その女剣士は世界を救い、英雄となる。

千石

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第53話

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「なるほど。少なくともそれなら私はひとたまりもないな」

あたしの話を聞き終えて第一声をあげたのは『審査するもの』だった。

「お前がそれでいいと納得しているのなら私は何も言わんが?」

“箱”が『審査するもの』に確認をとる。

「ああ、それで頼む」

『審査するもの』がレベンとあたしに向かって頭を下げる。

「悪いな。手間を掛ける」

「気にしないで。好きでやっていることだから。ね?レベン」

あたしの言葉にレベンは頬を掻きながら、

「いや・・・まあ・・・否定はしないけどさ」

「何照れてんの?」

「そこは気にしないでよ!」

まっ、いっか。

「ありがとう。お前たちのことは一生忘れない」

今度は“箱”、レベン、あたしに向けて言った。

なんか『審査するもの』が一生って言うとすごく重く感じるわ。

「そう言えば、名前を聞いてなかったな。教えてはくれぬか?刻み込んでおきたい」

「レベン・アインターブだよ」

一番最初に答えたのは以外にもレベンだった。

恥ずかしいのか、目線をそらしている。

「マーヘン・リバースよ」

続いて答えるあたし。

「私の名前は・・・だめだ、答えられない。まだ実物が生きているようだ。いつか、直接聞いてくれ」

へー、そう言うもんなんだ、思念体って。妙なところで感心するあたし。

「レベン・アインターブ」

「はい?」

「お前との戦いは、私のこれまでのものの中で最高のものだった。楽しかった。礼を言う」

「僕も楽しかったよ。その分恐かったけどね」

・・・恐かったなんて本当かしら?

あたしの疑問などお構いなしに話は続く。

「マーヘン・リバース」

「あっ、ええ。何?」

考え中だったために、慌てて聞き返す。

「君が止めてくれなかったら、どちらかが倒れていた。ありがとう。君の慈悲深さには頭が上がらない。できれば、本気で戦ってみたかったがそれは仕方がない。」

「やーね、買い被りすぎよ」

顔の前で手をパタパタしながら否定するあたし。

「・・・そして名のれぬ人間よ」

「おう」

“箱”が堂々と返事をする。

「そなたの長年にも渡る探索。私は言葉では言い表わせないくらい感謝している。本当にありがとう。そなたの人生のほとんどを潰してしまってすまない」

そう深々と頭を下げた。
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