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倒置法と体言止め、時々鍋(その他)
放課後の文芸部の部室。ノートパソコンの画面とにらめっこして私はうんうんと唸っていた。
「ヒロインが自殺未遂したとして、方法はどんなものが考えられるだろう? 睡眠薬? 睡眠薬って、どのくらい飲んだら致死量になるの? そもそも、睡眠薬で人って死ぬの?」
「どうした咲夜。なんか悩み事?」
ネットに繋いで検索ワードを打ち始めた私に声を掛けてきたのは今泉京先輩。私のひとつ上の三年生で、文芸部一の実力者だ。
「あ、はい。トリックに関係する部分の執筆で、今ちょっと詰まっていまして」
私、加護咲夜は、昨年の文化祭で処女作となる恋愛小説を発表したのち、無謀にも (本当に、無謀だと思う)、ミステリー小説を書き始めていた。だがそこは小説なんてほとんど読んだことも書いたこともない私のこと。知識も語彙力も貧相で、こうしてたびたび執筆の手が止まってしまう。
どれどれ、と言いながら先輩が私のパソコンを覗き込む。
「あー。確かに、テレビドラマとか小説の中では、今でも時々睡眠薬を飲んで自殺するシーンが見られるんだけど、今の睡眠薬ではちょっと難しいんだよね」
「そうなんですか?」
「年々改良が進んでいるからね。今の睡眠薬は、高い睡眠効果を保ったまま、危険な副作用が格段に少なくなっているんだ。たくさん飲んでも長く眠るだけで、死ぬことはほとんどないよ。むしろ死因としてはそれよりも――」
多少理屈っぽいが、かみ砕いてしてくれる先輩の説明は相変わらずわかりやすい。ふむふむ、と頷きながらメモを取っていく。これで続きが書けるかな。
一通り話し終わったそのあとで、「そういえばさ」と先輩が言った。
「話は変わるんだけど、咲夜、鍋の具材って何が好き?」
「はあ?」
こんなにわかりやすく話が変わる展開も久々に見ましたね。作者の力量がちょっと足りていないんじゃないでしょうか? それともやる気がないんでしょうか?
「なんですか、また藪から棒に」
「いやね。来週の日曜日に、部活メンバーを集めて鍋パーティーでもしようかなーっと思っていたりなんかして」
「ふーん。なるほど? それで、どこでやる予定ですか?」
「咲夜ん家」
また始まった、とこれには嘆息を禁じ得ない。
「だから……どうして、勝手に人の家を会場にする前提で話を進めるんですか。まあ、別にいいんですが。たぶん母親しかいませんし。うちの母親性格が適当ですし、どうせ許してくれます」
「でしょ?」
「でしょ? じゃないです。調子に乗らないでください。で? 何鍋をやるつもりなんですか?」
「闇鍋」
「いや、それ、具材なんでもいい奴じゃないですか。……ああ、だから聞いているんですか。むしろ」
「そうとも言うな」
「そうですねえ……」
出汁はなんにするつもりなんでしょう? まあ、なんでもいいか。準備しろと言われたならやればいいだけのこと。しょうがないので、バカな先輩のためにちゃんと考えてみることにした。
「白菜と、豆腐と、鶏のつくねですかね」
「普通だな」
「私、普通が好きなもので。……どんなのを期待していたんですか?」
「大福とか。ケーキとか。シュークリームとか。考えられるな、色々」
「甘い物ばっかりですね。食べられる物なのはせめてもの救いですが、私、生憎甘い物苦手なんですよね。知ってるでしょ?」
「まあね。知っているぞ。とてもよく」
「というか、部活のメンバーを呼ぶんですよね? なら、他の人にも聞いてみたほうがいいですよ」
「そうだな。それはいい案だと思う。すごく」
「なんかさっきから話し方おかしくないですか?」
「ふふふ。気づいたのか。ようやく」
「もしかして、倒置法で話しています?」
「その通り。この短いやり取りのなかで気づくとは流石主人公。鍋を題材に短編を書こうとしたものの、ネタが足りないからついでに小説の作法について勉強してみてはどうか、などと考えたようだな」
「誰がですか?」
「作者」
本当にこのノリで最後まで引っ張る気なんですか。流石に浅慮がすぎませんかね。短編舐めすぎじゃありませんかね。
