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庭園2
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「フェリシア…」
男爵令嬢が桃色の髪を乱しながら私たちに向かって駆け寄る。青い瞳が私を睨んでいるように見えた。
「レイ!」
勢いよく近づく男爵令嬢を見ながら私は浮いていた。椅子ごと宙に浮いて愛し合う二人から離れていく。レイモンドの驚く顔が私を見ている。
「ザザ…?」
「ぶはっ」
ダダが笑い口を押さえている様子が下に見える。なかなかな高さに椅子を掴んで落ちないよう体が固まってしまう。
「ふふっザザ…令嬢はレイモンド様に向かっていたわ」
首を傾けるとザザの顔が下にあった。
「ふふ!ザザ、重くないの?信じられない怪力ね」
こんな高さに持ち上げられたことがない。 椅子を掴んだ手を離して、近づいた葉に触れる。
「すごい…」
落ち葉ではなく生き生きと枝についている葉が珍しくて見つめてしまう。シモンズにいた頃は落ち葉と土しか見ていなかった。
「レイ!どこを見てるの!?私に会いに来ないで彼女と会ってるなんて!楽しそうに!」
男爵令嬢の声に我に返った。レイモンドはまだ私を見ていた。
…異様な光景よね…
「ザザ、下ろして」
ゆっくりと下ろされて椅子が地面に着いた。
「おい!僕にもしてくれ!」
どこで見ていたのかジェイコブが駆けてくる。
「今の!」
「ふふ」
顔を赤らめて駆けるジェイコブが面白くて笑ってしまう。
「レイ!聞いてる!?」
「フェリシア…父上から会うなと言われている」
「それでも!よ…」
レイモンドが男爵令嬢の口を押さえて言葉を止めた。私の意識はすでにジェイコブにある。二人は勝手にやったらいいわ。
「ジェイコブ様、落ちたら怪我をしますよ」
「え…?でもエルマリアは落ちなかったじゃないか」
「絶対に動かないと約束できます?」
嬉しそうに頷くジェイコブに頬が緩む。
「ザザ」
私は椅子から立ち上がるとジェイコブが座りザザを見上げる。
「ゆっくりね」
頷いたザザはジェイコブごと椅子を持ち上げた。
「ははっすごいや。高い!」
はしゃぐジェイコブにダダが戸惑っている。
「ジェイコブ様!動かない約束!」
「手を伸ばしているだけ!」
ダダの言葉に子供のように答える姿がなんだか微笑ましいわ。いつの間にかレイモンドと男爵令嬢がいなくなっていた。
「フェリシア…落ち着け」
庭から離れたレイモンドはフェリシアを邸の近くに引っ張り連れてきた。
「レイ…ひどいわ…子爵令嬢にあんなに近づいて…触れないと約束したわ!嘘つき!」
レイモンドは嘘つきと言われ複雑な心境になった。それでもフェリシアを問いただすことができなかった。
「エルマリアの目になにか入った…それを見ただけだ」
レイモンドはフェリシアに説明しながらエルマリアの紫色に輝く瞳を思い出していた。涙に濡れた紫は揺らめいて魅惑的に見えた。豊かな胸の谷間が白く盛り上がり、エルマリアが笑うと誘うように揺れた。
「夜…来てくれないのね」
「父上の監視が厳しくなった」
それは嘘だったがレイモンドはフェリシアに会いたくなかった。フェリシアが今でもランド領を怖いと言うことに意味がわからなくなっていた。
「こんなところを見られたら問答無用でランド領地に戻されてしまうぞ」
レイモンドの言葉にフェリシアは涙を流しながら胸に飛び込む。
「いやよ…わかっているでしょう…?怖いの…また…また…いやらしい目で私を見るわ」
「フェ…」
レイモンドはソロモンと話してからフェリシアに対してどう接していいのかわからなくなっていた。
