあるらしいの。家まで迎えが来るって言ってたんだけど・・・。あたしが家に着くのが遅かったみたいね。予定では一日泊まっていけるはずだったのに・・・。」
「お姉ちゃん、せっかく久しぶりに帰って来たのにもう行っちゃうの?」
あたしが愚痴をこぼすとシベハが間髪入れずに聞いてくる。
「えっ、ええ。そうなるわね・・・」
悲しそうな妹の顔に目を向けないようにしてあたしは答えた。だって、悲しむ顔なんて見たら辛いんだもん。あたしって人の感情変化に敏感だから。
「これ、シベハやマーヘンだって忙しい中帰ってきてくれたんじゃぞ。あまり、マーヘンを困らしちゃいかん」
「・・・はい」
祖父がシベハを嗜める。
「ごめんね、お姉ちゃん」
「あは、あはは。いいのよシベハ、私の方こそごめんね。ゆっくりしていらねなくて」
「ううん。今度帰る時はゆっくりしていってね」
シベハがあたしに謝って来てくれた。なにはともあれ、よーし、ナイス爺ちゃん。このままじゃ、不完全燃焼になるところだったわ。
トントントン
ちょうどその時誰かがドアをたたいた。あーあ、もう家の前まで来ちゃった。
「はーい、どなたですか?」
母が来訪者に声を掛けながらドアまで歩いていく。
「私は国王から派遣されたものです。マーヘン様をお向かいに上がりました」
緊張しているのだろうか、何やら強ばった声が返された。あーあ、本当に来るのはやいなー。まあ、待ちに待った世界大会に出れるんだから良しとするかな。
「はーい。今開けます」
母が鍵を開ける。
ガチャ
それからまもなくしてドアがゆっくりと内側に開けられた。
ドアの向こう側に立っていたのは案の定、王国に仕える者であった。・・・
まあ、これで違ったら殴ってただろうけど・・・。全身を赤色に染めた動きやすそうな服を着ている。服装で目立つ点と言えば“袈裟”をつけているところだろう。
王国に仕えるものの証である。色によって階級があるらしい。今尋ねてきた男は黄色で統一されている。
どの色の“袈裟”も変わりなく、王国の象徴である“獅子”が刺繍されている。
ちょうどいいから、あとで誰かに階級の色について聞いてみよーっと。
身長はあたしぐらいで体格はあまりよくないわね。武器も持ってないみたいだし。まっ、海術士やらルフトだったら武器を持っていようがいまいが関係ないんだけどね。
「ねえ、すぐに行かないと行けないの?」
0
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
勇者の隣に住んでいただけの村人の話。
カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。
だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。
その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。
だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…?
才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。
彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる