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第224話 剣術大会本戦㉒

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「ミリーナ、助かった」

「ルークっ!?」

レイとの戦いが終わったあとルークはミリーナとヒルダのところへ来ていた。

「あたし何かしたっけ?」

ミリーナが不思議そうに聞いてくる。

ちなみに先程の活躍のおかげか周りの席の観客達が「おい、ルーク選手だぞ」「サイン貰おうかな」などと小声で騒いでいた。

「ああ。レイにやられる瞬間叫んでくれただろう?あれがきっかけで勝つことが出来た」

「えっ!それは良かったわ。あたしは思わず叫んじゃっただけだからあんまり気にしないで」

ミリーナが照れながらそう答える。

「おかげで助かった。ありがとう」

ルークが再度礼を言う。

「ど、どういたしまして」

ミリーナが顔を真っ赤にして返事をする。

「あのときのミリーナは必死だったものなぁ。隣にいた我まで驚いてしまったわぃ」

そこでヒルダがからかうように言うと、

「も、もうヒルダちゃんたら」

ミリーナが照れ隠しにヒルダを揺さぶる。

「お、お、お、や、やめよ、目が回るっ!」

ヒルダが困ったように言うが自業自得かもしれない。

「ふっ」

ルークはそんな2人の様子を見て思わず笑みがこぼれたのだった。




「・・・驚きました。まさかあのレイ選手が負けるなんて」

貴賓室にいたボルン領主が驚愕を隠しもせずにそう呟く。

ボルン領主とて『鬼人』のことは知ってはいた。

だけど、『剣術大会』3連覇中のレイには及ばないと思っていたのだ。

「ふははははっ!何を言っておる領主よ。あやつはジークムント王国最高警戒対象人物『魔人鬼』ルークだぞ。当然の結果だろうが」

バグラス大将軍がとても楽しそうにそのように言い切った。

「・・・そのようですね」

ボルン領主は素直にバグラス大将軍の言うことに同意する。

「かっかっかっ!素直は美徳じゃ!おや、メリッサ殿どうしたかの?」

バグラス大将軍がボルン領主にそう言ってから冷や汗すら書いているメリッサを見て楽しそうに尋ねる。

「い、いえ何でもありません」

「そうか?まあいい。次は儂の試合じゃ。行ってくるとする」

そう言うと深くは聞かずリングに向かって歩いていった。

(なんてことなの)

メリッサは酷く動揺していた。

(ルーク殿は利き腕を一度も使っていない)

それは、先日バグラス大将軍の言っていた通りだったからだった。

(格が・・・違いすぎるわ)

メリッサとて誉れある近衛騎士隊長なのだ。

セインツ王国の中でも剣の腕で言えば上から数えたほうが早いという自負があった。

王国一の相手だろうと互角とまでは行かなくとも良い勝負をするとも思っていた。

だが、ルークの戦いを見てその自信が崩れ去っていくのを感じていた。

(ジークムント王国最高警戒対象人物か)

バグラス大将軍の先程言った言葉が妙に頭に残ったのだった。
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