「ま、いいや」
「倒置法とは、文において、普通の語順と逆にして語句を配置し、修辞上の効果をあげる表現方法のことだ。たとえば、『花が咲いています』という文章も、倒置法にすると『咲いています。花が』となる」
「ちゃんと説明するんですね」
「説明しました。俺が」
「やかましい」
ドヤる先輩を無視して、向かい側の席にいる未来さんに話しかける。生天目未来さんは、文芸部の部長でなかなかの長髪美人だ。小説執筆の実力は、今泉先輩に次いで高い。
「隣の朴念仁が、来週闇鍋をするそうなんですが、具材、どういうのが面白いと思います?」
色々案を聞いた中から、先輩がピックアップして何品目か準備すること。その他、各自二品目ずつ持ち寄ること、等々。先輩が簡単な説明を加えていく。
「というか、もうちょっと優しい説明」
ようやく悪口に気づいた先輩が渋い顔になる。無視していると益々渋い顔になる。面白い。腕を組んで数秒思案したのち、未来さんがおもむろに口を開いた。
「フカヒレかしら」
「なお。具材でかかった費用は割り勘」と先輩が補足する。
「えんがわかしら」
「露骨にグレード下がりましたね。それでも微妙に高いと言えば高いんですが」
「それと、ガパオライス」
「〇〇カバーみたいなノリで出てきましたね。ところでガパオライスってなんでしたっけ? というか、未来さん適当に言ってますよね?」
「ガパオライスとは、タイでよく食べられる料理。毎日食べても飽きない国民食。ガパオとは、ハーブの名前であり日本名ではホーリーバジル。タイでは、ご飯と具を混ぜずに食べるのが大多数」と先輩が説明を加える。
「未来さん、食べたことあります?」
「この間テレビで観たら、美味しそうだったんだよね~。でも、食べたことはないの。ご飯と具を全部混ぜて食べたほうが美味しそうかな」
「上に目玉焼きを乗せると美味しそうです」
「体言止めとは、名詞や代名詞などの体言で語尾を止める手法のことです。古くから短歌や俳句で使われていますが、現代文でも日記やエッセイ、小説などの文章ではしばしば使われています。中学二年生の国語で習います」とこれも先輩だ。しつこい。
「いいね、それとても美味しそう」
「人の話を聞いて~」
先輩が寂しそうな声音で割り込んでくる。
――会話文は、発言者が交互に入れ替わるのが基本です。時々第三者が口を挟む場合、少しだけ地の文で補足してあげるといいでしょう。
ん? 今の声って誰?
「勝手に言っていればいいじゃないですか。うるさいですね……」
「使うことでリズムを変えたり、特定の語彙を強調する効果がある反面、使いすぎると逆にリズムが崩れたり、どこにクローズアップさせたいのかボヤけてしまうこともあるので注意です」
「ぐはっ」
先輩の更なる説明に、蛙が潰れたみたいな呻き声をあげたのは明日香ちゃんだ。そういや彼女は、体現止めを多用しすぎると先輩に批評されたことがある。それを思い出して古傷が痛んでいるのかも。
「明日香ちゃん。いたんだっけ」
「何気にひどい、咲夜。作者がちゃんと描写しないだけで最初からいたよ~」
夢乃明日香。私の幼馴染にして親友の女の子。小説執筆を始めたのは去年からなのでまだまだ不慣れだ。
このように、登場人物の説明は登場したタイミングに合わせて挟んでいくといいだろう。
「なんか、私だけ雑な説明されてる?」
「いや? そうでもないよ。そういや明日香ちゃんは、具材、どんなのがいい?」
「アイスクリームかな」
「鍋だって言っているのに」
私が乾笑すると、「だって、めちゃめちゃ暑いんだもん」と明日香ちゃんが苦笑する。いかにも暑そうに、はっきり言ってはしたなく、両手でスカートを扇いだ。
「とりあえずアイスが食べたい。それかコーラ」
『あ』と私と先輩の声が揃う。『今って八月か』
「このように、冒頭で5W1Hをちゃんと示しておかないと、しばしば書き手と読み手の間で齟齬が生じてしまうのだ」
「そうですね。それはわかったんですけど、結局鍋はどうするんですか?」
「やめようか。そうだ! 来週はみんなでプールにでも行こうぜ」
