ブリアール公爵家の第二夫人

大城いぬこ

文字の大きさ
130 / 173

閨2

しおりを挟む



 ディオルド様の与える刺激が強くてなにも考えられなくなっていた。感じたことのない感覚が気持ちがいいと思うまで時間はかからず、秘所を舐められる度に体が強ばるほどの快感に、いいと言うには恥ずかしくて、ただ声を上げ、名を呼ぶことしかできなかった。 

「すまん」 

 ディオルド様の声のあと、熱くて大きなものが私の奥へと入り、あまりの圧迫感にディオルド様の腕を掴んでいた。 

「ああ!ディオ…ンン!!」 

「ロシェ…ル…せまい…く…」 

 腰を引いたディオルド様はすぐさま突き入れ私を揺らした。 

「ああ!」 

 奥を突かれる度に強い衝撃が体を巡り、熱い局部に視界を揺らされる。 ディオルド様の力んだ顔が近づき、口を覆われ舌が入る。呼吸も声も吸われて息苦しい。 

「ぐっ…」 

 熱いものが私のなかへ注がれる。それが子種だと理解したとき、涙が溢れた。なぜか流れる涙に、注がれる子種に、喜びを感じた。 

「ロシェル…ロシェル」 

 ディオルド様は嬉しそうに私を見つめ、頬を包み涙を払った。優しい仕草に胸が熱くなる。 

「痛くないか?…ああ…ロシェル…泣くな…もう嫌か?やめるか?すまん…加減が…ロシェル」 

 こんなにも私を思いやる人がいてくれる。私のことを宝と言ったジェイデン様が頭に浮かぶ。いつか、ディオルド様もそう思ってくれる? 

「痛く…ない…ディオルド…さま…私たち…繋がって…嬉しい…もっと…子種をください…あ!」 

 私のなかでディオルド様の局部が動いた。男性は子種を吐き出すと落ち着くものだと本に書かれていたのに…これは落ち着いて… 

「ロシェル…お前が誘惑したんだぞ…終わらんぞ」 

 険しく睨む臙脂の瞳に下腹が力んだ。 

「く…ロシェル…なんてことをする…」 

 なにもしていないわ… 

「すごいぞ…香る…」 

 香る…?  恍惚とした顔をするディオルド様が腰を振り始め、私はまた揺さぶられる。 

「あ!う…ディオル…ン!いい!あ!」 

 私たちが繋がっているところから聞こえる音に恥ずかしくなる。腰が振られる度に打ちつく音も秘所が濡れているせいで発する音も、ディオルド様の荒い呼吸も私を高ぶらせる。 

「ディオ…」 

 揺らされながらディオルド様の顔に触れ、引き寄せ口付けが欲しいと理解してほしくて口を開けると舌をくれた。厚い舌を咥えて吸っては絡める。ディオルド様の両腕が私の体に巻きつき密着する。 

「ロシェル…ロシェル」 

 合わさる唇から熱い声が私の名を呼ぶ。呼ばれる度に下腹が力む。 

 一際大きく突かれて、ディオルド様の呼吸が注がれ、熱い子種が私のなかを叩くように広がる感覚に、幸せを感じた。満たされていく体にジェイデン様の言った喜びを確かに感じた。 

「あ…あ…いい…ディオルド様…気持ちい…い」 

 もう恥ずかしさも消えて口から出ていた。苦しいくらいに私を抱き締める力も重みも心地よくて、力が入らない腕をゆっくりと上げてディオルド様のガウンを掴む。 ディオルド様の熱くて荒い呼吸が耳をくすぐる度に声が出そうになる。 

