他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

第474話

「トラブルはありましたが予定はそこまで狂わなくて済みそうですわね」

馬車の中でアリシアが口を開く。

「そうだな。本当に良かった」

アリシアの言葉にゾルムも頷く。

「・・・それにしてもレイちゃんには悪いことをしてしまいましたわね・・・ごめんなさいね、グレイ」

アリシアが窓の外を見てからグレイの方に顔を向け謝る。

グレイは首を左右に振ると、

「とんでもないです。お気になさないでください」

アリシアに向かって返事をする。

そして、グレイもアリシアが一瞬向けた馬車の外に目を向けると、

（・・・まさか、馬車に乗れないとは思わなかったな・・・）

グレイは先ほどあった事を思い出していた。



ゾルムやアリシア、サリアとレイがお互いに挨拶をした後、ゾルムやアリシアはレイをサリアの隣の御者台では無く馬車内に誘導した。

その行為は『使い魔』への待遇としては破格だろう。

もちろん、事情を聞くためと言うのもあるだろうが、グレイに対する信頼の証から来るものが一番大きかったのだろう。

当然、レイはそのような背景は全く知らない。

物珍しさもあり、無邪気に馬車に乗ろうとした。

その瞬間、

ミシミシミシ

馬車が悲鳴を上げたのだ。

慌ててグレイがレイを馬車から引き剝がした。

（そうだよな。見た目が少女だから忘れていたが、『超魔狼』のあの質量が宿っているんだ。馬車に乗せられる訳が無い）

ゾルムやアリシア、サリアが唖然とする中、グレイはレイに対して苦渋の決断を下したのだった。



「・・・レイちゃんは問題無くついて来れておりますか？」

グレイが先ほどあったことを回想していると、アリシアが尋ねてきた。

「はい。少々お待ちください」

グレイは目を瞑ると意識をレイに集中させる。

すると、暗闇の中でひときわ大きな光が一定の距離を保ってついて来ているのが分かった。

グレイは目を開けるとアリシアに向かって返事をする。

「・・・問題無いです。森の中を一定の距離を保ってついてきております」

「そうですか。良かったですわ」

グレイの言葉を聞いてアリシアがほっとした様子で笑みを浮かべる。

グレイがした苦渋の決断とは、『馬車の移動に併せて走ってついて来てくれ』であった。

自分より見た目若い少女にそのようなことを指示する自分にドン引きしながら言ったが、当の本人であるレイはあっけらかんと首を縦に振ったのがまだ救いであった。

「イズさんもついていて下さるなら安心ですわね」

アリシアがこの場からいなくなったイズの名前を上げ、自らを納得させるように続ける。

どうやら、アリシアもレイを走らせるというのに少なからず罪悪感を持っているようであった。

「はい。本当に頼りになります」

（レイには悪いことをしたが、イズがついていてくれるなら安心だ。・・・いつかレイが乗れる馬車を用意出来たらいいな）

グレイはアリシアの言葉に頷きながら、いつかレイに馬車に乗せてやろうと思うのであった。