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雪代琥珀

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組織の不祥事

1-1

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「ん~ついたー!!空気が美味しい気がするわ!アイク!」
『ロン様...公共の場なので大声はお控え下さい...』
「わかったわ!」
そう言ってロンは体を上に伸ばした。
空を見上げている時、ポツリと一言零した。
「...本当にこんなところに」
『ロン様』
それを制するようにアイクが声を上げる。はぁと溜息のようなものと同時にロンは言った。
「わかってるわ。...さあ、とりあえず華園のアジトへ行きましょう」
『ええ。すでにタクシーは手配してあります。外に出ましょう。』
2人は入国手続を済ませ、外へ出た。
タクシーへ乗り込み、華園へと向かった。
『...どうぞ。』
『ありがとう。金だ。釣りはいらない。』
「アイク、行くわよ」
『...じゃあな』
古風な、古民家のような家が目の前に佇んでいた。
インターホンをアイクは見つけ、押した。
『...はい、どなたでしょうか』
『SilverFireのアイクとロンです。』
『ああ、分かりました。すぐ行きます』
シャッシャと砂利の上を歩く音が聞こえた。
そして、目の前のドアが横へ流れた。
『いらっしゃいませ。イタリアからはるばるようこそ。』
「ユウジのお父さんお久しぶりね!」
『ロンもこんな大きくなったんだな。
...私からの手紙を読んだか?』
『ハクリュウ、自体は深刻です。直ぐにお話していただきたい。』
2人は鬼のような剣幕で目線を交わした。
ロンは2人の話を真剣に聞いていた。
彼らが中へ移動したので、後ろからゆっくりと着いて行った。
『...ハクリュウ。華園のメンバーが世界樹を見つけたのは本当なのか?』
「...」
世界樹。それは世界のどこかにあるとされている、宙に浮かぶ大木のことだ。それのことを異能力委員会も知らず、ただ見つけたら近づいては行けない。それだけを言われている。
そんなものを華園のメンバーの2人が見たのだと言う。
「世界樹をみた異能力者がいるってことよね?」
『そうだロン。メンバーの優弦ユヅルが見つけたんだ。』
『...頼む、どこにあったか教えて欲しい。』
『行けたとして何をするつもりだ。』
ギロッと白龍の目が光る。
『...あそこには、薬草が豊富にあるんだ。それがあればヒトの苦しむ難病がみるみるうちに治っていく。古代の文書に書いてあった。...なんでも、だ。どんな難病でも治る。
それから、そこの中にある図書室のような場所。あそこには魔導書が大量に置かれている。委員会にも報告をしなくては。』
『...そうだな。疑ってすまなかった。
SilverFireと華園の仲だというのにな。』
『いいんだ。俺の言い方が悪かった。』
「ね、ねぇねぇハクリュウ!それはどこに浮いてるの?雲の上?」
『それはだな。太平洋の上だ。』
『「太平洋の...上?」』
『驚くのも分かる。だが、事実だ。
ここに記憶もある。』
白龍は人の記憶を見ることの出来る記憶壷に、優弦の記憶を入れた。

『おい、咲みろよ!あの浮いてる大陸はなんだ!?』
『あの大木...もしかして世界樹!?』
『うそだろ?あの世界樹はここにあったのか?』
『それ以外ありえないわ!ミッションは中止よ!直ちにマスターに言わなくちゃ...』

『...ということだ』
「確かに太平洋の上ね...」
少し考えた後にロンが口を開いた。
「わかったわ。私達は明日、1度イタリアへ戻ってニコルと話してくる。まとまったらもう一度ここへ来るわ。」
『こちらとしても、この件はSilverFireに任せるのが妥当だと考えていた。力量差があるからな。ニコルによろしく頼むよ。』
『ええ。必ず調査へ行きます。』
白龍の判断で、2人は華園で一夜を過ごした。
次の日の朝、イタリアへと飛び、アジトへ戻った。
「マスター!カヌレ!ルイ!ユウジ!ただいま!!」
だいたいいつも居る人の名前を上げる。
『あ、ロン!おかえりなさい!いまコーヒー入れるわね』
ルイがドタバタとキッチンへ走っていく。
『ロンちゃ~んおかえり!ごめんなんだけど、日本に5時間後出発してもらうよ』
「あらニコル、もう伝達がいってたのね。」
『あれは一応組織の不祥事、と言ってもおかしくはないんだけど...記憶を見た限りあれは』
『ムー大陸...ですか?』
大昔に海に沈んだ巨大な大陸、その名をアイクは口にした。
『そう。それにそっくりだなって思って。』
『俺も思いました。』
「わかったわ!ルシフェルに頼みましょ!」
ぽん、と手を打つロン。
『えぇ...』
それとは対に、ニコルは顔をしかめた。
『本気?』
「お願い!魔導書を使ってルシフェルを出して!」
嫌そうな顔のまま、彼は本を取りに行った。
『...ロン様、さすがです。』
『ふふん。ルシフェルならムー大陸が今下にあるかわかると思うし、上から見ればその場所にあるか分かるでしょ?』
天使の中でも位の高いルシフェルなら、世界の機密情報も知っている。だから頼もうと思ったのだ。
『つまりヴェルフィレオを持って僕が飛んで世界樹の周りを飛べと?』
さっきニコルが入ったドアに寄りかかっているのはルシフェルだった。
「そういうことよ」
『ふーん...ムー大陸は確かに存在した。だけど僕達は世界樹の存在を確認することは出来ない。
あれを見れるのは異能力者だけだ。』
『...それはつまり、そこで魔導書を使ったりした場合』
『それは不可能だ』
バッサリと否定をした、
『あそこで魔導書の使用は出来ない。いや、異能力を使うことは不可能なはずだ。』
大昔、文明の発達からムー大陸全域に魔法、異能力禁止の呪術が貼られたのだそう。そこに住んでいた異能力者や魔法使いはしぶしぶ出て行ったらしい。
「...近づいてはだめというか、近づけないのね」
『無理やりなら行けるけどな。
俺が飛んでロンがみつければいいんだから』
「あったしかに!じゃあいまからお願い!」
『えっ』
『いいよ』
『えっ』
アイクはびっくりしたような目でルシフェルを見つめる。
『なんだよアイク』
『だって、いつも人を持つの嫌がるじゃないですか』
『...俺らが確認できてないものを異能力者が見れれば、一石二鳥だろ。俺のポイントが上がる』
『ああ...』
納得した様子で声を落とした。
「さあ、出発よ!」
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