その花は、夜にこそ咲き、強く香る。

木立 花音

文字の大きさ
20 / 33
第四章:水瀬茉莉のトラウマ

【交錯する想い】

しおりを挟む
 二つ先の駅まで進み電車を降りた僕たちは、最寄りのバス亭から市営バスに乗り換える。十分程バスに揺られて、先月水瀬と二人で訪れた、物悲しい雰囲気の公園に到着した。

「こんな薄暗い場所に、本当に茉莉が居るの?」

 不安そうな顔で、木下が坂の上を見上げた。
 彼女が不安に思うのも当然だろうか。日没間際の陽の光は木々の姿を影法師に変え、細長く地に映している。ひと気の無い散策路の入口は、まるで僕たちの侵入を拒むかのように、もの悲しい景観を眼前に晒していた。
 それでも、僕には確信があった。水瀬は、必ずこの上にいる。

「先月、水瀬と一緒に来た場所がここなんだよ。この散策路を上りきった先に、クラスアートの題材に選んだ景色が広がっているんだ」

 うん、と木下がひとつ相槌を打った。

「彼女はこの場所のことを好きだと言っていた。だからきっと、水瀬はこの上にいる」

 そう自分に言い聞かせ、暗い坂道に一歩足を踏み入れる。しかし、彼女の足は止まったままで、一向に動こうとはしない。
 目の前に広がっている闇の深さに、怖気づいてしまったのだろうか? 木下らしくもない、と思いながら、「どうした」と振り返って尋ねた。

「やっぱり、私は下で待ってるよ」
「いや、でも……。木下も一緒に来てくれた方が、水瀬も心を開いてくれると思うんだが」
「うん……色々考えてたんだけどさ、早坂が一人で行った方が良いと思う。茉莉が本当に待っているのは、たぶん、私じゃなくてあんたの方だと思うから」
「なにを根拠に」

 だが木下は、僕の発言を無視して話題を変えた。

「ねえ、早坂。ちょっとだけ私の話を聞いてくれる?」

 急ぐ必要があるんだが、喉元まで出掛かった不満の言葉は、木下の真剣な目を見た瞬間するすると引っ込んだ。

「ああ、いいけど」
「私ね。実は小学生のときイジメに遭ってたの」
「木下が? 信じられないな」
「本当だよ。あの頃の私は、ショートカットで、背が高くて、運動神経も良くて。好かれる要素が様々あった反面、男の子みたいって陰口も同時に叩かれていた」

 いわゆる、妬み嫉みの類ってやつだろうか。

「まあ、それはなんかわかる」
「酷いな早坂。それじゃ全然フォローになってないんだけど」

 乾いた声で、木下が笑う。笑いながら、次第に悲しそうな声になる。

「気が付いたら、クラスの中で私ひとりが孤立してた。話しかけてくれる友達なんて、何時の間にか誰もいなくなってた。そんな中、唯一私に手を差し伸べてくれたのが、茉莉だったんだよ」

 水瀬は万人受けするタイプでこそないが、性根が真っ直ぐで底意地が悪くないのは疑うべくもない。口数が少なく、表情だって乏しいため何かと誤解されがちだが、誰にでも分け隔てなく接する、というのが本来の彼女の性格。

「つまりそれが切っ掛けとなり、水瀬のことを好きになったのか」

 僕が尋ねると、うん、と木下は頷いた。
 それはどこか、女の顔だと思った。

「その日から、毎日茉莉の背中ばっかり追いかけるようになった。次第に、彼女の姿を見つめているだけで、泣きそうになっている自分に気が付いた。自分が女の子であることを、あんなに呪ったことはなかったよ。きっと、茉莉が傍らに居てくれなかったら、私はあのままダメになってた」
 それに、と木下が僕を真っすぐ見つめた。
「私は伊達に茉莉の親友じゃないからね。あの子が考えている事はよくわかってる。これを認めちゃうのは自分でも悔しいけれど、茉莉に対して私が想うと、彼女が私に対して思うは別の物だから。それが、早坂に茉莉を任せる本当の理由」

