他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

千石

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第435話

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ゴシゴシ

グレイがエリクサーを染み込ませた布で右手の血を拭く。

すると先程までの苦労が嘘のように綺麗になった。

(おおっ、こんな使い方があったとは・・・だけど)

グレイは内心で驚く。

「何とも贅沢な使い方だね・・・」

ゾルムがグレイが考えていたことと同じことを口に出す。

「そうでしょうか?使えるものは有効活用すべきかと存じますわ」

一方、アリシアはゾルムやグレイとは違う意見のようだ。

そうかね?っとゾルムはアリシアの言葉に返事をしようとしたが、ゾルムが言葉を発するよりも先にアリシアが続けて話し始める。

「ところで・・・御父様?」

ゾクッ

ゾルムは娘の今までに聞いたことが無い声色に背筋に嫌な汗が流れるのを感じる。

「なっ、なんだい?」

思わず上ずった声を出し、アリシアの方を見るゾルム。

(うっ・・・)

見なきゃよかった。

ゾルムは激しく後悔した。

アリシアの表情は笑顔だ。

だが、その目は全く笑っていなかった。

「流石に先ほどの行動には物申させて頂きますわ」

その後の時間はゾルムにとってはかなり辛いものだった。



(まさか・・・娘から説教を受ける日が来るとは・・・)

体感では数時間は経過したと思ったがこっそりと時計を見るとせいぜい数十分しか経っていないようだった。

「・・・聞いておりますの?御父様?」

「はい!聞いてます。本当にすまなかった!!」

ゾルムは傍にグレイがいるにもかかわらず頭を下げる。

その姿は全くもって三大貴族とは思えない。

グレイは居心地の悪い雰囲気から少しでも逃避するため、馬車の窓から外の景色を眺めながらこっそりとアリシアとゾルムの姿を見る。

(・・・アリシアを怒らせるのは絶対にやめよう)

グレイは心の中で固く誓う。

(・・・それにしても、イズの危機回避能力は中々だな)

グレイは先ほどまでアリシアの肩に居たはずのイズがいつの間にか自分の左肩・・・つまり馬車の窓側にいるのを横目で見ながら感心する。

馬車に乗る前にはこんにゃろと思ったが、徹底したそのスタンスにグレイの怒りはなりを潜め、一種の尊敬の念を覚えていた。

(・・・緊急時には一番にイズを頼りにしよう)

グレイはこっそりと決心したのであった。
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