夢に繋がる架け橋(短編集)

木立 花音

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ツキガキレイデスネ(文芸・コメディ)

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「月が綺麗ですね、ってよく言うじゃない?」

「そうだね」

「文字通りの意味じゃなくて、好きな人に自分の気持ちを伝える告白のセリフでもあるんだってさ」

「知ってるよ」

「知っているのか。つまんないな。じゃあさ、その台詞私に言ってみてよ」

「なんであたしがアンタに言わなくちゃならないのよ」

「え。じゃあ私が言う?」

「いや、どっちが、という話じゃなくて、なんでそんなことを言わなくちゃな――」

「ツキガキレイデスネ」

「話、最後まで聞けよ。つかなんで棒読みなのよ」

「月が綺麗ですね」

「まあ、ロマンチック。じゃねえよ。今昼なんだよ。カンカン照りの炎昼やだよ。月なんでこれっぽちも微塵も出てないのよ! つかなんでこんな話の流れになってるの?」

「じゃあ、夜にしちゃう?」

「時間操作能力かよ。できるものならしてみてよ」

「夜にシちゃう? なんてね。 ……あ、待って。帰らないで」

「なんだか頭が痛くなってきて」

「ツキガキレイデスネ」

「壊れたレコードなの? もうちょっと感情こめなさいよ」

「月が綺麗ですね」

「ふむ。……まあ、悪くはないかな」

「でもさあ、もっと直球で言ったほうがいいと思わない?」

「突然どうしたの? まあねえ……。せっかくの告白も、意味が伝わらなかったら意味ないしね」

「私と結婚してください」

「直球だね。いろいろすっとばしたね。でも残念。私は女の子。そして君も女の子。だから――」

「それでもだよ」

「へ? 本気?」

「もちろん。私のために、味噌汁をつくって欲しい。めちゃめちゃ甘やかしてほしい。朝、毎日決まった時間に起こしてほしい。洗濯してほしい。掃除もしてほしい。たくさん稼いで、いっぱい遊ばせてほしい」

「ちょ、ちょっと待って!」

「ん?」

「ん? じゃないのよ。それじゃただの家政婦じゃないのよ! こら、逃げるなー!」

 ……ったくもう。また告白しそびれたじゃん。
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