「…ディオルド様…触れたい…あなたに触れたい」 

 ガウンを脱いで欲しい。 私の言葉を理解したのか、ディオルド様は私に巻きつけていた腕を離し、体勢を変えないまま無言でガウンを脱ぎ捨てた。 

「…これでいいか?」 

 私は返事になるように、たくましい体に腕を回す。 

「素肌が気持ちいい」 

 熱くて湿った体が、合わさる胸から早鐘のように打ち付ける鼓動が心地いい。 

「ディオルド様…好きです」 

 私の首に顔を埋めているディオルド様に告げていた。 

「俺も…ロシェル…俺も好きだ」 

「嬉しい」 

 繋がったまま離れたくなかった。でも終わったなら離れることになる。このまま眠ることはできない。 

「…足は痛くないか?広げっぱなしだ」 

 ディオルド様の言葉に足に力を入れ、たくましい腰を引き寄せるように抱く。 

「平気」 

「…ロシェル…誘惑はやめろと言ったろ」 

「ふふ…なにが誘惑がわかりません…ごめんなさい」 



 俺は匂いに狂わされ、ロシェルの乱れた姿に胸を高鳴らせ、好きと言われて浮かれた。

 多幸感が頭の天辺から足先まで広がる感覚、強烈な快感に我を忘れた。 気がつけば細い足首を掴み、左右に広げて一心不乱に腰を打ち付けていた。

 ロシェルの投げ出された腕も虚ろな水色も、口の端から流れる唾液も揺れる頂もまるで夢の中の光景のようだ。 

「ロシェル…ロシェル」 

 もうロシェルは返事をくれない。俺の名を呼んでくれない。再び訪れた射精感にロシェルを抱き上げ、俺を跨ぐような体勢にし、体を丸めて汗ばむ乳房に耳をくっつけ鼓動を聞きながら突き上げる。 

「ああ!」 

 この体勢は奥を穿ったようで、気を失っていたロシェルを目覚めさせた。 

「ロシェル」 

「あう!や!あ!」 

 ロシェルが俺の陰茎から快感を得ている。秘所から溢れる膣液は俺の秘毛を濡らし、注ぎすぎた子種と混ざり股間が濡れて突くたびに淫らな音を部屋に響かせている。それにも欲情を煽られ、俺の興奮は頂点に達している。 

「ははっお前の鼓動が早鐘のようだ」 

 折れてしまうのではないかと思うほど細い体を俺に押しつけ、喘ぎと共に鼓動を聞く。 

「ディオ……ディオルド…」 

 切な気な声に顔を傾けると水色の瞳から涙を流し見ていた。揺らせば雫が俺に向かい頬に落ち顎へ伝う。 

「ディオルド」 

 いつもの落ち着いてしっとりとした声とは違い、少し高く甘えたような声音に腰が震える。俺は突き上げを止めて、ゆっくりと揺さぶる。 

「もっと呼んでくれ」 

「ディオ……ン!あ…いい」 

「ああ…気持ちいいな…お前のなかはものすごく気持ちいいんだ…ロシェル…口の中も腹の中も」 

 ガガが女を抱く理由を知った。こんなにも幸せな気持ちになる。 

「ディオ…あなたの…気持ちい…い…」 

 俺の陰茎が気持ちいいと言ってる。俺は丸めていた体を伸ばし、赤い唇に向かう。唇は待ちわびていたように少し開き、誘われるまま合わせる。 

「ふ…ん…ディ…」 

「はは…ロシェル…離れられんな」 


 何度出しただろうか。燭台の蝋燭が燃え尽き、残っているのは寝台近くの灯りだけになっていた。それだけ俺はロシェルの中にいる。抜きたくなくて入れたままだ。 

「無理だ…こんなものを知ってしまった…俺はもう…手放せん…一日を…ここで過ごしたい」 

「ん…」 

 頬を染めたロシェルが口付けしながら頷いた。 

「上手に…」 

「はは…ああ…上手だ」 

 気にしていたのか。 

「上手だから離せん…お前のせいだな?」 

「…嬉しい」 

 嬉しいか。そう思うか。 

「ははっ…今夜は眠れんな」 

 俺にこれだけの幸せを与えてくれるロシェル。下階で過ごしていた夜は、酒と悪夢と気だるさが俺の常だった。今はどうだ?悪夢は離れ、酒を飲まんでも眠れ、深い眠りは短くても体を回復させ、初めて味わう快楽に浸っている。 

「ああ…これが幸せか…お前は俺の幸せか」 

 ロシェルの口は離れていた。水色の瞳も閉ざされ、支える体は力を失くしていた。また意識を失ったお前のことを俺は気遣いを忘れ揺さぶる。 高ぶる射精感に陰茎をロシェルに押し込み、最奥で吐き出す。意識を失っているくせに腟内は収縮し痙攣する。女が絶頂を迎えたときに起こる変化を陰茎から感じ頬が緩む。 

「…どんな顔だろうな…誰にも見せられんな」 

 それほど俺の顔は緩んでいるだろう。笑っているのかもしれん。 

 盲目と言われたが、まさにその通りだ。ロシェルを害する奴らは問答無用で殺し回れる気分だ。公爵位だろうが、国を支える男であろうが、無抵抗の女であろうが笑って殺せる。 

「はは!……愛とは怖いな…ロシェル…これが愛だろ?」 

 ロシェルの顔を掴み、口を合わせる。流れる唾液を何度も飲み込み、満足するまで続けた。 

「くく…変態だろ」 

 完全に変態になったぞ。 ゆっくりとロシェルを寝台に寝かせ、そのまま覆う。陰茎はやっと力を失くしたがロシェルの匂いは部屋に充満している。 

「赤くしてやる」 

 繋がったまま、届く範囲に吸い付き痕を残していく。 

「エコーが見たら怒るか?…ふん…知るか」 

 甘い匂いを吸い込み、脳を痺れさせながら夢中で吸う。





しおりを挟む
感想 161

あなたにおすすめの小説

私のための戦いから戻ってきた騎士様なら、愛人を持ってもいいとでも?

