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第277話
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グレイと離れたアリシアは地下100階の中をゆっくりと見て回る。
まずは地下101階とは正反対の方向に向かう。
恐らく階段があったのだろう。
その形跡は残ってはいるものの、落石が起きたように見事に道が塞がっていた。
(なるほど。本来、この先が地下99階だったのでしょうね)
アリシアは心の中で呟く。
パササ
その時、後ろから小さく羽ばたく音がしてアリシアの右肩にちょっとした衝撃が来る。
『見た目はこんなものだが、物理的だけでなく、空間的にも、ここと地下99階とは隔離されているぞ』
「イズさん。もう大丈夫ですか?」
やってきたのはイズであった。
アリシアは自分の右肩に居るイズに向かって尋ねる。
『ああ。気を遣わせてすまない』
「とんでもありませんわ。どうして私《わたくし》の所へいらしたのですか?」
『じっとしているグレイの所に居ても仕方あるまい。それよりか初めて訪れたアリシアに説明をしようかと思ってな』
「そうでしたか。ありがとうございます。ではお尋ねしますが、空間的にも隔離されているとはどういう意味でしょうか?」
『そのままの意味だ。簡単に言うと地下99階までと地下100階と101階は次元が異なるということだな。例えこの岩をどかそうがここと地下99階が繋がる訳では無い』
「つまり、本当に地下101階にある魔法陣を経由しない限りここには来れないということですわね」
『その通りだ』
「もしかして、この迷宮自体が地上とは違う次元にあったりしますか?」
アリシアがふとイズに尋ねる。
『・・・驚いたな。どうしてそう思うのだ?』
イズはアリシアの言葉に興味深そうに尋ねる。
「魔法陣のあった水晶の部屋の高さ、そしてここの高さ、更に地下101階から地下100階までの階段の距離から考えると少なくともこの迷宮自体が地下1000m位のところにあると考えられますわ。この迷宮は一種の訓練施設のようなものでしたわよね?そのためにわざわざここまでの手間をするとは思えませんから」
アリシアが自分の考えを述べるとイズは自分の小さな羽根を使って拍手をする仕草をする。
『大した洞察力だ。その通りだ。この迷宮自体が別の空間に作成されている。そして、便宜上地下と言ってはいるが実際のところは、巨大な塔のような構造をしていて地上の入口から入るとその塔の最上階に出るという訳だ。さらに言うとその塔自体が別空間に存在するという事だな』
「そういうことでしたか。そうすると塔の1~2階の2階部分がこの場所という事ですわね。もし無理やりここから出るとなるとどうなるのですか?」
『そのようなことは出来ぬだろうが、もし出来たとしたら空間の狭間に捕らえられて彷徨い続ける事になるだろうな』
「ご説明ありがとうございます。理解できましたわ」
アリシアがイズの説明を理解し、礼を言う。
『いやいや、気にするな』
イズとしてもまさか迷宮の構造についての説明をすることになるとは思ってもいなかったがこうした議論自体は楽しかったのでアリシアのところまで来て満足していた。
(どうやら我は議論が好きなようだな・・・)
今まで長い間会話をしたことが無かったイズは自分の事に対する意外な発見を喜んだ。
まずは地下101階とは正反対の方向に向かう。
恐らく階段があったのだろう。
その形跡は残ってはいるものの、落石が起きたように見事に道が塞がっていた。
(なるほど。本来、この先が地下99階だったのでしょうね)
アリシアは心の中で呟く。
パササ
その時、後ろから小さく羽ばたく音がしてアリシアの右肩にちょっとした衝撃が来る。
『見た目はこんなものだが、物理的だけでなく、空間的にも、ここと地下99階とは隔離されているぞ』
「イズさん。もう大丈夫ですか?」
やってきたのはイズであった。
アリシアは自分の右肩に居るイズに向かって尋ねる。
『ああ。気を遣わせてすまない』
「とんでもありませんわ。どうして私《わたくし》の所へいらしたのですか?」
『じっとしているグレイの所に居ても仕方あるまい。それよりか初めて訪れたアリシアに説明をしようかと思ってな』
「そうでしたか。ありがとうございます。ではお尋ねしますが、空間的にも隔離されているとはどういう意味でしょうか?」
『そのままの意味だ。簡単に言うと地下99階までと地下100階と101階は次元が異なるということだな。例えこの岩をどかそうがここと地下99階が繋がる訳では無い』
「つまり、本当に地下101階にある魔法陣を経由しない限りここには来れないということですわね」
『その通りだ』
「もしかして、この迷宮自体が地上とは違う次元にあったりしますか?」
アリシアがふとイズに尋ねる。
『・・・驚いたな。どうしてそう思うのだ?』
イズはアリシアの言葉に興味深そうに尋ねる。
「魔法陣のあった水晶の部屋の高さ、そしてここの高さ、更に地下101階から地下100階までの階段の距離から考えると少なくともこの迷宮自体が地下1000m位のところにあると考えられますわ。この迷宮は一種の訓練施設のようなものでしたわよね?そのためにわざわざここまでの手間をするとは思えませんから」
アリシアが自分の考えを述べるとイズは自分の小さな羽根を使って拍手をする仕草をする。
『大した洞察力だ。その通りだ。この迷宮自体が別の空間に作成されている。そして、便宜上地下と言ってはいるが実際のところは、巨大な塔のような構造をしていて地上の入口から入るとその塔の最上階に出るという訳だ。さらに言うとその塔自体が別空間に存在するという事だな』
「そういうことでしたか。そうすると塔の1~2階の2階部分がこの場所という事ですわね。もし無理やりここから出るとなるとどうなるのですか?」
『そのようなことは出来ぬだろうが、もし出来たとしたら空間の狭間に捕らえられて彷徨い続ける事になるだろうな』
「ご説明ありがとうございます。理解できましたわ」
アリシアがイズの説明を理解し、礼を言う。
『いやいや、気にするな』
イズとしてもまさか迷宮の構造についての説明をすることになるとは思ってもいなかったがこうした議論自体は楽しかったのでアリシアのところまで来て満足していた。
(どうやら我は議論が好きなようだな・・・)
今まで長い間会話をしたことが無かったイズは自分の事に対する意外な発見を喜んだ。
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