「興奮しないでくれ…エルマリアは俺になにかを求めていないし…ただ話をしているだけだ…父上の目を誤魔化せる。状況が落ち着くまで静かに過ごそう」
「…いつまで?子爵令嬢はレイの周りにいない感じの女性よね…白い肌に少し垂れ目で大きな瞳…けど…幽霊みたいだとレイは言っていたものね」
「…ああ」
レイモンドは近くで見たら美しい肌だった…とフェリシアの言葉を聞きながら思い出していた。
「レイ」
フェリシアは口づけを求めるように背伸びをしてレイモンドに近づくが肩を掴まれ動きが止まる。
「レイ…?」
険しいフェリシアの視線から逃れ、体を傾けたレイモンドは周りを見回す。
「人に見られたら困るだろう?」
フェリシアはレイモンドの変化に気づきながらもいつものように悲しげな顔を向けて涙を落とし愛を口にする。
「愛しているわ、レイ」
「…ああ」
フェリシアはレイモンドの言葉に胸を痛めるが耐えてその場から離れた。
物陰から見張りをしていたケリーがフェリシアのもとへ向かう。
「フェリシア様」
「ケリー!」
フェリシアはケリーに泣きすがる。
「レイが…レイが…離れていく…わ…私よりも子爵令嬢を…」
「そんなことありません。レイモンド様はフェリシア様を想っています。今は仕方ないときなのです」
「…ランド領地に戻されないため?」
「はい。旦那様には子爵令嬢の持参金が必要です…結婚したばかりの子爵令嬢に気を遣うのは仕方ないこと…シモンズ子爵のもとへ戻っては金も失くなります」
「どうして…フローレンは侯爵家なのに…贅沢に過ごしてきたのに…」
「レイモンド様に伝えることがあるなら仲間に託します。手紙を書きますか?」
「本当?ケリー…頼める?」
「もちろんです」
ケリーの言葉にフェリシアの心は少し落ち着く。
「上手になったわ、カイナ」
「そうですか?嬉しいです。ザザ、湯をちょうだい」
ザザは大きな盥を持ち上げカイナの横に置く。
「流しますね」
カイナは盥から湯をすくいエルマリアの髪についた泡を流す。
「レイモンド様と話したのですよね?」
「ええ。なんだか普通に話せたわ」
「…エルマリア様…フェリシア様になにも思わないのですか?私なら旦那様に追い出すよう言います」
「男爵令嬢は侯爵閣下にとって娘のようなものでしょう?強く言えないわ」
「でも…エルマリア様…フローレン侯爵家は財政難と使用人仲間が話しています」
「カイナ、使用人たちと話すの?」
「ふふ、盗み聞きです。洗濯女たちは腕を動かしながら情報交換をします。エルマリア様のそばについてから他の使用人とは話しません。近づく人はエルマリア様のことを知りたがる人たちです」
「なにか聞かれた?」
「給金やエルマリア様の性格…ザザはそばでどんな仕事をしているのか…」
「そう…カイナ」
「はい」
一部の使用人の間でザザは有名だった。そのせいでエルマリアに対し卑猥な想像をするものがいた。レイモンドの代わりにザザがエルマリアの夜の相手をしているとまで妄想する使用人がいることをカイナは話すか迷った。
「ザザって人気があるの?」
「え?」
「金を支払ってまでザザを買う女性がいるとレイモンド様が言ったのよ」
「えっと…」
カイナはザザをちらと見てから口ごもる。陰茎がすごいなど言えなかった。
「野性的な容貌のせい?平民女性は巨体が好みなのかしら?人気があるのはレイモンド様のように美男子だと思い込んでいたわ…世間知らずは駄目ね」
「…人の好みはいろいろ…です…エルマリア様は?どんな男性が好みなんですか?」
カイナは話題を変えることにした。
「そうね…好み…」
エルマリアは目蓋を閉じて想像する。
「私の…意思を尊重して大切に扱ってくれる人…」
「意思を尊重…?」
カイナにはよくわからなかった。
「ふふ…本当は私もよくわからないの。男性を好きになったことがないもの」
男爵令嬢が桃色の髪を乱しながら私たちに向かって駆け寄る。青い瞳が私を睨んでいるように見えた。
「レイ!」
勢いよく近づく男爵令嬢を見ながら私は浮いていた。椅子ごと宙に浮いて愛し合う二人から離れていく。レイモンドの驚く顔が私を見ている。
「ザザ…?」
「ぶはっ」
ダダが笑い口を押さえている様子が下に見える。なかなかな高さに椅子を掴んで落ちないよう体が固まってしまう。
「ふふっザザ…令嬢はレイモンド様に向かっていたわ」
首を傾けるとザザの顔が下にあった。
「ふふ!ザザ、重くないの?信じられない怪力ね」
こんな高さに持ち上げられたことがない。 椅子を掴んだ手を離して、近づいた葉に触れる。
「すごい…」
落ち葉ではなく生き生きと枝についている葉が珍しくて見つめてしまう。シモンズにいた頃は落ち葉と土しか見ていなかった。
「レイ!どこを見てるの!?私に会いに来ないで彼女と会ってるなんて!楽しそうに!」
男爵令嬢の声に我に返った。レイモンドはまだ私を見ていた。
…異様な光景よね…
「ザザ、下ろして」
ゆっくりと下ろされて椅子が地面に着いた。
「おい!僕にもしてくれ!」
どこで見ていたのかジェイコブが駆けてくる。
「今の!」
「ふふ」
顔を赤らめて駆けるジェイコブが面白くて笑ってしまう。
「レイ!聞いてる!?」
「フェリシア…父上から会うなと言われている」
「それでも!よ…」
レイモンドが男爵令嬢の口を押さえて言葉を止めた。私の意識はすでにジェイコブにある。二人は勝手にやったらいいわ。
「ジェイコブ様、落ちたら怪我をしますよ」
「え…?でもエルマリアは落ちなかったじゃないか」
「絶対に動かないと約束できます?」
嬉しそうに頷くジェイコブに頬が緩む。
「ザザ」
私は椅子から立ち上がるとジェイコブが座りザザを見上げる。
「ゆっくりね」
頷いたザザはジェイコブごと椅子を持ち上げた。
「ははっすごいや。高い!」
はしゃぐジェイコブにダダが戸惑っている。
「ジェイコブ様!動かない約束!」
「手を伸ばしているだけ!」
ダダの言葉に子供のように答える姿がなんだか微笑ましいわ。いつの間にかレイモンドと男爵令嬢がいなくなっていた。
「フェリシア…落ち着け」
庭から離れたレイモンドはフェリシアを邸の近くに引っ張り連れてきた。
「レイ…ひどいわ…子爵令嬢にあんなに近づいて…触れないと約束したわ!嘘つき!」
レイモンドは嘘つきと言われ複雑な心境になった。それでもフェリシアを問いただすことができなかった。
「エルマリアの目になにか入った…それを見ただけだ」
レイモンドはフェリシアに説明しながらエルマリアの紫色に輝く瞳を思い出していた。涙に濡れた紫は揺らめいて魅惑的に見えた。豊かな胸の谷間が白く盛り上がり、エルマリアが笑うと誘うように揺れた。
「夜…来てくれないのね」
「父上の監視が厳しくなった」
それは嘘だったがレイモンドはフェリシアに会いたくなかった。フェリシアが今でもランド領を怖いと言うことに意味がわからなくなっていた。
「こんなところを見られたら問答無用でランド領地に戻されてしまうぞ」
レイモンドの言葉にフェリシアは涙を流しながら胸に飛び込む。
「いやよ…わかっているでしょう…?怖いの…また…また…いやらしい目で私を見るわ」
「フェ…」
レイモンドはソロモンと話してからフェリシアに対してどう接していいのかわからなくなっていた。
