他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

第90話

「う・・・」

周りが騒がしくなったせいだろうか寝ていたリンダが目を覚ます。

「はっ、バルム様！申し訳ございません！！」

すぐに目に入ったアリシアの姿を見て謝る。

恐らく付き添ってくれているのに自分だけ寝ていたことに対しての謝罪のつもりなのだろう。

「リンダさん、謝る必要はございませんわ。私《わたくし》がお休みになられるようにおすすめしたのですから。それよりも連れ去られたのはその子でお間違いありませんか？」

アリシアは苦笑をしながら答えると、リンダの左隣を手の全体を使って示す。

「え？」

リンダはアリシアが何を言っているのかピンときていなかったがひとまず自分の隣を見る。

そこには可愛い寝顔の子どもが横になっていた。

「キャミー！！あ、ああ・・・無事で良かった」

リンダはすぐに子ども・・・キャミーを抱きしめた。

キャミーはこの騒ぎの中でも起きる気配はなくぐっすり眠ったままだ。

リンダは涙を流したまましばらくの間、キャミーのことを抱きしめた。

「・・・あなたがキャミーをつれて帰って来てくださったのですか？」

少し落ち着いたリンダがアリシアの左後方に控えていた少年を見て尋ねる。

「そうですよ。その様子ですと、私が間違えて連れ戻して無かったみたいで安心しました」

グレイが、ホッとしながら答える。

「この度は本当にありがとうございました。連れ去られたのはこの子で間違いありません。アリシア様に対してもですがどのようにこの御恩をお返しすれば良いのでしょうか？」

リンダが涙を流しながら礼を言う。

「運良く通りかかってやれることをやっただけですから気にしなくて良いですよ」

グレイがそう言うと、

「私《わたくし》にもですわ。お気になさらないでください」

アリシアが後に続く。

「あなたが無事助かったのは最初に女性の方があなたの血が流れないように必死で押さえてくれていてくれたことが大きいですので機会があればその方にだけ御礼をしてくださればと思いますわ」

アリシアが最初に付き添っていてくれた同年代くらいの女性のことを思い出す。

「確かにそうですね。是非ともそうしてください」

グレイも思い出しながら同意する。

「お二人共本当にありがとうございます。お二人の他にもそのような方もいらしたのですね。今はどちらにいらっしゃるのでしょうか？」

リンダがアリシアとグレイに礼を言うと、もう一人自分のために手を尽くしてくれた人がいると聞いて尋ねる。

「恐らく騎士の詰所で事情を聞かれていたとは思いますが、流石に今は開放されていると思いますのでどこにいるかまでは分かりませんね」

アリシアがリンダに答える。

「・・・そうでしたか」

リンダは残念そうに呟く。

「すみませんが今こちらに騎士の方が到着する前に色々お聞きしてもよろしいですか？」

グレイがリンダにそう話しかける。

「・・・もちろんです。何でもお聞きください」

直接キャミーを救出に行ったグレイが聞きたいことといった理由が何なのか、リンダには容易に予想ができたため覚悟をしながら快諾した。