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3.群青を探して
しおりを挟む魔物を使役して村を襲わせ、ギルドの人間同士で身内争いを繰り返させる。
人間に対しても、正気のまま操れるようになった。
力の扱いも、もう手慣れたものだ。
ただし、威力は意図的に何倍も薄めて。
強く、儚く、美しかったーー
あの青き炎を、改めて心の底から噛み締める。
しかし、それらを操る遊びにも、そろそろ飽きた。動く廃人たちは、つまらなくなった瞬間に自害させる。
魔物たちだけは、まだ暇つぶしのために待たせてある。
夜の街へと降り立った。
闇夜に紛れ、足音もなく歩く。
黒い蝶が左右を揺蕩う。
事前に半竜化は解いた。
ガラス窓に映る黒髪。ゆったりとした黒衣。
嫌いな容姿が写る。
火山で着ていたものは燃えたから、その辺の店で己を認識できないようにして、失敬した。
残念ながらお揃いの色とはならなくなってしまった。
しかしレイにはよく、白の服を与えていた。
反転する色であるならそれはそれで。
ルミナリアの柔らかな灯りに慣れてしまったせいか、街灯の光がやけに刺す。
立派な煉瓦造りの大きな建物が並び、ここがそれなりに繁栄した都市であることが窺える。
……もしかしたら、都心部かもしれない。
そんな街の至るところに、あるものを見つけた。
白いドラゴンのポスター。
バツ印がつけられたそれが、壁にも、柱にも、無数に貼られている。
不快だ。
よりにもよって、ーーあの子の竜姿に似た色を、こんなふうに。
胸が焼ける。
穏やかに、しかし確実に黒焱が脈打ち始めた。
俺は今、とても暇だ。
だから、時間の許す限り、ポスターを燃やして歩くことにした。
黒で白を燃やす。
ゆらり、揺れる黒焱にポスターは灰にはならない。新たなポスターが街に生まれる。
今度は、銃を掲げる兵士たちの姿で。
ーーまあ、これでいい。
ふ、と笑った。
しかし。
また、レイの竜を蔑み貶めるモノを作られては困る。
……広報部か。どこかにあるのだろう。
ならば、消してしまえばいい。
この街から。
記憶しているすべての者から。
思想ごと、焼き尽くしてしまおうか。
共に白き竜を崇めるなら、せめて無為な廃人にはしないでおいてやる。
それが、今の俺なりのーー哀れみだ。
街の中心らしき広場。
案内板を見やる。
蝶が一点に留まった。
ーーここか。
地理には詳しくない。
かわりに俺の黒い炎から出て勝手に飛び交う蝶が指図してくる。
おそらく飛び交うことで俺という存在を認識できなくなる……そんなところだろう。
実際前に会ったハンターたちもずっと後にいた俺に気づけなかった。
蝶が集るのは邪魔。
しかし、これとレイが戯れる姿はきっと絵になる。可視化できなくなる効果もある。
であれば、レイを飛び交う蝶のおかげでその絵は俺だけが見られる。
ーーいいじゃないか。
良い目標ができたところで蝶が導く方へと歩く。
ふと、裏路地に白い影を見た。
「ーー!」
あれは……
ーーまさか。
白い影を追いかける。
こんなところにいるはずはない。
頭ではわかっていたとしても、つい追いかけてしまう。
「あんた、何?」
……はあ。
違う。
違うな。
彼はーー彼女は。
口調も。態度も。
本物はもっとお淑やかで優雅で……ーー
俺が教え込んだ。
「……」
「なんか用か?」
似ただけの別人。
しかしこの昂りはどうしても抑えられなかった。
それでも、彼の口から零れた粗野な言葉にーー一瞬で正気を取り戻す。
(違う。違う……レイじゃない)
俺が教えた。俺が育てた。
あんなはしたない振る舞いを、俺のレイがするわけがない。
ぐっと拳を握る。黒い蝶が、俺を慰めるように舞う。
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