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第五章「あたしの心が折れた日」
【幕間:だからあたしは、バドミントンを嫌いになるしかなかった】
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中三の夏。
部活をやめて、しばらくしてから部室に荷物を取りにいったときのことだ。チームメイトや姫子に会いたくなかったから、部活動休養日を見計らって行った。それなのに、そこには先客がいた。
扉に手をかけようとしたとき中から数人が語り合う声がした。それは、二年生の女子部員らの声で、団体戦メンバーの当落ライン上にいたうちの一人がその中に含まれていた。
「いやー、でも良かったよ」
「何が?」
「紬さんがケガしてくれて。おかげで、あたし団体戦メンバーに入れたよ」
「ああ、そうだね」
キャハハ、と笑い合う声がした。
「ラッキーだったよね」
「紬さんってさあ、正直ちょっとウザかったから、ざまあって感じだよね」
「わかるー! 自分はできて当たり前、みたいなあのスカした態度、見ててムカつく」
「それなー!」
その子は特別仲が良い後輩というわけではなかったが、それなりにうまくやっていたつもりだったし、悩んでいることがあれば相談に乗ったりプレーを教えてあげたりもしていた。
まさか、そんな風に思われているとは知らなかった。
あたしがやめることで、喜ぶ人がいるとは思っていなかった。
所詮、そんなものだ。勝てなくなったあたしに、価値なんてあるはずがないから。
称賛、栄光、歓喜、バドミントンをしてきたことで、手に入れたものがたくさんあったのに。
それらすべてを、自分の存在ごと否定された気持ちになった。
だからあたしは、バドミントンを嫌いになるしかなかった。
バドミントンをしてきたことで、失ったものが他にもたくさんあったから。
◇ ◇ ◇
部活をやめて、しばらくしてから部室に荷物を取りにいったときのことだ。チームメイトや姫子に会いたくなかったから、部活動休養日を見計らって行った。それなのに、そこには先客がいた。
扉に手をかけようとしたとき中から数人が語り合う声がした。それは、二年生の女子部員らの声で、団体戦メンバーの当落ライン上にいたうちの一人がその中に含まれていた。
「いやー、でも良かったよ」
「何が?」
「紬さんがケガしてくれて。おかげで、あたし団体戦メンバーに入れたよ」
「ああ、そうだね」
キャハハ、と笑い合う声がした。
「ラッキーだったよね」
「紬さんってさあ、正直ちょっとウザかったから、ざまあって感じだよね」
「わかるー! 自分はできて当たり前、みたいなあのスカした態度、見ててムカつく」
「それなー!」
その子は特別仲が良い後輩というわけではなかったが、それなりにうまくやっていたつもりだったし、悩んでいることがあれば相談に乗ったりプレーを教えてあげたりもしていた。
まさか、そんな風に思われているとは知らなかった。
あたしがやめることで、喜ぶ人がいるとは思っていなかった。
所詮、そんなものだ。勝てなくなったあたしに、価値なんてあるはずがないから。
称賛、栄光、歓喜、バドミントンをしてきたことで、手に入れたものがたくさんあったのに。
それらすべてを、自分の存在ごと否定された気持ちになった。
だからあたしは、バドミントンを嫌いになるしかなかった。
バドミントンをしてきたことで、失ったものが他にもたくさんあったから。
◇ ◇ ◇
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