 木下の言葉が僕の背中をどんと押す。まっすぐ向けられた瞳には、何処か吹っ切れたような覚悟が浮かんで見えた。だから僕は、「わかった。任せろ」とだけ伝えて背を向ける。木下の想いと覚悟を、一緒に胸に抱いて。

「ただし、待っているのは三十分だけ。それ以上経っても二人が降りて来なかったら、その時は私も上り始めるから」
「わかった」

 肩越しに声を掛け、今度こそ僕は上り始める。あの日と同じ、薄暗い散策路を。

◇◇◇

 僅かな光だけを頼りに、僕は歩き続ける。日はすっかり山の稜線に沈み、雑木林の隙間から覗く月は満月だ。水瀬と二人、この地を訪れた時と同じ真っ白な月。
 ほうほう、とフクロウの鳴く声が遠く聞こえた。
 今日は突発的にやって来たことで、懐中電灯を持参していない。月明りだけではなんとも心もとなく、張り出した木の根に躓き、何度も転びそうになった。
 サク……サク……という足音が寂しく響き渡る。今日は一人分だけ。

 ──これでもし水瀬が居なかったら、完全に徒労だ。

 あの日と違い一人で歩いていることが、ずん、と心細さを加速させる。本当に水瀬はこの上にいるだろうか。閉ざした心の扉を、開いてくれるんだろうか。次々浮かんでくる不安を、かぶりを振って追い払う。大丈夫、とうわ言のように繰り返した。
 次第に、ジャスミンとよく似た芳香が漂ってくる。木々の葉が落とす影で視界は頼りなかったが、目的地が近いんだ、ということだけは理解できた。
 開けた丘陵地に出たとたん、一面の星空が眼前に広がる。ほわあ、と放射状に淡い光を投げかける満月の下、果たして其処に、水瀬はいた。
 群生している匂蕃茉莉の花は、以前より白色の割合が多くなったように見える。その傍ら緑色の絨毯の上に、セーラー服姿の水瀬が膝を抱えて座っていた。
 寂しげに、少しだけ丸めた背中。
 僕が落ち葉を踏みしめる音が聞こえたのか、勢いよく水瀬が振り返る。彼女の瞳は、驚きでまん丸く見開かれた。

「水瀬……」

 水瀬は僅かに腰を浮かしかけた姿勢で。僕は彼女の方に一歩進みでようとした姿勢で。そのまま時が一瞬だけ止まる。
 言葉という概念が、一時的に損なわれたように暫し見つめ合ったあと、水瀬の口元が僅かに歪む。
 見開いていた瞳をすがめると、わあ……と声を上げて彼女は泣き崩れた。安堵したことにより、必死に堪えてきた感情があふれ出したような泣き方だった。
 まるで幼子のような水瀬の姿に、戸惑いと、慈しみの念とが複雑に絡み合って心の奥底でわだかまる。彼女の隣で膝を折ると、嫌がるかな、という不安に蓋をして、細い肩を抱き寄せた。
 幸い、水瀬は嫌がらなかった。僕の胸に顔を埋めると、先程よりも強く泣いた。零れ落ちる涙が、ワイシャツの胸元をしとどに濡らしていく。
 小刻みに震え続ける体。
 それから何分のあいだ、水瀬は泣いていたんだろう。
 ようやく涙が止まり呼吸も落ち着いてくると、彼女は静かに顔を上げた。

「ごめんね、早坂君。あたしのこと、心配して来てくれたんだよね?」

 僕は黙って頷いた。

「毎日、ここに来てたのか?」
「うん」
「そっか」

 まあ、だいたいわかってた。ここに来て、姿を見るまで不安だったけれど。
 数分の間、沈黙が流れた。水瀬の肩に手を回している自分を認識すると、とたんに恥ずかしくなってくる。ごめん、と肩から手を離そうとしたとき、ぽつりと彼女が呟いた。