「また適当ですね。始まりからオチまで本当に何もかも」
「ところで、これって『鍋』をテーマにした短編になっているの?」と未来さんが冷静に突っ込むと、全員が押し黙った。
「ヒロインが自殺未遂したとして、方法はどんなものが考えられるだろう? 睡眠薬? 睡眠薬って、どのくらい飲んだら致死量になるの? そもそも、睡眠薬で人って死ぬの?」
「どうした咲夜。なんか悩み事?」
ネットに繋いで検索ワードを打ち始めた私に声を掛けてきたのは今泉京先輩。私のひとつ上の三年生で、文芸部一の実力者だ。
「あ、はい。トリックに関係する部分の執筆で、今ちょっと詰まっていまして」
私、加護咲夜は、昨年の文化祭で処女作となる恋愛小説を発表したのち、無謀にも (本当に、無謀だと思う)、ミステリー小説を書き始めていた。だがそこは小説なんてほとんど読んだことも書いたこともない私のこと。知識も語彙力も貧相で、こうしてたびたび執筆の手が止まってしまう。
どれどれ、と言いながら先輩が私のパソコンを覗き込む。
「あー。確かに、テレビドラマとか小説の中では、今でも時々睡眠薬を飲んで自殺するシーンが見られるんだけど、今の睡眠薬ではちょっと難しいんだよね」
「そうなんですか?」
「年々改良が進んでいるからね。今の睡眠薬は、高い睡眠効果を保ったまま、危険な副作用が格段に少なくなっているんだ。たくさん飲んでも長く眠るだけで、死ぬことはほとんどないよ。むしろ死因としてはそれよりも――」
多少理屈っぽいが、かみ砕いてしてくれる先輩の説明は相変わらずわかりやすい。ふむふむ、と頷きながらメモを取っていく。これで続きが書けるかな。
一通り話し終わったそのあとで、「そういえばさ」と先輩が言った。
「話は変わるんだけど、咲夜、鍋の具材って何が好き?」
「はあ?」
こんなにわかりやすく話が変わる展開も久々に見ましたね。作者の力量がちょっと足りていないんじゃないでしょうか? それともやる気がないんでしょうか?
「なんですか、また藪から棒に」
「いやね。来週の日曜日に、部活メンバーを集めて鍋パーティーでもしようかなーっと思っていたりなんかして」
「ふーん。なるほど? それで、どこでやる予定ですか?」
「咲夜ん家」
また始まった、とこれには嘆息を禁じ得ない。
「だから……どうして、勝手に人の家を会場にする前提で話を進めるんですか。まあ、別にいいんですが。たぶん母親しかいませんし。うちの母親性格が適当ですし、どうせ許してくれます」
「でしょ?」
「でしょ? じゃないです。調子に乗らないでください。で? 何鍋をやるつもりなんですか?」
「闇鍋」
「いや、それ、具材なんでもいい奴じゃないですか。……ああ、だから聞いているんですか。むしろ」
「そうとも言うな」
「そうですねえ……」
出汁はなんにするつもりなんでしょう? まあ、なんでもいいか。準備しろと言われたならやればいいだけのこと。しょうがないので、バカな先輩のためにちゃんと考えてみることにした。
「白菜と、豆腐と、鶏のつくねですかね」
「普通だな」
「私、普通が好きなもので。……どんなのを期待していたんですか?」
「大福とか。ケーキとか。シュークリームとか。考えられるな、色々」
「甘い物ばっかりですね。食べられる物なのはせめてもの救いですが、私、生憎甘い物苦手なんですよね。知ってるでしょ?」
「まあね。知っているぞ。とてもよく」
「というか、部活のメンバーを呼ぶんですよね? なら、他の人にも聞いてみたほうがいいですよ」
「そうだな。それはいい案だと思う。すごく」
「なんかさっきから話し方おかしくないですか?」
「ふふふ。気づいたのか。ようやく」
「もしかして、倒置法で話しています?」
「その通り。この短いやり取りのなかで気づくとは流石主人公。鍋を題材に短編を書こうとしたものの、ネタが足りないからついでに小説の作法について勉強してみてはどうか、などと考えたようだな」
「誰がですか?」
「作者」
本当にこのノリで最後まで引っ張る気なんですか。流石に浅慮がすぎませんかね。短編舐めすぎじゃありませんかね。
「ま、いいや」