睡蓮
恋愛
全7話完結になります!

初恋だったお兄様から好きだと言われ失恋した私の出会いがあるまでの日

クロユキ
恋愛
隣に住む私より一つ年上のお兄さんは、優しくて肩まで伸ばした金色の髪の毛を結ぶその姿は王子様のようで私には初恋の人でもあった。 いつも学園が休みの日には、お茶をしてお喋りをして…勉強を教えてくれるお兄さんから好きだと言われて信じられない私は泣きながら喜んだ…でもその好きは恋人の好きではなかった…… 誤字脱字がありますが、読んでもらえたら嬉しいです。 更新が不定期ですが、よろしくお願いします。

あなたのためなら

天海月
恋愛
エルランド国の王であるセルヴィスは、禁忌魔術を使って偽の番を騙った女レクシアと婚約したが、嘘は露見し婚約破棄後に彼女は処刑となった。 その後、セルヴィスの真の番だという侯爵令嬢アメリアが現れ、二人は婚姻を結んだ。 アメリアは心からセルヴィスを愛し、彼からの愛を求めた。 しかし、今のセルヴィスは彼女に愛を返すことが出来なくなっていた。 理由も分からないアメリアは、セルヴィスが愛してくれないのは自分の行いが悪いからに違いないと自らを責めはじめ、次第に歯車が狂っていく。 全ては偽の番に過度のショックを受けたセルヴィスが、衝動的に行ってしまった或ることが原因だった・・・。

波の音 傷ついた二人の間にあったもの

Rj
恋愛
妻のエレノアよりも愛人を選んだ夫が亡くなり海辺の町で静養していたエレノアは、再起不能の怪我をした十歳年下のピアニストのヘンリーと出会う。二人はゆっくりお互いの傷をいやしそれぞれがあるべき場所へともどっていく。 流産や子を亡くした表現が含まれています。 本編四話に番外編一話を加え全五話になりました。(1/11変更)

婚約者を取り替えて欲しいと妹に言われました

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ポーレット伯爵家の一人娘レティシア。レティシアの母が亡くなってすぐに父は後妻と娘ヘザーを屋敷に迎え入れた。 将来伯爵家を継ぐことになっているレティシアに、縁談が持ち上がる。相手は伯爵家の次男ジョナス。美しい青年ジョナスは顔合わせの日にヘザーを見て顔を赤くする。 レティシアとジョナスの縁談は一旦まとまったが、男爵との縁談を嫌がったヘザーのため義母が婚約者の交換を提案する……。

愛する人は、貴方だけ

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。 天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。 公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。 平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。 やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。

あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です。

秋月一花
恋愛
「すまないね、レディ。僕には愛しい婚約者がいるんだ。そんなに見つめられても、君とデートすることすら出来ないんだ」 「え? 私、あなたのことを見つめていませんけれど……?」 「なにを言っているんだい、さっきから熱い視線をむけていたじゃないかっ」 「あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です」  あなたの護衛を見つめていました。だって好きなのだもの。見つめるくらいは許して欲しい。恋人になりたいなんて身分違いのことを考えないから、それだけはどうか。 「……やっぱり今日も格好いいわ、ライナルト様」  うっとりと呟く私に、ライナルト様はぎょっとしたような表情を浮かべて――それから、 「――俺のことが怖くないのか?」  と話し掛けられちゃった! これはライナルト様とお話しするチャンスなのでは?  よーし、せめてお友達になれるようにがんばろう!

虚弱で大人しい姉のことが、婚約者のあの方はお好きなようで……

くわっと
恋愛
21.05.23完結 ーー 「ごめんなさい、姉が私の帰りを待っていますのでーー」 差し伸べられた手をするりとかわす。 これが、公爵家令嬢リトアの婚約者『でも』あるカストリアの決まり文句である。 決まり文句、というだけで、その言葉には嘘偽りはない。 彼の最愛の姉であるイデアは本当に彼の帰りを待っているし、婚約者の一人でもあるリトアとの甘い時間を終わらせたくないのも本当である。 だが、本当であるからこそ、余計にタチが悪い。 地位も名誉も権力も。 武力も知力も財力も。 全て、とは言わないにしろ、そのほとんどを所有しているこの男のことが。 月並みに好きな自分が、ただただみっともない。 けれど、それでも。 一緒にいられるならば。 婚約者という、その他大勢とは違う立場にいられるならば。 それだけで良かった。 少なくとも、その時は。

処理中です...