「一週間くらい前のことかな。前のお父さんに似ている人が家に来たの」

 前のお父さん、か。それは、水瀬が隠し続けてきた過去の話。同時に、今聞いておかなければならない話。だからそのまま続きを促した。

「うん。それで」
「その人の姿を見たら、なんだか凄く怖くなって、胸が苦しくなって、そのまま家を飛び出しちゃったの。次の日から、その人のことを思い出すたび発作が起こるようになって、学校にも行けなくなっちゃった。あたしね、精神的に辛いことがあると、時々過呼吸の症状がでるの……」

 そこまで言ったところで、ああ、ごめん、と水瀬が一度言葉を切った。

「いきなりこんなこと言っても意味わかんないよね? なんか、ごめんなさい。私が学校に行かなくなったから、みんなにも凄く迷惑掛けてるでしょ?」
「そうだね。徹と稔には、後で謝っておいてね。でも、きっと大丈夫。二人とも、笑顔で僕のことを送り出してくれたから」

 水瀬の肩は未だ小刻みに揺れ、歯の根も合わぬほどに震えていた。普段笑ってみせてこそいるものの、人目のないところで、時々思い出したように涙を浮かべている母親と、水瀬の姿とが不意に重なって見えると、胸の奥深いところがギュッと嫌な音を立てて軋みを上げる。水瀬の心的外傷が深いことは、いうまでもなく理解できた。

「それと、お母さんにも謝っておこうね」
「うん……」
「今日、ここに来る前、水瀬のお母さんに会った。こんなこと言うと悪いと思うけど、僕はあまり良いイメージを持たなかった。……水瀬はさ、お母さんの事、嫌い?」
 こんなことにまで首を突っこむべきじゃない、という逡巡を押さえつけて尋ねた。
「……あんまり好きじゃないかな。うちのお母さん、色んな男のヒトを家に連れて来るから」

 再び顔を正面に戻すと、水瀬が縋るように体重を預けてきた。脇腹の辺りから、彼女の体温が伝わってくる。少し驚いたけれど、したいようにさせておいた。

「前のお父さんがね、昔、あたしに言ったの。あいつの娘なんだから、お前にも淫らな女の血が流れているんだろうって。その時は何の話か全然わかんなくて首をかしげてたんだけど、それから数日した後かな? お母さんが不在で二人きりになった時、ようやく意味がわかった。その日、あたしはお父さんに──」
「もういい。それ以上言うな」
 今度こそ、水瀬の発言を遮った。
「皆まで言わなくていい。全部、木下から聞いたんだ。水瀬の辛い過去の話も全部」

 と僕から告げる事に、もちろん抵抗はあった。でも、それを本人の口から語らせることは、もっと残酷だと思うから。

「そっか……早坂君に全部バレちゃってたのか……。おかしいなぁ。伝える覚悟なんてできていたはずなのに、どうしてこんなにショックを受けてるんだろう? あんな事があってから、男の人が凄く怖くて。どうしようもなくて。それなのに、早坂君だけは平気だった。こんなこと言うと不思議に思うかもしれないけれど、早坂君だけは特別だった。話をしていても、全然怖くなかった。今だから言うけど、小学生の時、もっと早坂君と話がしたかった。それなのに、全然勇気が出なくって……。本当は、もっともっと側に居たいと願ってた」

 震えた声で、けど、熱を帯びたように語り続ける水瀬の姿が、事件の真相を、自分に語り聞かせてくれた母親の姿と再び綺麗に重なる。性犯罪が『魂の殺人』とは、本当によく言ったもの。血が滲むほど強く唇を噛み締めた。

「ねえ。匂蕃茉莉の花言葉なんだけど、知ってる?」
「いや……聞いたことない」

 それにしても、どうして僕だけ特別なのか。頭に浮かびかけたその疑問は、あまりにも急激な話題の転換についていけず、霧散した。

「『浮気な人』なんだって。日を追うごとに花色が変化していくところが、人の気持ちが移ろいゆく様に似ていることから、そう言われているみたい」

 浮気な人──か、なるほどね。だからこの間、『匂蕃茉莉の花に似てるかな』という水瀬の質問に同意を示した時、彼女は微妙な反応をしたわけだ。

「でもね。やっぱりあたしは、淫らな女の子なのかもしれない」
 一度目元を拭うと、水瀬は視線を自身の下腹部の辺りに落とした。
「こんなにも心は傷ついているのに、体の中心辺りが凄く熱くて変な感じがしているの。誰かに抱きしめて欲しいって、さっきからずっと願ってる。……やっぱりあたし、変な女の子なのかな?」
「なにもおかしくなんかない」
 彼女の肩を、もう一度強く抱き寄せる。
「辛いとき、苦しいとき、誰かに縋りたいと願うのは普通のこと。別におかしくなんかない」

