婚約者に会いに行ったらば

龍の御寮さん

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参集

 ある日、レオンは一通の手紙を受け取った。
 フレデリクからの呼び出し状だった。

 休暇を取り、急いで戻るとそこにはフレデリクとミシェル、そして知らない男が待っていた。
「両親には屋敷を離れてもらっている。ここで見聞きしたことは他言無用だ。守れるか」
「わかりました」
 レオンはミシェルを見つめ、何度も話しかけたそうにしたがミシェルはレオンに関心がなく、ひたすら見知らぬ男のほうを見つめていた。

 皆がそろったところでその男は自己紹介をした。
「リシャール・シモンです。今回は思ってもみない手紙をいただき、調査させる間もなく飛んできました」
「突然ぶしつけな手紙を差し上げて申し訳ありません。しかしまさか直々にシモン様が来られるとは思っておりませんでした」
「リアンの事ですから」
 それを聞いてミシェルがびくりと体を震わせる。
 そんなミシェルの背中をフレデリクが優しくなだめるように撫でるのを見てレオンの胸は激しく痛んだ。

「それで?手紙の話は本当ですか?」
「それを確かめるためにレオンを呼びました。この男が今、その女と暮らしているはずです」
「レオン殿、あなたの妻の話をお聞きしたい」
「妻などではありません! 一体どういうことですか?! これはなんですか?」
 レオンはここに呼ばれたわけがわからず、しかももう疫病神でしかないローズのことミシェルの前で妻などと呼ばれ苛立ちを見せた。
 フレデリクは冷たい目でレオンを見ながら言った。
「お前が一緒に暮らしてる女に殺人の容疑がかかっている」
「え? ……殺人?」
「……私の大切な婚約者が殺されたのかもしれないのです。愚かな私のせいで……リアンを死なせてしまいました。」
 リシャールと名乗ったいい年をした男が、ハラハラと涙を落とす。
 ミシェルもそれを見てこらえきれずに泣き出した。
 レオンは戸惑いながら
「どういうことですか?」
 と聞いた。 

 リシャールは数年前の事を話した。
 レオンは戦慄した。同じような経緯でローズを招き入れることになり、ミシェルを失った。
「ではあの女は各地でそうやって……騙してきたというのか!」
「まだ、そうと決まったわけではありません。あの時、あの女——ロザンナと名乗っていましたがリアンが亡くなってすぐ姿を消したため疑いがかかりました。でも証拠も目撃者もいなかった。本人を問い詰める前に姿を消したのです。でも私はきっとあの女が何かしたのではないかと……。今回、手紙をいただき同一人物かどうかを確かめたく私がやってきました。」
「もし……そうだとわかったらどうするつもりですか。」
「我が領地へ連れて帰りますよ。彼の両親も兄弟もみんな……憎しみを忘れてはいませんから。騎士団に突き出す気はありません」
 リシャールの目は憎しみを宿していた。

「あ……あの……リシャール様。」
 ミシェルが震える声で話し出した。
「はい?」
「……どうかおやめください。自らの手で復讐などしないで下さい。彼女は法の下で裁きを受けさせてください」
「なぜですか? あなたも被害者でしょう? 婚約者を奪われたのでしょう?! 私はこの手であの女を八つ裂きにすることだけを支えに生きてきたんだ!」
「そんなの駄目です! あなたの手を汚すなどと……それで復讐を終えたらどうするつもりですか? 何も残らないではありませんか! あなたには幸せになる権利がある!」
「君に何がわかる!」
 リシャールは机をたたく勢いで怒りを顕わにする。
「わかります!! 置いて行ってしまってごめんなさい! あなたを一人にしてごめんなさい!あなたを信じなくてごめんなさい!」
 ミシェルは止まらない涙をそのままに、リシャールに訴えかける。
「君は……何を言ってるんだ」
「リシャ様……」
 涙にくれた顔でミシェルの口から思わずこぼれた言葉にリシャールは全身をこわばらせた。
「!!」
 リシャールは声を失い、泣いているミシェルを見つめる。
 自分の事をリシャと呼ぶのは彼だけ。

「まさかリアン……そんな馬鹿な……」
「リシャ様……リアンです。あなたを信じなかった愚かな婚約者です……ごめんなさい」
「本当に?リアン……リアン!」
 リシャールはミシェルを抱きしめようとする。
 が、フレデリクがとどめる。
「お気持ちはわかりますが、彼の身体は私の弟です」
「あ……ああ、そうでした……しかし……本当に?」
 リシャールは猜疑とショックで混乱している。
 レオンの方も何が何だかわからず状況を必死で理解しようとしているようだった。

 リシャールは少し話をするだけでミシェルがリアンと認めざるを得なかった。リアンと自分との思い出を正確に話すことのできる以上、リアンしかありえなかったからだ。
「ああ、リアン……もう一度会えてよかった。私はずっと謝りたかった。最後に君を傷つけたまま死なせてしまったこと。本当にすまない。もう一度会いたいとずっとずっと神に祈っていた」
「リシャ様……僕があの時あなたを信じて逃げなければ。きちんと話をすればあんなことにならなかった。僕こそごめんなさい。あなたの心を傷つけてごめんなさい」

 二人はようやくあの日の誤解を解き、二度と伝えることができないと思っていた後悔と謝罪を伝えることができたのだった。

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