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第一章 浅草十二階バラバラ殺人事件
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鈴木巡査は引き下がらなかった。
「でも、ハンケチが盗まれたという証拠はありません。どう考えても小波津が痴情の絡れから沖塩氏を殺したという話の方が、筋が通っています」
そう言われて、長兄は椅子から立ち上がった。
「やたら話がズレていると思ったら、君は死体検視書をよく読んでいないのだね? いいかい、遺体には胃の疾患があったのだよ」
「はい? それが何ですか? どう関係あると?」
僕にもよく分からない。小波津に動機が無いのと、沖塩氏の胃に疾患がある事に、何か繋がりがあるのだろうか。
僕も鈴木巡査も首を傾げていたのに、小波津だけが何かに気付いた。
「あっ」
「私の言っている事が、分かったかね?」
「ええ。そうです。沖塩さんに、胃の病気などありません」
そう言うと、小波津は涙を一筋流した。
長兄は鈴木巡査の肩を、そっと掴んだ。
「さあ、行こう」
「行こうって、どこへですか。離して下さい」
「大串の所へ行くのだ。奴を逮捕する義務が君達、警官にはあるからね」
「どういう意味です? 小波津はいいのですか」
「彼は何も罪は犯していない。巻き込まれただけだ」
「現場に彼のハンケチがあったのは……」
「犯人が自分への疑いを逸らすためだ。たとえ小波津くんに容疑がかからなくても、あのハンケチには沖塩氏のイニシャルがある。それが肝なのだ」
長兄は微笑んでいるが、どこか逆らえない威圧的な雰囲気を纏っていた。
「私には、小波津らんは殺人犯ではないという絶対的な自信がある」
「でも、ハンケチが盗まれたという証拠はありません。どう考えても小波津が痴情の絡れから沖塩氏を殺したという話の方が、筋が通っています」
そう言われて、長兄は椅子から立ち上がった。
「やたら話がズレていると思ったら、君は死体検視書をよく読んでいないのだね? いいかい、遺体には胃の疾患があったのだよ」
「はい? それが何ですか? どう関係あると?」
僕にもよく分からない。小波津に動機が無いのと、沖塩氏の胃に疾患がある事に、何か繋がりがあるのだろうか。
僕も鈴木巡査も首を傾げていたのに、小波津だけが何かに気付いた。
「あっ」
「私の言っている事が、分かったかね?」
「ええ。そうです。沖塩さんに、胃の病気などありません」
そう言うと、小波津は涙を一筋流した。
長兄は鈴木巡査の肩を、そっと掴んだ。
「さあ、行こう」
「行こうって、どこへですか。離して下さい」
「大串の所へ行くのだ。奴を逮捕する義務が君達、警官にはあるからね」
「どういう意味です? 小波津はいいのですか」
「彼は何も罪は犯していない。巻き込まれただけだ」
「現場に彼のハンケチがあったのは……」
「犯人が自分への疑いを逸らすためだ。たとえ小波津くんに容疑がかからなくても、あのハンケチには沖塩氏のイニシャルがある。それが肝なのだ」
長兄は微笑んでいるが、どこか逆らえない威圧的な雰囲気を纏っていた。
「私には、小波津らんは殺人犯ではないという絶対的な自信がある」
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