 僕の前に突然現れた、顔がわかる唯一の女の子──水瀬茉莉。あの日君に感じた縋るような想いは日に日に膨れ、もう抑えがきかなくなっている。でも。
 だからこそ今、確かめなくちゃならない。

「でも、どうして僕なんだ。どうして僕のことだけ、怖くないんだ?」

 先ほど頭の中に浮かんだ疑問を、今度こそ口にだしてみる。
 長い睫毛も、切れ長の瞳も、細くて通った鼻筋も──水瀬の整った輪郭線が、月明かりの中浮かび上がる。

「笑わないで聞いてくれる?」
「もちろん」
「あたしね、相貌失認、という名前の病気なの。だから、男の子の顔が見分けられない」
「う、そだろ?」

 それはあまりにも予想外の言葉。驚きで喉がごくりと鳴った。

「本当だよ。なかなか信じて貰えないから、他の人には決して言わないんだけどね」

 教えたの朱里以来かな、と言って水瀬が笑う。顔を歪め、それでも必死に口角を上げてぎこちなく笑ってみせる。

「でも、早坂君だけ違ったの。顔がわかるの。どうしてなのかな? だから初めて早坂君の顔を見た時凄く驚いちゃって、もしかしたらこれは運命なのかもって自惚れた」

 そこまで言ったところで、あっと声をあげ恥ずかしそうに両手で顔を覆ってしまう彼女。

「ごめん。やっぱり今のなし。忘れて」
「それで全部分かったよ。だから水瀬が転校してきたあの日、僕の顔を見て驚いた顔をしたんだね」

 小学校時代。転校初日にみせた水瀬の不可解な反応が、今更のように腑に落ちた。それにしてもなんだろう、その嬉しすぎるリアクション。

「なあ、水瀬。つまり話を纏めると、他の男性の顔はぼんやりとしか知覚できないのに、なぜか僕の顔だけはっきり見えた。という感じでいいんだよね?」
「うん、そうだよ。よくそこまで詳しく分かったね? 何時からそうなったのか、よく覚えていないんだけど、前のお父さんに乱暴されてから、突然症状が出始めたの」

 確認のため、自分の症状をオウム返しに伝えてみると、水瀬は辛そうな顔で同意した。
 そこで僕は、自分の病に纏わる話を包み隠さず伝えることにした。水瀬とまったく同じ病を、僕も発症していること。自分の場合、女性の顔だけ識別できないこと。それなのに、何故か水瀬の顔だけはわかること。

「それって本当なの?」
「本当さ。だから僕もずっと不思議に思ってた。どうして水瀬の顔だけ見えるんだろうって」
「うわあ、驚いた。なんだか運命みたいだね。ううん、本当に運命だったらいいのに」

 偶然とは本当に恐ろしいもの。この広い世界の中で、今、たまたまこの場所にいる二人の男女が共に同じ病を抱えていて、なおかつ互いが唯一顔を認識できる異性だなんて。
 これを奇跡と呼ばずして、いったいなんと呼ぶのか。

「ねえ、水瀬」
「うん」
「もしかして、この間僕に胸を触って欲しいとお願いしてきたのも、男性恐怖症を克服するため?」
「あ……うん。あたし、男の人の事が怖かったから、早坂君なら触られても怖くないか。触られても、自分がいやらしい気持ちを抱かないか確かめたかったの。ごめんね、あたしが変なお願いをしたから、嫌な思いをさせちゃったよね?」

 義父に言われた心無い一言が、こんなにも水瀬の心を傷つけていたのか。おそらく、自分にも男癖の悪い母親と同じ血が流れているのか、淫らな性癖があるのかと、確かめたい意図があったわけだ。
 でも、それはダメだ。そんな目的の為だけに同級生の男に体を触らせるなんて。実に危うくて、また、短絡的な考えだ。

「嫌じゃないよ。嫌なはずないけど、でも、もっと自分を大切にしないとダメだ。もし僕が人でなしの男で、あのまま水瀬を襲ったりしたらどうするつもりだったんだ?」
「あっ……うん、そうだね。ご、ごめんなさい」

 自分がしたことの重大さに今更のように気が付いたのか、水瀬の身体が小刻みに震え始める。
 これ以上彼女がおびえている姿を見ているのが辛くて、反射的に彼女のことを正面から抱きしめる。抱きしめてから直ぐに、やってしまったとおおいにうろたえた。
 慌てて手を離したのだが、何故か水瀬の体は離れない。あろうことか、水瀬も控えめながらも両手を回して僕に抱きついていた。

「ごめん。あたしが抱きしめて欲しい、なんて言ったから」
「違う、そうじゃない」
「え、早坂、くん?」
「これは、あくまでも僕の意思。僕も水瀬の事、抱きしめたいってずっと思ってたから」

 控え目に彼女が頷くと、抱きついてくる腕にも力がこもる。嗚咽を上げて、再び彼女は泣いた。でもそれは、先ほどまでのような、出口が見えない暗闇の中で膝を抱えて流す涙とは違い、ぽろぽろと静かに零れ落ちる、安堵からくる暖かい涙にみえた。
 震える水瀬の身体を抱きながら、嗚咽が、彼女の呼吸が落ち着くまで、僕は黙って待った。内に秘めた不安や悲しみを吐露した事で、彼女が抱えている重すぎる過去が、少しでも薄まってくれればいいと願った。そう、ほんの少しでいいんだ。僕が彼女の力になれれば。
 そのまま暫く泣いたのち、水瀬は潤んだ瞳で僕を見つめた。

「ねえ、早坂君。あたし──」
 待って、と僕は水瀬の言葉を遮った。
「なあ、水瀬。僕と約束して欲しい」
「約束?」
「うん、そう。来週から学校来てくれるよね?」
 大事なことだ。念押しで僕が尋ねると、
「もちろんだよ」
 と水瀬が答える。
「あ、でも。あたしからも、ひとつだけお願い。いいかな?」
 上目遣いで水瀬が言う。
「うん、なに?」
「キスして欲しい……。その……この間は、自分が淫らな女の子なのかどうか確かめたくて、胸を触って欲しい、なんてお願いしたんだけど……。今日はちょっと違うの。そんなの関係なく、キスして欲しいの。あれ? なにを言ってるんだろあたし。ごめん、違うの。キスして欲しいって言っても、唇じゃなくておでこ。そうおでこ! あれ、やっぱり変なのかな……自分でもよくわかんない」

 必死に言葉を紡いだ彼女が愛おしくなり、そっと頬に手を添えた。色白な肌は月明かりに照らされることで、より一層白く輝いた。光の当たっている場所と、陰になっている場所とのコントラストが目に眩しい。
 こちらに全てを託すかのように、水瀬がそっと目を閉じた。
 彼女の長い睫毛も、頬に添えた僕の指先も、先程からずっと震えている。艶やかな唇の赤が視界に入ると、心臓が大袈裟なほど暴れ出す。
 違う、そこじゃない、と自分に言い聞かせて、彼女の額にキスをした。
 ゆっくり離れると、正面から二人で見つめ合う。
 沈黙が数瞬すうしゅん流れたのち、今度は彼女の方からキスをしかけてきた。
 何を、と思う間も与えられず、彼女の柔らかい唇が僕の口を塞いだ。ふっくらとして、瑞々しくて、触れたことのない感触だった。大胆な要求に驚いたけれど、そのまま彼女を受け入れた。本能の赴くまま、互いの欲求を交換しあう。しばらくの間僕たちは、月明かりの下抱き合っていた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

処理中です...