その女剣士は世界を救い、英雄となる。

第6話

男がおずおずと家に入ってきたのを見計らってあたしが声をかける。



「はい。あなたを推薦されたカローレン様からもお聞きになられたでしょうが、いろいろと手続きがあるものですから・・・」　　　　　　　　



やけに緊張して答えてくる。

ははーん、さてはこいつ・・・。



「そう。それなら仕方ないわね。」



あたしが答える。ふぅ。迎えに来た男がこっそりと安堵のため息をついたのを見過ごすあたしではない。ちょっとからかってやろーと。



「それはそうと、あなた・・・新米でしょ？しかも海術士！」



あたしが男に確信を持って尋ねる。



「なななななんですか、急に」



「あなた、怖いんでしょ？こんなクラフトだらけの村にいるのが。」



男の戸惑いまくりの返事を無視してさらに追及するあたし。



「そっ、そんなことはありませんよ、マーヘン様」



自分でも落ち着いていないのを認識したのだろう、先程よりかは落ち着いて男が答える。



「本当のことを言ったほうがいいんじゃないかしらー」



あたしが自分でも分かるくらい、嫌味っぽくいった。

こういうのみるとあたしのからかい魂が燃えるのよねー。



「はっ、はい。すみませんでした。マーヘン様のおっしゃった通りでございます」



やけに素直に答えてくる。・・・全然根性ないでやんのこいつ。



「・・・で？」



「はっ？『で？』とは、何でしょうか？」



戸惑いがちに男が尋ねてくる。



「決まってるでしょ、何でうそついたかって事よ」



「はあ、いや、その・・・」



あたしの問いに歯切れが悪くなる男。



「あんた、舐められたら自分がひどい目に遭うと思ったんでしょ？」



「・・・」



男が無言になった。

ありゃ、図星みたい。



「あんたまだ、あたしたちクラフトが海術士やルフトを恨んでいると思ってるの？くやしいけどそういう連中は確かにまだいるけどね。少なくともこの村の人たちは昔のことは忘れて前を向いて生きてるわ。今更あんたたちに文句言っても仕方ないけど・・・あんたたちはあんたたちなりの大義があったと思ってしたんだろうから、堂々としてなきゃダメなのよ。仮にあんたが子供だったとしてもね。」



「・・・はい」



あたしの言葉に男がうなずく。ちょっと、説教くさかったかなー。まあ、いいっか。この子のためになるだろうしね。