172 / 488
第171話
しおりを挟む
「・・・」
ユイが去っていった訓練室では、グレイは沈黙していた。
(くそぉ、先生め。変なことを言うから気まずいじゃないか・・・)
ユイが去りぎわに喋ったからかいの言葉にグレイは完全に平常心を欠いていたのだ。
気まず過ぎてアリシアの顔を見ることが出来ない。
「・・・グレイ。時間が勿体無いですので早速始めましょうか?」
「あ、ああ」
しかし、アリシアは全く気にした素振りも無くグレイに声をかける。
グレイはアリシアの落ち着いた声のお陰でアリシアの方を向くことが出来た。
密室でグレイと二人きり。
アリシアとて年頃の少女だ。
意識していないわけではない。
だが、
(今は一週間という短い時間を有効活用すべき時、グレイの【魔法武闘会】参加のためにも尽力致しますわ)
今はグレイの【魔法武闘会】参加のための確率を少しでも上げる。
これ以外の考えは今のアリシアにとっては優先するものではなかった。
「ふぅ・・・よし・・・」
グレイはアリシアの様子を見て段々と落ち着きを取り戻す。
そして、アリシアに向かって頭を下げる。
「よろしくお願い致します」
「よろしくお願い致しますわ」
アリシアも同様に頭を下げると自然体でグレイの方に向く。
一方、グレイはすぐに動けるように膝を曲げ、今にも走り出すような構えをする。
アリシアもグレイもルールの確認はしない。
何故ならばあらかじめ決めてあったからだ。
すなわち、
・【魔法武闘会】のルールに則ったものであること。
・手加減をしないこと。
である。
「・・・」
「・・・」
2人は、沈黙しお互いの様子を伺う。
(・・・とんでもないプレッシャーだ。あの執事やマドッグのような殺気こそはないにしてもそれ以外の気配は全く劣っていないぞ・・・)
グレイはアリシアと初めて対峙することでアリシアの凄さが身に染みて分かった。
3大貴族であるバルム家の長女、魔法学園の首席、膨大な魔力保有者といったアリシアを現す様々な言葉が頭をかすめたが、グレイが感じたのはたった一つであった。
(これが、アリシアか・・・)
と。
一方、グレイと対峙しているアリシアは、
(おかしいですわ。これがグレイなのですか?)
マギーとの戦い、ゾルゲとの戦い、あの執事との戦い、グレイの戦闘の全ては無いにしてもある程度は見てきたアリシアではあるが、自身がグレイと対峙することは当然無かった。
そんなアリシアが感じるのはたった一つ、『困惑』であった。
目の前の男から感じるのは吹けば飛ぶようなか弱い気配だけなのである。
グレイの戦闘の時に感じたはずの威圧感は全くないのだ。
「・・・そういうことなのですわね」
アリシアはその理由に気がつき、
「一度、中断しましょう」
そう提案したのであった。
ユイが去っていった訓練室では、グレイは沈黙していた。
(くそぉ、先生め。変なことを言うから気まずいじゃないか・・・)
ユイが去りぎわに喋ったからかいの言葉にグレイは完全に平常心を欠いていたのだ。
気まず過ぎてアリシアの顔を見ることが出来ない。
「・・・グレイ。時間が勿体無いですので早速始めましょうか?」
「あ、ああ」
しかし、アリシアは全く気にした素振りも無くグレイに声をかける。
グレイはアリシアの落ち着いた声のお陰でアリシアの方を向くことが出来た。
密室でグレイと二人きり。
アリシアとて年頃の少女だ。
意識していないわけではない。
だが、
(今は一週間という短い時間を有効活用すべき時、グレイの【魔法武闘会】参加のためにも尽力致しますわ)
今はグレイの【魔法武闘会】参加のための確率を少しでも上げる。
これ以外の考えは今のアリシアにとっては優先するものではなかった。
「ふぅ・・・よし・・・」
グレイはアリシアの様子を見て段々と落ち着きを取り戻す。
そして、アリシアに向かって頭を下げる。
「よろしくお願い致します」
「よろしくお願い致しますわ」
アリシアも同様に頭を下げると自然体でグレイの方に向く。
一方、グレイはすぐに動けるように膝を曲げ、今にも走り出すような構えをする。
アリシアもグレイもルールの確認はしない。
何故ならばあらかじめ決めてあったからだ。
すなわち、
・【魔法武闘会】のルールに則ったものであること。
・手加減をしないこと。
である。
「・・・」
「・・・」
2人は、沈黙しお互いの様子を伺う。
(・・・とんでもないプレッシャーだ。あの執事やマドッグのような殺気こそはないにしてもそれ以外の気配は全く劣っていないぞ・・・)
グレイはアリシアと初めて対峙することでアリシアの凄さが身に染みて分かった。
3大貴族であるバルム家の長女、魔法学園の首席、膨大な魔力保有者といったアリシアを現す様々な言葉が頭をかすめたが、グレイが感じたのはたった一つであった。
(これが、アリシアか・・・)
と。
一方、グレイと対峙しているアリシアは、
(おかしいですわ。これがグレイなのですか?)
マギーとの戦い、ゾルゲとの戦い、あの執事との戦い、グレイの戦闘の全ては無いにしてもある程度は見てきたアリシアではあるが、自身がグレイと対峙することは当然無かった。
そんなアリシアが感じるのはたった一つ、『困惑』であった。
目の前の男から感じるのは吹けば飛ぶようなか弱い気配だけなのである。
グレイの戦闘の時に感じたはずの威圧感は全くないのだ。
「・・・そういうことなのですわね」
アリシアはその理由に気がつき、
「一度、中断しましょう」
そう提案したのであった。
177
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる