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第2章 手帳
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終わりました。奇跡のような逢瀬が。
涙をこぼすモモコを、明子さんは抱きしめようとしましたが、その手は何も触れる事は出来ませんでした。付喪神は幻のようなものです。生き物ではありません。
「モモコ」
段々透明になるモモコを最後まで見ていられず、明子さんは瞼を閉じました。
消える寸前、モモコと目が合いました。また、花のような笑顔を向けてもらったのに、視界が滲んでしまいました。
さよならの一言には、世界を静かにする力がある。
そよ風すら吹かない朝のようでした。
モモコがいなくなった後、誰も何も言えませんでした。しばらく呆然と立ち尽くすだけ。
やがて、舞っていた光の粒が消え去り、青い光は元の蛍光灯の白い光に戻りました。暗かった店内に日光が差します。
現実の元の風景に戻りました。店の前を車が走る音がしました。人の足音や自転車のベルも聞こえて来ます。人々の生活音。
私達が感情を募らせていた時間は、他の人々にとっては関係の無い時間だった。それが思い知らされます。
「明子さん……」
私が呼んでも、明子さんは顔をこちらに向けてくれませんでした。
涙をこぼすモモコを、明子さんは抱きしめようとしましたが、その手は何も触れる事は出来ませんでした。付喪神は幻のようなものです。生き物ではありません。
「モモコ」
段々透明になるモモコを最後まで見ていられず、明子さんは瞼を閉じました。
消える寸前、モモコと目が合いました。また、花のような笑顔を向けてもらったのに、視界が滲んでしまいました。
さよならの一言には、世界を静かにする力がある。
そよ風すら吹かない朝のようでした。
モモコがいなくなった後、誰も何も言えませんでした。しばらく呆然と立ち尽くすだけ。
やがて、舞っていた光の粒が消え去り、青い光は元の蛍光灯の白い光に戻りました。暗かった店内に日光が差します。
現実の元の風景に戻りました。店の前を車が走る音がしました。人の足音や自転車のベルも聞こえて来ます。人々の生活音。
私達が感情を募らせていた時間は、他の人々にとっては関係の無い時間だった。それが思い知らされます。
「明子さん……」
私が呼んでも、明子さんは顔をこちらに向けてくれませんでした。
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