他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

千石

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第214話

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「ゾルム様のお屋敷は本当に広いですね」

グレイはムスターと屋敷の周りを並んで歩きながら改めてその広さに驚く。

「ええ。全くその通りです」

ムスターはグレイの言葉に同意しながらも周囲におかしなところは無いかを隙なく観察する。

グレイもグレイなりに周囲を観察しながら、

「ムスターさんはいつからゾルム様の元で働かれているのですか?」

気になっていたことを尋ねる。

「そうですね。旦那様がグレイさんよりも小さな頃からですから30年と少しは経ちますね」

ムスターが思い出すようにして答える。

「30年ですか。長いですね。それでゾルム様はあんなにもムスターさんを信頼されているのですね」

グレイは驚きながらもなるほどと頷く。

「ありがたい限りです」

グレイの言葉にムスターが嬉しそうに返事をする。

「ムスターさんはどういう経緯でこちらに勤めることになったのですか?」

グレイは隣に歩く底の知れない自分やゾルムよりもはるかに長生きをしているムスターが執事という仕事をし始めたきっかけが気になっていた。

「・・・」

ムスターは無言のまま、隣にいるグレイを見てから、

「グレイさんになら話しても良いかも知れませんね。今から言う事は他言無用でお願いしても良ければお話しますがいかがでしょうか?」

「えーっと、それはアリシア様に対してもですか?」

グレイはアリシアに対する隠し事はなるべくしたくないため、確認をする。

「そうです。アリシアお嬢様でしたらその内お話することになるかと思いますが時が来れば私からお話ししますので黙っていてくださればと思います」

ムスターの言葉にグレイは少し考える。

(いつかアリシアさんにも話すつもりがあるってことかな?・・・それなら、良いかな)

「畏まりました。お聞かせください」

「・・・立ち話もなんですから、あちらに座りましょう」

ムスターは屋敷の周りの大きな庭にあるベンチを示しながらそう提案する。

「はい」

グレイの返事を聞いたムスターは先に進むとベンチを一つ動かし対面になるように設置する。

「どうぞ、おかけください」

「ありがとうございます」

グレイが座るとムスターが失礼しますと言いながらベンチに座る。

そして、グレイの目を見て、

「私がこちらに来た時の事を話す前に、私の事を話さねばなりません。実は私は純粋な人ではありません。父は人ですが、母は・・・エルフだったのです」

と自らの生い立ちを話す。

「おや・・・余り驚きませんね。やはり、気づいてい居たのですね」

ムスターはグレイの反応を見て、そう結論付ける。

グレイは誤魔化すことも出来たが、自分を信じて話してくれているムスターに対してそのような真似はしたく無かった。

「はい。薄々ですが、気づいておりました」

そのため、正直に答える。

ムスターはグレイの言葉に納得したように頷き、

「やはりグレイさんは流石ですね。どうりでアリシアお嬢様が全幅の信頼を寄せている訳です」

「ありがとうございます」

グレイはムスターのアリシアが自分の事を信頼しているという言葉に嬉しくなりながら礼を言う。

「いえいえ、事実を言っただけですからお気になさらないでください。話を戻しますと私が生まれた時は家族三人楽しく暮らしておりました。とは言いましても、両親の親・・・私から見て祖父母に当たる方々や両親の親戚からは気に入られておりませんでした。ですので、あまり他人と関わることはせず、ひっそりと暮らしておりました」

当時を思い出しているのだろう。ムスターが懐かしそうに話す。

「私としましても3人だけで暮らすのに不満は持ったことはありませんでした。しかし、その内状況が変わりました。もう100年以上前ですが、父が亡くなったのです。寿命ですね」

ムスターが寂しそうに語る。

「それからしばらくの間は母と二人で暮らしていたのですが、母も寂しかったのでしょう。父が亡くなって数年した頃に母の故郷に戻ることになりました。いわゆるエルフの国というやつですね。人との間に子を持った母はしばらくの間、エルフの国に入ることもできませんでしたが、私共々暮らして良いということになりそれから数十年の間エルフの国で暮らすことができました」

ムスターが少し、表情を固くしながら説明する。

グレイは、ムスターにとってはエルフの国で過ごした期間は悪い思い出もあったのだと察する。

「グレイさんが予想しているように、ハーフエルフである私はエルフの国の人たちから迫害を受けておりました」

「っ!?」

グレイはムスターの口から語られる言葉に思わず拳を握りしめる。

昔の自分と重ね、怒りが湧いてきたのだ。

「ほほほ。グレイさんは優しいですね」

ムスターはグレイの様子を見ながら嬉しそうにそう言う。

「私もその頃は良い年齢でしたので、母の前ではそのような素振りを見せることはありませんでした。母さえいれば私はどのような迫害を受けても耐えることが出来たからです」

ムスターは本当に自分の母親を大切にしていたのだろう。

語った言葉が嘘では無いことが良く伝わってきた。
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