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護衛
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ノエルは家を出るだけではなく、自分の生まれた育ったメローランド国を出ることにした。
全てのしがらみを捨てて隣国のラクロワ国に行くつもりだった。
ラクロワ国には懇意にしていた商人を介してすでに家を購入してあった。
隣国までは2,3日かかるため、その道中の護衛をギルドに依頼していた。
仕事上付き合いのあった信頼する貴族が優秀な二名の護衛を薦めてくれた。
腕も確かで、人柄も問題はないとお墨付きの人気の二人を指名したために少々値は張ったが、身の安全には代えられない。
明日からの旅立ちに供え、今日は護衛との顔合わせと、最終契約の為にギルドで待ち合わせていた。
受付で名乗るともう相手は来ているという。
ノエルが急いで向かおうとするとギルドの受付がひどく申し訳なさそうにノエルを呼び止めた。
「ノエル様、申し訳ありません。指名を受けていた女性の方の護衛なんですが急な怪我でダメになってしまって」
「ええ⁈ そんな……どのくらいで治りますか? 少しなら待ちます」
「それがなかなかの大怪我のようでして」
「それはなんて気の毒な……」
しかし怪我をした女性は気の毒に思うが、自分も明日には家を出るつもりだったから困ったことになった。数日で回復するならともかく、長期に延期すると事業売却のことなどが家族にばれてしまう。すぐさま出立したい。
ノエルは男女二人の護衛の依頼を出していた。
ある程度の資産を持ち歩く非力な自分に、男の護衛が一人というのは怖かったのだ。
これまでも小柄であどけない顔をしているからか、幾度か男性に無体を働かれそうになったことがある。いくら信用できると紹介を受けていても初めての相手だから警戒するに越したことはない。
だからと言って女性の護衛を指名すると逆に相手が警戒するだろうし、いざという時に守ってもらえるのか心配になる。
そのため、男女二人の護衛を依頼していたのだが。
「ですが! もう一人はうちのギルド一信頼の置ける護衛ですのでそれでお願いできませんか?」
ギルド職員は必死でアピールをしてきた。
何しろ、ノエルは豊富な資金をもとに依頼料を奮発している。ギルド職員は逃したくはないのだ。
だが、これから新居まで何泊かしながらの旅となる。見知らぬ男性と二人きりというのは気も使うし、自分の身の安全面でもノエルは不安に思うのだ。
これならば一日二日出発を先延ばしにして、ほかの所に依頼するしかないかと考えていた時、そんな雰囲気を悟ったのか受付が慌てたようにさらに言葉を続ける。
ノエルが別の所に依頼をすると、このギルドの収入減と信頼に関わる事態となる。
受付は男性護衛について人畜無害&優秀であることを力説した。
「人柄100%保証付き! とりあえず! とりあえず会ってみてください! そのうえでお決めになって結構ですから!」
「ま……せっかく来たので会うだけなら」
少々がっかりした気分でノエルは面会室に向かった。
面会室の中にはノエルより少し年が上くらいの、まだ若いすらりと背の高い男が座っていた。その隣にはなんとギルド長まで座っていた。
「ノエル様。この度はご要望にお応えできずに申し訳ありません。ですが彼は最高の護衛ですので検討をしていただければと」
「長旅の仲間になるので……やはり女性の護衛とペアの方がありがたいのですが。せっかく待っていただいて申し訳ないのですが」
「いやいや、ノエル様。ラクロワ国に向かうならこの男が一番です。彼はその地理に明るい上に、強い。この男一人がいれば旅のトラブルも心配ありませんから! ノエル様の心配は了解しておりますが、この男の人間性は保証します!」
ギルド長まで人柄をえらく押してくる。よほどこの依頼を断って欲しくないらしい。まあ、破格の料金を払う約束だから。
ノエルはこの依頼を取り下げるつもりでいたが、あまりにも熱心に薦められるのでギルド長の横に座っている男を見た。
全てのしがらみを捨てて隣国のラクロワ国に行くつもりだった。
ラクロワ国には懇意にしていた商人を介してすでに家を購入してあった。
隣国までは2,3日かかるため、その道中の護衛をギルドに依頼していた。
仕事上付き合いのあった信頼する貴族が優秀な二名の護衛を薦めてくれた。
腕も確かで、人柄も問題はないとお墨付きの人気の二人を指名したために少々値は張ったが、身の安全には代えられない。
明日からの旅立ちに供え、今日は護衛との顔合わせと、最終契約の為にギルドで待ち合わせていた。
受付で名乗るともう相手は来ているという。
ノエルが急いで向かおうとするとギルドの受付がひどく申し訳なさそうにノエルを呼び止めた。
「ノエル様、申し訳ありません。指名を受けていた女性の方の護衛なんですが急な怪我でダメになってしまって」
「ええ⁈ そんな……どのくらいで治りますか? 少しなら待ちます」
「それがなかなかの大怪我のようでして」
「それはなんて気の毒な……」
しかし怪我をした女性は気の毒に思うが、自分も明日には家を出るつもりだったから困ったことになった。数日で回復するならともかく、長期に延期すると事業売却のことなどが家族にばれてしまう。すぐさま出立したい。
ノエルは男女二人の護衛の依頼を出していた。
ある程度の資産を持ち歩く非力な自分に、男の護衛が一人というのは怖かったのだ。
これまでも小柄であどけない顔をしているからか、幾度か男性に無体を働かれそうになったことがある。いくら信用できると紹介を受けていても初めての相手だから警戒するに越したことはない。
だからと言って女性の護衛を指名すると逆に相手が警戒するだろうし、いざという時に守ってもらえるのか心配になる。
そのため、男女二人の護衛を依頼していたのだが。
「ですが! もう一人はうちのギルド一信頼の置ける護衛ですのでそれでお願いできませんか?」
ギルド職員は必死でアピールをしてきた。
何しろ、ノエルは豊富な資金をもとに依頼料を奮発している。ギルド職員は逃したくはないのだ。
だが、これから新居まで何泊かしながらの旅となる。見知らぬ男性と二人きりというのは気も使うし、自分の身の安全面でもノエルは不安に思うのだ。
これならば一日二日出発を先延ばしにして、ほかの所に依頼するしかないかと考えていた時、そんな雰囲気を悟ったのか受付が慌てたようにさらに言葉を続ける。
ノエルが別の所に依頼をすると、このギルドの収入減と信頼に関わる事態となる。
受付は男性護衛について人畜無害&優秀であることを力説した。
「人柄100%保証付き! とりあえず! とりあえず会ってみてください! そのうえでお決めになって結構ですから!」
「ま……せっかく来たので会うだけなら」
少々がっかりした気分でノエルは面会室に向かった。
面会室の中にはノエルより少し年が上くらいの、まだ若いすらりと背の高い男が座っていた。その隣にはなんとギルド長まで座っていた。
「ノエル様。この度はご要望にお応えできずに申し訳ありません。ですが彼は最高の護衛ですので検討をしていただければと」
「長旅の仲間になるので……やはり女性の護衛とペアの方がありがたいのですが。せっかく待っていただいて申し訳ないのですが」
「いやいや、ノエル様。ラクロワ国に向かうならこの男が一番です。彼はその地理に明るい上に、強い。この男一人がいれば旅のトラブルも心配ありませんから! ノエル様の心配は了解しておりますが、この男の人間性は保証します!」
ギルド長まで人柄をえらく押してくる。よほどこの依頼を断って欲しくないらしい。まあ、破格の料金を払う約束だから。
ノエルはこの依頼を取り下げるつもりでいたが、あまりにも熱心に薦められるのでギルド長の横に座っている男を見た。
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