【完結】船宿さくらの来客簿

ヲダツバサ

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第四章 慟哭とその逆となめこ汁

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 アタシは無意識に二之ふたつめ橋へ向かっていた。いつの間にか、もう大木戸の開く時間になっていた。

 弧を描く二之橋の上を一歩ずつ進む。

 今日も晴れそうだ。しかも気持ちの良い快晴に。

 橋で何人かとすれ違う。皆、仕入れに行く棒手振りだったり下準備に向かう職人だったりで、女一人で歩くアタシを珍しそうにチラリと見た。

 多少の恥ずかしさで下を向きそうになった。が、そういう時こそ空を見上げた。

 ……あの青い青い空の向こうに、徳治さん、あなたは居るんだよね。

 橋の真ん中まで来た。

 アタシはそこで、胸元にしまった印籠を取り出した。

 美しい赤木。繊細な組紐。

 それらをしっかり目に焼き付けて、川に向かって投げた。

 優美な弧を描いて、真っ逆さまに落ちて行く印籠。橋の下に舟がいないか確認するのを忘れちゃったけど、まぁいいや。

 ポチャンッ。

 良い音だった。水面を弾き、沈んでいく。

「これで本当に、さよならですね」

 あなたが居なかったら、アタシはさくらで飯屋なんてしてない。

 こんな楽しい日々を送れていなかった。優しい人達に出会えていなかった。

 だから……ありがとう。

「徳治さん、アタシだけ生きてごめんなさい」

 手を合わせる。

 他の亡くなった人達にも向けて。





 生きるって、罪というより、罰なのかもしれない。

 辛い事ばかり。嫌な事ばかり。

 こんな苦しい世の中で、誠実さを忘れず、毎日何かを頑張るなんて無理に近い。

 しかも逃げる事は許されない。休む事も良しとされない。何の拷問だ。

 何のために生きるのか。

 それは、罰だから。行きたかった人達を差し置いて、生きてるから。自分が物知らずの馬鹿だから。学ぶために、教えられているんだ。

 だったら、立ち向かって行こうじゃないか。

 幸いにも、人生は独りじゃないんだ。家族がいなくても、友達がいなくても、独りじゃない。社会の中で生きていく以上、独りにはなれない。必ず誰かと繋がっている。繋がる事も出来る。

 アタシに出来る事……










「ごめんください」

 それを探すために、アタシはここへ来た。

「いらっしゃい! あれ? おタキさん!」 

 カン坊が目を見開いて驚いた。

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