11 / 368
第1章 タイムカプセル
1-11
しおりを挟む
弱音を吐いても無意味だから。
家族はさらに辛く当たって来るだけですし、幼稚園のお友達が解決できる訳ありません。一人で耐え忍ぶしかなかったのです。
周りは全て敵か他人だ。味方なんていない。
それが私の常識でした。
だから、このような穏やかな会話を、この家の中で交わせるなんて、奇跡のように感じました。
美雲丸との出会いは、私にとって、真っ暗な洞窟で出口を示してくれる一筋の光だったのです。
「美雲丸は、今日しかいないの?」
「いや、ずっといるよ。こがねのそばに。今までだって、ずっといたんだ。見えなかっただけ」
「これからは見えるの?」
「ああ、そうだよ。だが、こがねにしか見えない」
「えっ?」
「お前の両親、兄、祖父母には私が見えない。付喪神はね、私達が姿を見せたいと思った相手にしか見えないんだ」
6歳の子供にも分かるように、美雲丸はゆっくり話してくれました。
「だからこれは、こがねに私が見える事は、ふたりだけの秘密だよ」
「秘密。うん。分かった」
「……こがねが今までどんな毎日を生きてきたか、知っている。何も出来なくて、すまなかった。これからは幸せにしてやりたい。そう思ってるよ」
「それなら、他の付喪神にも会ってみたいな」
「他の付喪神、か。良いだろう。機会があったら会わせてあげるよ。私が橋渡しの役になる」
「やったあ!」
私は嬉しくて、一歩、美雲丸に近付きました。
家族はさらに辛く当たって来るだけですし、幼稚園のお友達が解決できる訳ありません。一人で耐え忍ぶしかなかったのです。
周りは全て敵か他人だ。味方なんていない。
それが私の常識でした。
だから、このような穏やかな会話を、この家の中で交わせるなんて、奇跡のように感じました。
美雲丸との出会いは、私にとって、真っ暗な洞窟で出口を示してくれる一筋の光だったのです。
「美雲丸は、今日しかいないの?」
「いや、ずっといるよ。こがねのそばに。今までだって、ずっといたんだ。見えなかっただけ」
「これからは見えるの?」
「ああ、そうだよ。だが、こがねにしか見えない」
「えっ?」
「お前の両親、兄、祖父母には私が見えない。付喪神はね、私達が姿を見せたいと思った相手にしか見えないんだ」
6歳の子供にも分かるように、美雲丸はゆっくり話してくれました。
「だからこれは、こがねに私が見える事は、ふたりだけの秘密だよ」
「秘密。うん。分かった」
「……こがねが今までどんな毎日を生きてきたか、知っている。何も出来なくて、すまなかった。これからは幸せにしてやりたい。そう思ってるよ」
「それなら、他の付喪神にも会ってみたいな」
「他の付喪神、か。良いだろう。機会があったら会わせてあげるよ。私が橋渡しの役になる」
「やったあ!」
私は嬉しくて、一歩、美雲丸に近付きました。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
7
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる