19 / 57
庭園
しおりを挟む
「ケリー…散歩に行けるかしら?」
フェリシアは窓辺に立ちながら外を眺め尋ねる。
「…聞いてきます」
「お願い」
フェリシアは好きなように部屋から出ることを禁じられた。エルマリアとレイモンドに偶然会ってしまわないようにとソロモンからの命令だった。
「レイの結婚からなにもかもが変わってしまったわ」
冷たい硝子に額をつけていると外を歩く使用人と目が合い手を振る。使用人は嬉しそうにフェリシアに手を振り返す。 自由を奪われた状況が歯がゆくて苛ついても微笑み手を振るフェリシアは数日前から訪れなくなったレイモンドを想う。
「子爵令嬢と会った日から…」
なにを言われたのかと想像していたフェリシアのもとにケリーが戻った。
「フェリシア様、邸内なら歩いていいそうです」
「邸内…だけ?」
フェリシアは暖かい日差しを浴びたかった。
「レイモンド様と子爵令嬢が…」
それを聞いたフェリシアは理解した。レイモンドとエルマリアが共に庭にいるせいで行動を制限されている。
「ケリー…レイが会いに来てくれないの」
「…子爵令嬢と話したあと旦那様の執務室へ行かれ…その後…レイモンド様の様子が変わったそうです」
「…おじ様がなにか言ったのかしら?それとも子爵令嬢…?」
「奥様は茶会を開かなくなり商人も呼びません。旦那様はシモンズ家からの持参金に手を出しづらいのかもしれません。フローレン侯爵家は財政難だと使用人の間では噂になっています」
「おば様の茶会は豪勢だもの…楽団に有名な菓子店を呼んで……おじ様はこの結婚が破綻してしまえば持参金を返さなくてはならないのね」
「両家で契約書が交わされているはずです。旦那様の様子を見るに…そうでしょう」
「だから…子爵令嬢に気を使って…私が初夜にレイを引き留めたせいで…でも…レイが他の女性を抱くなんて嫌よ…耐えられないわ」
ケリーはフェリシアに近づき震える肩を抱き締める。
「レイモンド様はフローレン侯爵家のために我慢をしているのですよ…夜…忍ばれないのも旦那様に釘を刺されたのでは?知られてしまってはフェリシア様を他へ移すと…」
「ええ…でも…レイと少しでも話したいわ」
「このケリーがその機会をうかがいます」
フェリシアはケリーを見つめる。
「本当…?ありがとうケリー…邸内を歩いたら厨房へ行くわ。久しぶりに焼き菓子を作って皆に配りたいの」
頷くケリーと共に部屋を出たフェリシアは廊下を歩きながら飾られた絵画が変わっていることに気がついた。
「新しい絵画ね…絵画を買う余裕はあるのかしら?そんなに心配することではなさそうね」
「あら…フェリシア」
「おば様!久しぶりですわっ」
フェリシアはアンジェルを見つけ足早に駆ける。
「夕食を共にできないから食堂が寂しくなったわ、フェリシア。あなたの存在が食堂を明るくしていたのねぇ」
アンジェルの言葉にフェリシアは喜ぶ。
「おば様がいるだけでおじ様は嬉しいでしょう?」
「んふ…そうね。でも最近は冷たいのよね…ソニーはイライラしていることが多いの…なぜかしら?」
アンジェルの視線はフェリシアにある。微笑んでいても責めるような言い方をされているとフェリシアは思ってしまう。
「…私にはわかりません。突然一人になってしまって」
「そうよね。茶会を開けないから暇なの。他家に行くしかないのよ。フェリシア、あなたも行く?夫人たちはあなたの話を聞きたがるの」
少女のフェリシアを残して死んだランド男爵夫妻と放り出された令嬢に情けをかけたフローレン侯爵家。楽しい噂が途絶えたときにアンジェルがその話をすれば夫人たちはフェリシアを哀れみアンジェルを称える。
「今ですか?」
アンジェルは着飾っている。後ろに侍るメイドはいつもより控えめだがドレスを着ている。
「外出用のドレスに着替えなくてはなりませんわ」
「そうね、その衣装では駄目ね。子爵令嬢を見た?贅を凝らした衣装…宝石をいくつも散らして…子爵が送ってきたのよ…甘やかされているのねぇ…生家が裕福だと困ることがないわねぇ」
アンジェルの嫌みを笑顔で耐えるのはいつものことだったが今のフェリシアにはきつかった。涙を流さないよう全身を力ませた。
「そうですわね。父親だけでもいる子爵令嬢が羨ましいですわ」
「ああ…子爵令嬢も母親が馬車事故…?だったかしら?え?盗賊に?」
アンジェルの思い違いに後ろにいたメイドが耳打ちして教える。
「まあ、かわいそう。今度は子爵令嬢を連れて茶会に行こうかしらね」
笑いながら歩き始めたアンジェルを見送ったフェリシアは高ぶる感情を抑えようと庭に視線を移した。フェリシアの気に入りの場所にはレイモンドとエルマリアが談笑している姿があった。
「レイ…笑ってる…どうして?」
「フェリシア様…」
「フェリシアは…ランドに戻される」
「まあ…侯爵閣下は決めましたの?」
「…ああ…」
「私たちがこうして会談の場を設けているのに…」
首を傾げるエルマリアにレイモンドは地面に視線を落とす。
「いろいろ考えてだろう」
「レイモンド様はどうしますの?男爵令嬢が離れるなど耐えられないでしょう?」
レイモンドは気安い感じで尋ねるエルマリアを見つめる。金色の髪が緩い風になびき赤い唇はいつものように弧を描いている。数多の宝石が木漏れ日に照らされ輝き美しいと見惚れていた。
「フェリシアとは楽しい思い出が多い…それだけ長く共にいた…一緒に成長した。君には兄がいるだろう?」
「ええ。でも会話が少ない兄妹でした。兄は後継として父から厳しく教育されていましたから私と関わる時間などありませんでした」
「そうなのか」
「はい。あ…」
エルマリアは手のひらで顔を覆った。
「どうした?」
「…目に…ザザ…」
「待て」
ザザはレイモンドの指示に従わずエルマリアに近づきひざまずく。
「おい!離れろ」
レイモンドの声にダダが動きザザの肩を掴んでエルマリアから離そうとする。
「レイモンド様の指示だ…離れろ」
ダダを睨み付けたザザは動かない。
「ザザ、いいの。今はレイモンド様に従って」
エルマリアの言葉にザザは立ち上がり少し離れ、レイモンドがその場に膝を突く。
「エルマリア、なんだ?」
「目に…風のせいかしら?なにか…」
レイモンドはエルマリアの細い腕を掴み顔から離すと現れた垂れた紫の瞳から涙が何粒も落ちた。
「あ…」
エルマリアは何度か瞬き、異物が消えたことを確認した。
「レイモンド様、取れましたわ…あまり外には出ないので驚きました」
涙を流しながら笑うエルマリアの肌が透けるように白く滑らかでレイモンドは視線を奪われ離せなくなった。
「レイモンド様?膝に土が着きます」
もう立ち上がっていいとエルマリアは伝えたつもりだったがレイモンドは紫の瞳を見つめたまま離れなかった。
「ハ…ハンカチを」
レイモンドは懐に手を入れエルマリアの濡れた頬をハンカチで押さえる。
「レイ!」
突然呼ばれた声にレイモンドの体は揺れる。少し離れた場所からフェリシアが足早に近づいてきた。
フェリシアは窓辺に立ちながら外を眺め尋ねる。
「…聞いてきます」
「お願い」
フェリシアは好きなように部屋から出ることを禁じられた。エルマリアとレイモンドに偶然会ってしまわないようにとソロモンからの命令だった。
「レイの結婚からなにもかもが変わってしまったわ」
冷たい硝子に額をつけていると外を歩く使用人と目が合い手を振る。使用人は嬉しそうにフェリシアに手を振り返す。 自由を奪われた状況が歯がゆくて苛ついても微笑み手を振るフェリシアは数日前から訪れなくなったレイモンドを想う。
「子爵令嬢と会った日から…」
なにを言われたのかと想像していたフェリシアのもとにケリーが戻った。
「フェリシア様、邸内なら歩いていいそうです」
「邸内…だけ?」
フェリシアは暖かい日差しを浴びたかった。
「レイモンド様と子爵令嬢が…」
それを聞いたフェリシアは理解した。レイモンドとエルマリアが共に庭にいるせいで行動を制限されている。
「ケリー…レイが会いに来てくれないの」
「…子爵令嬢と話したあと旦那様の執務室へ行かれ…その後…レイモンド様の様子が変わったそうです」
「…おじ様がなにか言ったのかしら?それとも子爵令嬢…?」
「奥様は茶会を開かなくなり商人も呼びません。旦那様はシモンズ家からの持参金に手を出しづらいのかもしれません。フローレン侯爵家は財政難だと使用人の間では噂になっています」
「おば様の茶会は豪勢だもの…楽団に有名な菓子店を呼んで……おじ様はこの結婚が破綻してしまえば持参金を返さなくてはならないのね」
「両家で契約書が交わされているはずです。旦那様の様子を見るに…そうでしょう」
「だから…子爵令嬢に気を使って…私が初夜にレイを引き留めたせいで…でも…レイが他の女性を抱くなんて嫌よ…耐えられないわ」
ケリーはフェリシアに近づき震える肩を抱き締める。
「レイモンド様はフローレン侯爵家のために我慢をしているのですよ…夜…忍ばれないのも旦那様に釘を刺されたのでは?知られてしまってはフェリシア様を他へ移すと…」
「ええ…でも…レイと少しでも話したいわ」
「このケリーがその機会をうかがいます」
フェリシアはケリーを見つめる。
「本当…?ありがとうケリー…邸内を歩いたら厨房へ行くわ。久しぶりに焼き菓子を作って皆に配りたいの」
頷くケリーと共に部屋を出たフェリシアは廊下を歩きながら飾られた絵画が変わっていることに気がついた。
「新しい絵画ね…絵画を買う余裕はあるのかしら?そんなに心配することではなさそうね」
「あら…フェリシア」
「おば様!久しぶりですわっ」
フェリシアはアンジェルを見つけ足早に駆ける。
「夕食を共にできないから食堂が寂しくなったわ、フェリシア。あなたの存在が食堂を明るくしていたのねぇ」
アンジェルの言葉にフェリシアは喜ぶ。
「おば様がいるだけでおじ様は嬉しいでしょう?」
「んふ…そうね。でも最近は冷たいのよね…ソニーはイライラしていることが多いの…なぜかしら?」
アンジェルの視線はフェリシアにある。微笑んでいても責めるような言い方をされているとフェリシアは思ってしまう。
「…私にはわかりません。突然一人になってしまって」
「そうよね。茶会を開けないから暇なの。他家に行くしかないのよ。フェリシア、あなたも行く?夫人たちはあなたの話を聞きたがるの」
少女のフェリシアを残して死んだランド男爵夫妻と放り出された令嬢に情けをかけたフローレン侯爵家。楽しい噂が途絶えたときにアンジェルがその話をすれば夫人たちはフェリシアを哀れみアンジェルを称える。
「今ですか?」
アンジェルは着飾っている。後ろに侍るメイドはいつもより控えめだがドレスを着ている。
「外出用のドレスに着替えなくてはなりませんわ」
「そうね、その衣装では駄目ね。子爵令嬢を見た?贅を凝らした衣装…宝石をいくつも散らして…子爵が送ってきたのよ…甘やかされているのねぇ…生家が裕福だと困ることがないわねぇ」
アンジェルの嫌みを笑顔で耐えるのはいつものことだったが今のフェリシアにはきつかった。涙を流さないよう全身を力ませた。
「そうですわね。父親だけでもいる子爵令嬢が羨ましいですわ」
「ああ…子爵令嬢も母親が馬車事故…?だったかしら?え?盗賊に?」
アンジェルの思い違いに後ろにいたメイドが耳打ちして教える。
「まあ、かわいそう。今度は子爵令嬢を連れて茶会に行こうかしらね」
笑いながら歩き始めたアンジェルを見送ったフェリシアは高ぶる感情を抑えようと庭に視線を移した。フェリシアの気に入りの場所にはレイモンドとエルマリアが談笑している姿があった。
「レイ…笑ってる…どうして?」
「フェリシア様…」
「フェリシアは…ランドに戻される」
「まあ…侯爵閣下は決めましたの?」
「…ああ…」
「私たちがこうして会談の場を設けているのに…」
首を傾げるエルマリアにレイモンドは地面に視線を落とす。
「いろいろ考えてだろう」
「レイモンド様はどうしますの?男爵令嬢が離れるなど耐えられないでしょう?」
レイモンドは気安い感じで尋ねるエルマリアを見つめる。金色の髪が緩い風になびき赤い唇はいつものように弧を描いている。数多の宝石が木漏れ日に照らされ輝き美しいと見惚れていた。
「フェリシアとは楽しい思い出が多い…それだけ長く共にいた…一緒に成長した。君には兄がいるだろう?」
「ええ。でも会話が少ない兄妹でした。兄は後継として父から厳しく教育されていましたから私と関わる時間などありませんでした」
「そうなのか」
「はい。あ…」
エルマリアは手のひらで顔を覆った。
「どうした?」
「…目に…ザザ…」
「待て」
ザザはレイモンドの指示に従わずエルマリアに近づきひざまずく。
「おい!離れろ」
レイモンドの声にダダが動きザザの肩を掴んでエルマリアから離そうとする。
「レイモンド様の指示だ…離れろ」
ダダを睨み付けたザザは動かない。
「ザザ、いいの。今はレイモンド様に従って」
エルマリアの言葉にザザは立ち上がり少し離れ、レイモンドがその場に膝を突く。
「エルマリア、なんだ?」
「目に…風のせいかしら?なにか…」
レイモンドはエルマリアの細い腕を掴み顔から離すと現れた垂れた紫の瞳から涙が何粒も落ちた。
「あ…」
エルマリアは何度か瞬き、異物が消えたことを確認した。
「レイモンド様、取れましたわ…あまり外には出ないので驚きました」
涙を流しながら笑うエルマリアの肌が透けるように白く滑らかでレイモンドは視線を奪われ離せなくなった。
「レイモンド様?膝に土が着きます」
もう立ち上がっていいとエルマリアは伝えたつもりだったがレイモンドは紫の瞳を見つめたまま離れなかった。
「ハ…ハンカチを」
レイモンドは懐に手を入れエルマリアの濡れた頬をハンカチで押さえる。
「レイ!」
突然呼ばれた声にレイモンドの体は揺れる。少し離れた場所からフェリシアが足早に近づいてきた。
1,935
あなたにおすすめの小説
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
婚約者の幼馴染?それが何か?
仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた
「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」
目の前にいる私の事はガン無視である
「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」
リカルドにそう言われたマリサは
「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」
ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・
「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」
「そんな!リカルド酷い!」
マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している
この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ
タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」
「まってくれタバサ!誤解なんだ」
リカルドを置いて、タバサは席を立った
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる