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婚約解消
ノエルがトマスのことで不安にさいなまれている時、話があると父から呼び出された。
そして、淡々とトマスとの婚約解消を告げられた。
トマスにはキーラを嫁がせることが決まったと。
そしてお前は妻を娶り、この子爵家をこのまま繁栄させ続けろと一方的に告げられたのだった。
今更ながら、金の玉子を生むノエルを手放すのが惜しくなったのだろう。
「……トマスは了承しているのですか?」
「……当たり前だ。幸い、キーラもトマス様を想っていたようでな。それにその……どうもトマス様の子を身ごもったかもしれぬなどと。本当に困ったやつだ」
父は苦々しい顔をするが、それは可愛いキーラを心配しての事だろう。
キーラがトマスの子を。
絶望した思いに、身体中の血が凍ってしまいそうだった。
僕にはどう逆立ちしたって敵わない。
「……そう……ですか」
「話は以上だ」
父はショックを受けて立ち尽くす僕に、謝罪も慰めの声もかけてくれることもなかった。
ノエルはどうやって部屋に戻ったかわからないほど打ちのめされていた。
これまで頑張っても、我慢しても誰もノエルを見なかった。大事にはしてくれなかった。
子爵家の資産を増やすための道具としか扱ってもらえない。子爵家の利益の為に、駒であるノエルを自分勝手に動かす父親が憎くすら思った。
これまでも何を頑張っても顧みられない生活だったが、親としての愛情が欠片位はあると思っていた。信じたかった。
そしてトマスまでも。
ノエルと話し合うまでもなく婚約の解消を承知し、とうとうキーラを選んだ。
しかも子供まで……。
トマスは幼いころに僕と婚約すると言ってしまったものの、きっと男のノエルと婚約したことを後悔していたのだろう。キーラと出会って、彼女の方がいいと思ったに違いない。
――僕は僕として誰にも望まれなかった――
僕は一晩泣き明かし、すっぱりとすべてを思い切った。
その翌日から、ノエルは色々と忙しく動いた。
自分が携わっている事業の関係者に依頼や協力をお願いしたり、提携・協力している貴族や商家と面談したりして、子爵家がもつ様々な事業や権利を譲渡したのだ。
ノエルと母が築いてきた財産だ、子爵家に残すつもりはなかったし今後も子爵家も収入にならないよう全て手をうった。事業を譲渡してできた財産の大部分は信頼できる銀行に預けた。
そして父に婚約破棄を言われてから一カ月があっという間に過ぎ、ノエルはたっぷりの金貨を持ち運びやすい宝石に変えた。
あれからトマスとは一度も顔を合わすことはなかった。
彼とのことを思い出すと胸がじくじく痛んだ。婚約解消にしても一度くらい自分の口で話をしてくれるかと思っていたのに、手紙さえなかった。
一度、会って話がしたいと手紙を出したが返信もなく、本当にトマスにとって僕の存在は邪魔だったのだと悲しくなった。
口では謝りながら、勝ち誇ったような目で見てくる妹からの嫌がらせを受け流した。
あとで吠え面をかくなと心で呪いながら。
そして、淡々とトマスとの婚約解消を告げられた。
トマスにはキーラを嫁がせることが決まったと。
そしてお前は妻を娶り、この子爵家をこのまま繁栄させ続けろと一方的に告げられたのだった。
今更ながら、金の玉子を生むノエルを手放すのが惜しくなったのだろう。
「……トマスは了承しているのですか?」
「……当たり前だ。幸い、キーラもトマス様を想っていたようでな。それにその……どうもトマス様の子を身ごもったかもしれぬなどと。本当に困ったやつだ」
父は苦々しい顔をするが、それは可愛いキーラを心配しての事だろう。
キーラがトマスの子を。
絶望した思いに、身体中の血が凍ってしまいそうだった。
僕にはどう逆立ちしたって敵わない。
「……そう……ですか」
「話は以上だ」
父はショックを受けて立ち尽くす僕に、謝罪も慰めの声もかけてくれることもなかった。
ノエルはどうやって部屋に戻ったかわからないほど打ちのめされていた。
これまで頑張っても、我慢しても誰もノエルを見なかった。大事にはしてくれなかった。
子爵家の資産を増やすための道具としか扱ってもらえない。子爵家の利益の為に、駒であるノエルを自分勝手に動かす父親が憎くすら思った。
これまでも何を頑張っても顧みられない生活だったが、親としての愛情が欠片位はあると思っていた。信じたかった。
そしてトマスまでも。
ノエルと話し合うまでもなく婚約の解消を承知し、とうとうキーラを選んだ。
しかも子供まで……。
トマスは幼いころに僕と婚約すると言ってしまったものの、きっと男のノエルと婚約したことを後悔していたのだろう。キーラと出会って、彼女の方がいいと思ったに違いない。
――僕は僕として誰にも望まれなかった――
僕は一晩泣き明かし、すっぱりとすべてを思い切った。
その翌日から、ノエルは色々と忙しく動いた。
自分が携わっている事業の関係者に依頼や協力をお願いしたり、提携・協力している貴族や商家と面談したりして、子爵家がもつ様々な事業や権利を譲渡したのだ。
ノエルと母が築いてきた財産だ、子爵家に残すつもりはなかったし今後も子爵家も収入にならないよう全て手をうった。事業を譲渡してできた財産の大部分は信頼できる銀行に預けた。
そして父に婚約破棄を言われてから一カ月があっという間に過ぎ、ノエルはたっぷりの金貨を持ち運びやすい宝石に変えた。
あれからトマスとは一度も顔を合わすことはなかった。
彼とのことを思い出すと胸がじくじく痛んだ。婚約解消にしても一度くらい自分の口で話をしてくれるかと思っていたのに、手紙さえなかった。
一度、会って話がしたいと手紙を出したが返信もなく、本当にトマスにとって僕の存在は邪魔だったのだと悲しくなった。
口では謝りながら、勝ち誇ったような目で見てくる妹からの嫌がらせを受け流した。
あとで吠え面をかくなと心で呪いながら。
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