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6話
しおりを挟むニクスがロワの元へ来て2ヶ月が経った。
ニクスは午前の授業を終えてロワの部屋へ向かう。途中、彼の母とすれ違ったのでお辞儀をして挨拶した。
「ロワならまだ陛下といるから、もう少し待っていてね。」
ロワがニクスを可愛がっているお陰か、初めは孕みに来た雄として好奇の目で見ていた周辺の人たちもニクスと親しくなり始めている。
言われた通り待っていると、ロワが戻ってきた。
「お待たせ。行こうか。」
ロワはほぼ毎日城の外へ出て、様々な場所を視察している。ニクスも同行することがあり、今日は週3回の孤児院を訪れる日だ。
「ロワ様とニクス兄ちゃんが来たぞ!」
子供達も2人の訪問を心待ちにしていた。ニクスは子供達と遊び、ロワは孤児院の職員や運営者と少し話をしてからその遊びに加わる。
城下町の人達から孤児院の子供達にまで慕われているロワは、まさに理想の国王となるだろう。
ニクスも他人と関わることにすっかり慣れて、愛想の良い好青年と認識されるようになった。そして、敬語ではあるもののロワとは兄弟のように接していた。
ニクスは、まるで養子にでもなったかのような生活を心から満喫していた。
そんな期待の次期国王とその弟分も、夜はただの雄になる。
「ニクス、」
「はい。」
夜、ロワがニクスをそばに呼んで、彼の部屋着のローブを解くのが合図。しばらく抱き合ってから、ベッドに上がって絡み合う。
さりげなくニクスを呼んで、抱きしめて、部屋着として着ている白いローブの紐を解いたら合図だ。
お互いが身体を擦らせ合い、ニクスは彼の立派なたてがみに顔を埋めて深呼吸。ロワの匂いで頭がいっぱいになる。
少し経つとロワがニクスを仰向けにさせた。ニクスを仰向けにさせるのは、勃たなくなるまで抱き尽くすという合図。
ニクスは脚を開いてそれを受け入れる。以前は少し恥ずかしい気持ちもあった。でも今は、前戯だけでそそり立っている肉棒ごと曝け出しても、それを見つめられても興奮するだけ。
「可愛いよ、ニクス。」
そう言ってロワはニクスの内股をざらついた大きな舌で舐め、少し引き締まってきたニクスのお腹をマッサージするように撫でる。ニクスは甘い息を漏らした。
「あう…ロワ様…」
ロワと出会って日が経つにつれ、前戯も長くなった。あるいはニクスが焦らしに耐えられなくなったのかもしれない。あの逞しい雄槍に早く突かれたい、ロワと繋がりたい、という気持ちを伝えるかのようにニクスの綺麗な穴がヒクついていた。
ロワの舌が内股から肉棒の根本に欠けて舐め上げる。もうすぐだ。いつもその舌が下腹部を、腹を、胸を舐めた後に覆い被さられる。
「溜まってそうだな。」
不意に、ロワがニクスの肉棒を見つめていった。その直後、ロワがぱくりとニクスの肉棒を咥え、とても温かく柔らかいものに包まれる感覚にニクスは身体を起こし声を漏らした。
「あっ…ロワさま…そんな……」
ロワはニクスの腰を抱いて、いつもニクスがやっているように根本まで咥えるとざらついた舌を出してその舌の玉袋を舐める。ニクスの肉棒が震えた。
ニクスだって雄。この方がお互い愉しめる。もちろん、ロワはニクスの逆で咥えられることはあっても咥えたことはない。でも心を許したニクスなら、なんの抵抗もなかった。
「あ…牙が…あぁ…気持ちいいです…」
程よく牙が擦れ、舌が裏筋を舐める。なんの地位もないニクスの男根を、次期国王はじゅぷりじゅぷりとしゃぶる。それに対してニクスにできることは、快楽を言葉にして伝えること。
「こんなの…初めて…んっ…手と全然ちがうぅ…だめ…ロワさま…気持ちよくて…僕……」
ロワは口を窄めて、ストロークを大きくする。
「あ…出ます…出ます…」
ニクスはたまらずロワの口で果て、濃い精液を噴出させる。
それがニクスだから。その事実によって、雄の下腹部に顔を埋めていることも、口内でお世辞にも良い味とは言えない精液を出されていることにも嫌悪感はない。
ギュッと抱きしめて、口を押し付けて、脈打つ肉棒に吸い付く。そこには、ニクスが愉しんでくれたという嬉しささえあった。
「ロワ様…」
「ふ…いっぱい出たな。」
口いっぱいに出された子種を、躊躇いなく飲み干した。その様子にニクスは経験したことのない興奮を感じた。
ロワはニクスに四つん這いになるよう言って、上半身を伏せさせ腰だけ上げさせるとニクスの中に剛直を押し込んだ。
「今日は枯れるまでやるからな、覚悟しろよ?」
「は…はいぃ……」
ロワはしばらくニクスの腰を掴みながら穏やかに抜き挿ししていたが、ニクスの中が慣れてくると獣のように覆い被さって激しく腰を打ちつけた。
身動きできず、お腹の奥をひたすら突かれる。肉壁が巨根に絡み付こうとする動きがロワの動きについていけていない。ひたすら擦れ、ニクスの尻にロワの下腹部と玉袋がぶつかって小気味良い音をたてる。
口を開けたまま、よだれを垂らしながらニクスは喘ぐ。ニクスの顔にロワの唾液が垂れる。それをロワの舌が舐めとる。
興奮し欲をむき出しにした体格の大きな雄に一方的に侵される雌の構図。ロワのモノになって、全てをロワに委ねて支配されているような、そんな感覚がニクスは好きだった。
巨根は容赦なくニクスのお腹の内側から外側に向かってえぐり、ニクスの身体に暴力的な快楽を刻んでいく。
「んがぁっ…!あぁっ…!」
「出すぞ…孕め…!」
ロワの手がニクスの首の根本を押さえつけ、そして腰を強く叩きつけて子種を注ぎ込んだ。
「あぅ…ロワ様…」
「あぁ。」
快楽に震えるニクスをひっくり返して、今度は向かい合って抱き合い繋がる。ロワは先程よりも大きな動きでニクスの中をかき回した。
いつも、激しく交わったあとは熱い交わりに変わる。
「あぅぅ…ロワ様…」
「あぁ、イッていいぞ。」
ロワの胸に抱き締められながら、紳士的な腰使いで突かれながらニクスは達する。この熱い交尾の中ではそれが雄としての絶頂なのか、お腹の方の絶頂なのかもう区別ができない。
ロワの名を呼び中ながらニクスが射精し、中が不規則に締まる。可愛らしく顔に力が入って絶頂するニクスをなおも規則的に突いていると、不意にニクスが口走る。
「ロワさま…好き…」
巨根に擦られる快楽と射精の快楽の両方に喘ぎながら、興奮が最高潮に達したニクスはロワの逞しい胸の中で何度も、まじないのように呟いた。
ロワは微笑んでニクスの額を舐め、そして口を重ねる。ニクスの腕がロワの首の後ろにまわされる。くぐもった声とベッドが軋む音が響く。濃密な口づけを交わしながら、ロワの雄槍が脈打ちニクスの中に熱いものが溢れ出た。
夜が更けるまで、いつも以上に熱い行為は続く。快楽の波に飲まれて焦点が合っていないニクスは解放されてすぐに眠りに落ちる。
「…俺には、お前がぴったりなんだろうな。」
子供ができたら、正式にニクスを迎え入れよう。我が子が生まれた後の明るい暮らしに、ニクスも加えよう。加えなくてはならない。ロワは覚悟を決めた。
それからまたしばらく経って、ニクスとロワの距離は確実に縮まっていった。街を出歩く時も、最初はニクスがロワの後を追っていたのが今は手を繋いでいる。
ニクスが中性的な容姿で、かつロワが厳つい体格であることの相乗効果により、並んで歩くニクスは実年齢よりずっと幼く見える。だから2人が手を繋ごうがニクスがロワに甘えようが大きな違和感はなかった。
もちろん、集まってくる人たちは彼らが熱い夜を過ごしているなんて夢にも思わないだろうが。
「ニクス君、前より元気そうになったよねぇ。」
ロワの休日に、いつも通り2人で街を出歩くと顔見知りの初老の女性に声をかけられ、ニクスは笑顔で返す。ロワも満足げに頷く。
「すっかりここの一員だな。」
「ロワ様のおかげです。」
この街の食を支えている農家の人たちを訪問した帰り道。夕食までまだ時間があるので市場に寄り道をする。
何か装飾品でも買おうか、と歩いていたときに、ふとニクスは胸がモヤモヤしているのを感じて、もしかしてくるかな、と思っていると突然強烈な吐き気に襲われた。そしてロワに伝える間も無くその場でうずくまって吐いてしまった。
「ニクス!」
治るまでニクスの背中をさするロワ。周りの人も心配そうにそれを見守っている。
「戻って休もう。」
そう言ったロワの顔からは期待が滲み出ていた。ニクスはすでに2度経験しているので確信していた。
ニクスに、初めて自ら望んだ命が宿った。
「思ったより早かったな。」
ベッドの上で、ニクスを自分の上に乗せて彼のお腹を撫でるロワからは喜びが滲み出ている。品を保とうとしているが堪えきれず、口角が痙攣しながら上がる。
「ロワ様…」
「ニクス、身体に気をつけろよ。俺もなるべく側にいるから。2人で、大切に育てような。」
ニクスは微笑んだ。2人で育てよう。その言葉が何よりも嬉しかった。雄なのに身籠ったという言葉では言い表せない複雑な感情は微塵も湧かなかった。
妊娠を知って、ニクスの管理役である緑鱗の竜人がニクスを迎えに来る。いつもなら、このまま戻って、産んで、子供を引き渡して取引完了。
「ニクスを譲って欲しい。」
応接間で、ロワは机に大金を置いてそう言った。迎えにきた弟の方の竜人は、大層驚いた様子でロワに、隣に座っているニクスに、そして大金にと目を泳がせる。
「生まれる子供には母…ニクスが必要だ。子供にも、俺にも。隠すことはしない。俺はニクスを家族として迎え入れたい。」
「それは……」
竜人は動揺したままだった。視線を下げ、声を震わせた。
「でもそれは…できません……恐れながら…どれだけ金を積まれてもニクスは渡せません…ニクスは売り物ではないのです……」
つづく。
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