「興奮しないでくれ…エルマリアは俺になにかを求めていないし…ただ話をしているだけだ…父上の目を誤魔化せる。状況が落ち着くまで静かに過ごそう」
「…いつまで?子爵令嬢はレイの周りにいない感じの女性よね…白い肌に少し垂れ目で大きな瞳…けど…幽霊みたいだとレイは言っていたものね」
「…ああ」
レイモンドは近くで見たら美しい肌だった…とフェリシアの言葉を聞きながら思い出していた。
「レイ」
フェリシアは口づけを求めるように背伸びをしてレイモンドに近づくが肩を掴まれ動きが止まる。
「レイ…?」
険しいフェリシアの視線から逃れ、体を傾けたレイモンドは周りを見回す。
「人に見られたら困るだろう?」
フェリシアはレイモンドの変化に気づきながらもいつものように悲しげな顔を向けて涙を落とし愛を口にする。
「愛しているわ、レイ」
「…ああ」
フェリシアはレイモンドの言葉に胸を痛めるが耐えてその場から離れた。
物陰から見張りをしていたケリーがフェリシアのもとへ向かう。
「フェリシア様」
「ケリー!」
フェリシアはケリーに泣きすがる。
「レイが…レイが…離れていく…わ…私よりも子爵令嬢を…」
「そんなことありません。レイモンド様はフェリシア様を想っています。今は仕方ないときなのです」
「…ランド領地に戻されないため?」
「はい。旦那様には子爵令嬢の持参金が必要です…結婚したばかりの子爵令嬢に気を遣うのは仕方ないこと…シモンズ子爵のもとへ戻っては金も失くなります」
「どうして…フローレンは侯爵家なのに…贅沢に過ごしてきたのに…」
「レイモンド様に伝えることがあるなら仲間に託します。手紙を書きますか?」
「本当?ケリー…頼める?」
「もちろんです」
ケリーの言葉にフェリシアの心は少し落ち着く。
「上手になったわ、カイナ」
「そうですか?嬉しいです。ザザ、湯をちょうだい」
ザザは大きな盥を持ち上げカイナの横に置く。
「流しますね」
カイナは盥から湯をすくいエルマリアの髪についた泡を流す。
「レイモンド様と話したのですよね?」
「ええ。なんだか普通に話せたわ」
「…エルマリア様…フェリシア様になにも思わないのですか?私なら旦那様に追い出すよう言います」
「男爵令嬢は侯爵閣下にとって娘のようなものでしょう?強く言えないわ」
「でも…エルマリア様…フローレン侯爵家は財政難と使用人仲間が話しています」
「カイナ、使用人たちと話すの?」
「ふふ、盗み聞きです。洗濯女たちは腕を動かしながら情報交換をします。エルマリア様のそばについてから他の使用人とは話しません。近づく人はエルマリア様のことを知りたがる人たちです」
「なにか聞かれた?」
「給金やエルマリア様の性格…ザザはそばでどんな仕事をしているのか…」
「そう…カイナ」
「はい」
一部の使用人の間でザザは有名だった。そのせいでエルマリアに対し卑猥な想像をするものがいた。レイモンドの代わりにザザがエルマリアの夜の相手をしているとまで妄想する使用人がいることをカイナは話すか迷った。
「ザザって人気があるの?」
「え?」
「金を支払ってまでザザを買う女性がいるとレイモンド様が言ったのよ」
「えっと…」
カイナはザザをちらと見てから口ごもる。陰茎がすごいなど言えなかった。
「野性的な容貌のせい?平民女性は巨体が好みなのかしら?人気があるのはレイモンド様のように美男子だと思い込んでいたわ…世間知らずは駄目ね」
「…人の好みはいろいろ…です…エルマリア様は?どんな男性が好みなんですか?」
カイナは話題を変えることにした。
「そうね…好み…」
エルマリアは目蓋を閉じて想像する。
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