「倒置法とは、文において、普通の語順と逆にして語句を配置し、修辞上の効果をあげる表現方法のことだ。たとえば、『花が咲いています』という文章も、倒置法にすると『咲いています。花が』となる」
「ちゃんと説明するんですね」
「説明しました。俺が」
「やかましい」
ドヤる先輩を無視して、向かい側の席にいる未来さんに話しかける。生天目未来さんは、文芸部の部長でなかなかの長髪美人だ。小説執筆の実力は、今泉先輩に次いで高い。
「隣の朴念仁が、来週闇鍋をするそうなんですが、具材、どういうのが面白いと思います?」
色々案を聞いた中から、先輩がピックアップして何品目か準備すること。その他、各自二品目ずつ持ち寄ること、等々。先輩が簡単な説明を加えていく。
「というか、もうちょっと優しい説明」
ようやく悪口に気づいた先輩が渋い顔になる。無視していると益々渋い顔になる。面白い。腕を組んで数秒思案したのち、未来さんがおもむろに口を開いた。
「フカヒレかしら」
「なお。具材でかかった費用は割り勘」と先輩が補足する。
「えんがわかしら」
「露骨にグレード下がりましたね。それでも微妙に高いと言えば高いんですが」
「それと、ガパオライス」
「〇〇カバーみたいなノリで出てきましたね。ところでガパオライスってなんでしたっけ? というか、未来さん適当に言ってますよね?」
「ガパオライスとは、タイでよく食べられる料理。毎日食べても飽きない国民食。ガパオとは、ハーブの名前であり日本名ではホーリーバジル。タイでは、ご飯と具を混ぜずに食べるのが大多数」と先輩が説明を加える。
「未来さん、食べたことあります?」
「この間テレビで観たら、美味しそうだったんだよね~。でも、食べたことはないの。ご飯と具を全部混ぜて食べたほうが美味しそうかな」
「上に目玉焼きを乗せると美味しそうです」
「体言止めとは、名詞や代名詞などの体言で語尾を止める手法のことです。古くから短歌や俳句で使われていますが、現代文でも日記やエッセイ、小説などの文章ではしばしば使われています。中学二年生の国語で習います」とこれも先輩だ。しつこい。
「いいね、それとても美味しそう」
「人の話を聞いて~」
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ん? 今の声って誰?
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「使うことでリズムを変えたり、特定の語彙を強調する効果がある反面、使いすぎると逆にリズムが崩れたり、どこにクローズアップさせたいのかボヤけてしまうこともあるので注意です」
「ぐはっ」
先輩の更なる説明に、蛙が潰れたみたいな呻き声をあげたのは明日香ちゃんだ。そういや彼女は、体現止めを多用しすぎると先輩に批評されたことがある。それを思い出して古傷が痛んでいるのかも。
「明日香ちゃん。いたんだっけ」
「何気にひどい、咲夜。作者がちゃんと描写しないだけで最初からいたよ~」
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このように、登場人物の説明は登場したタイミングに合わせて挟んでいくといいだろう。
「なんか、私だけ雑な説明されてる?」
「いや? そうでもないよ。そういや明日香ちゃんは、具材、どんなのがいい?」
「アイスクリームかな」
「鍋だって言っているのに」
私が乾笑すると、「だって、めちゃめちゃ暑いんだもん」と明日香ちゃんが苦笑する。いかにも暑そうに、はっきり言ってはしたなく、両手でスカートを扇いだ。
「とりあえずアイスが食べたい。それかコーラ」
『あ』と私と先輩の声が揃う。『今って八月か』
「このように、冒頭で5W1Hをちゃんと示しておかないと、しばしば書き手と読み手の間で齟齬が生じてしまうのだ」
「そうですね。それはわかったんですけど、結局鍋はどうするんですか?」
「やめようか。そうだ! 来週はみんなでプールにでも行こうぜ」
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