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十話、燃ゆる息合わせ
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殿下がそう口にした瞬間、岩陰から――
ぬるりと這い出てくる、甲殻のある魔物。
私の耳でも、微かな気配を感じ取れたほどだ。
つまり、殿下の感覚はそれ以上……?
――“声”って、いったい。
疑問を抱えたまま、私は剣に手をかける。
「今回は、お互い加減せずともよいわけだ」
「……は、はい」
それはつまり――
“お前の力を見せよ”ということだ。
剣では、どうしても構えが防御やカウンター寄りになってしまう。
――それなら。
拳で、いこう。
剣を地面に突き立て、青い炎を纏う。
「……ほう」
嬉しそうに、殿下が後ろに佇む。
私が危なくなるまで、自分は控えておくつもりらしい。
問題ない。
目の前の魔物がこちらを認知する。
警戒しているみたいだけど――
それより、速く。
私はその懐へ飛び込んだ。
青い炎を纏わせた拳を、外殻の隙間へと突き込む。
メリメリと肉が裂け、骨が砕ける音がした。
暴れるかと思ったが――
「オオオオオオォォ――……」
それは慟哭し、そのまま崩れ落ちた。
ちょうど弱点に当たったのかもしれない。
たぶん倒しきれていない。
けれど、これでいい。
そう思ったところで――
「……来るぞ」
足音が聞こえた。数体分。
さっきの雄叫びで仲間を呼んでいたらしい。
……ミスったなぁ。
「我も加わろう」
「す、すみません……」
「いやなに。我も身体を動かしたくてうずうずしていてな。多く倒せておけるなら越したことはない」
嬉しそうに槍を回す殿下。
多勢は、私ちょっと苦手かも。
叔父様とか、陛下なら得意なんだろうけど。
私は……どうしようか。
地に突き立てていた剣の柄を握る。
「セレスタ、君は後方だ。我の方が多勢向きであろう。君は我が仕留めそこねた魔物を射止めてくれ」
考えていたところに、殿下が提案をくれた。
「は、わかりました!」
流石だなあ。
向き不向きをちゃんと見抜ける。
ほんの少しだけ、将軍としての彼の顔を見た気がした。
「さ、来るぞ」
殿下の言う通り、岩陰の向こうから、続けざまに魔物たちが姿を現す。
殿下が無数の炎の槍を宙に出現させる。
――アッシュ様みたいだ。
それよりも、ずっと多い。
それらを一斉に放つ。
粉塵が舞い、視界が揺らぐ。
「セレスタ、右だ!」
「はいっ!」
意味を考える前に、体が動いていた。
正面の敵を殿下が燃やし尽くす。
けれど、その炎の合間をかいくぐって、別の魔物が接近していた。
蹴り上げるように顎を打ち、反転――
そのまま背後に回り、炎を纏った拳を叩き込む。
ズシリ、と魔物が倒れた。
「流石だ」
炎の中から、殿下が姿を現す。
陛下のように、炎のマントをはためかせて。
――いつの間に、燻らせてたんだろう。
本気なのかな。
そっちの方が、処理が早いからか。
……やっぱり、兄妹だなあ。
どしりと構え、炎を巧みに操る姿。
たまに近づいてくる魔物には、槍を自ら突いて応戦する。
……これは兵士の士気も上がるなあ。
私は私で、一体一体、殿下が打ち損じた魔物を確実に倒していく。
やがて、辺りは静かになった。
動くものがあるとすれば、この戦いを静かに見守っていた桔梗色のルミナリアだけ。
「むう……」
槍を回しながらも、炎を弱めていく殿下。
……随分暴れていたと思うけど、なんだか物足りなさそうに唸っていた。
「だ、大丈夫でしたか?」
「ああ。君のサポートが上手かったからな」
「いえ……そんなことはないです」
「謙遜するな」
そう言って、炎を手のひらに乗せる。
そして、何かを考えている様子。
「どうしましたか?」
「いや、いつも通りの力が出せんかった気がしてな……杞憂だろうか」
一瞬で炎の海にしていたし、十分だったと思うけど……
これは、本人にしかわからない感覚なのだろう。
「一度、小屋に戻りますか?」
「そうだな。話したいことも山ほどあるからな」
にこっと私を振り向く殿下。
……それ、説教じゃないといいな。
あの“声”の話だと思いたい……。
ぬるりと這い出てくる、甲殻のある魔物。
私の耳でも、微かな気配を感じ取れたほどだ。
つまり、殿下の感覚はそれ以上……?
――“声”って、いったい。
疑問を抱えたまま、私は剣に手をかける。
「今回は、お互い加減せずともよいわけだ」
「……は、はい」
それはつまり――
“お前の力を見せよ”ということだ。
剣では、どうしても構えが防御やカウンター寄りになってしまう。
――それなら。
拳で、いこう。
剣を地面に突き立て、青い炎を纏う。
「……ほう」
嬉しそうに、殿下が後ろに佇む。
私が危なくなるまで、自分は控えておくつもりらしい。
問題ない。
目の前の魔物がこちらを認知する。
警戒しているみたいだけど――
それより、速く。
私はその懐へ飛び込んだ。
青い炎を纏わせた拳を、外殻の隙間へと突き込む。
メリメリと肉が裂け、骨が砕ける音がした。
暴れるかと思ったが――
「オオオオオオォォ――……」
それは慟哭し、そのまま崩れ落ちた。
ちょうど弱点に当たったのかもしれない。
たぶん倒しきれていない。
けれど、これでいい。
そう思ったところで――
「……来るぞ」
足音が聞こえた。数体分。
さっきの雄叫びで仲間を呼んでいたらしい。
……ミスったなぁ。
「我も加わろう」
「す、すみません……」
「いやなに。我も身体を動かしたくてうずうずしていてな。多く倒せておけるなら越したことはない」
嬉しそうに槍を回す殿下。
多勢は、私ちょっと苦手かも。
叔父様とか、陛下なら得意なんだろうけど。
私は……どうしようか。
地に突き立てていた剣の柄を握る。
「セレスタ、君は後方だ。我の方が多勢向きであろう。君は我が仕留めそこねた魔物を射止めてくれ」
考えていたところに、殿下が提案をくれた。
「は、わかりました!」
流石だなあ。
向き不向きをちゃんと見抜ける。
ほんの少しだけ、将軍としての彼の顔を見た気がした。
「さ、来るぞ」
殿下の言う通り、岩陰の向こうから、続けざまに魔物たちが姿を現す。
殿下が無数の炎の槍を宙に出現させる。
――アッシュ様みたいだ。
それよりも、ずっと多い。
それらを一斉に放つ。
粉塵が舞い、視界が揺らぐ。
「セレスタ、右だ!」
「はいっ!」
意味を考える前に、体が動いていた。
正面の敵を殿下が燃やし尽くす。
けれど、その炎の合間をかいくぐって、別の魔物が接近していた。
蹴り上げるように顎を打ち、反転――
そのまま背後に回り、炎を纏った拳を叩き込む。
ズシリ、と魔物が倒れた。
「流石だ」
炎の中から、殿下が姿を現す。
陛下のように、炎のマントをはためかせて。
――いつの間に、燻らせてたんだろう。
本気なのかな。
そっちの方が、処理が早いからか。
……やっぱり、兄妹だなあ。
どしりと構え、炎を巧みに操る姿。
たまに近づいてくる魔物には、槍を自ら突いて応戦する。
……これは兵士の士気も上がるなあ。
私は私で、一体一体、殿下が打ち損じた魔物を確実に倒していく。
やがて、辺りは静かになった。
動くものがあるとすれば、この戦いを静かに見守っていた桔梗色のルミナリアだけ。
「むう……」
槍を回しながらも、炎を弱めていく殿下。
……随分暴れていたと思うけど、なんだか物足りなさそうに唸っていた。
「だ、大丈夫でしたか?」
「ああ。君のサポートが上手かったからな」
「いえ……そんなことはないです」
「謙遜するな」
そう言って、炎を手のひらに乗せる。
そして、何かを考えている様子。
「どうしましたか?」
「いや、いつも通りの力が出せんかった気がしてな……杞憂だろうか」
一瞬で炎の海にしていたし、十分だったと思うけど……
これは、本人にしかわからない感覚なのだろう。
「一度、小屋に戻りますか?」
「そうだな。話したいことも山ほどあるからな」
にこっと私を振り向く殿下。
……それ、説教じゃないといいな。
あの“声”の話だと思いたい……。
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