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護衛がつきます1
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「今日からお前の護衛に付くアロンだ。」
「よろしくお願いします。」
色々あった謁見から次の朝、身支度を整えレオのいる居間に行くと、優雅にソファに座るレオの後ろに見知らぬ男が立っていた。黒い軍服に身を包んだその男は、私の護衛だと言う。
「護衛?」
「昨日のようなことがあるとお前が困るだろう。」
「そうだね、ビンタ一発で砕け散る程度の魔力しかないしね。」
「そう根に持つな。」
私はプクッと頬を膨らませながらレオの膝によじ登った。私が登りやすいようにさり気なく体勢を整えてくれるレオを見て、後ろに立つアロンが驚いたような顔をしていた。すぐに元の無表情に戻ったけど。
「アロンは近衛騎士だ。」
「ふうん。」
私はレオの膝に対面で座り、後ろのアロンを見上げた。灰色の髪に尖った耳。尻尾は少しモフっとしている。鋭い双眼は私達に視線を落とすでもなく、まっすぐに前を見つめている。軍人の見本のような姿勢だ。よく知らないけど。
「犬…」
「…!」
私の一言に眉間にシワを寄せるアロン。
「…狼?」
あ、眉間のしわが消えた。狼なんだ。
狼か。この世界ではあまりいい思い出はない。
「森にいる狼と一緒にするな。あいつらは獣、こいつは獣人族だろ。お前を護る盾だ。牙を向けたりしない。」
「うん。」
「俺と離れる時は常に連れて歩け。」
「トイレは?」
「扉の前に立たせろ。」
私はアロンをじっと見つめた。さっきからずっと見ているのに、アロンは私と目を合わせてくれない。近衛騎士って王様を守る為の騎士だよね。エリートの。それなのに急に人間の小娘の護衛に回されるなんて、気分は左遷。無表情を貫いているが、きっと内心は穏やかではないだろう。
でもレオが私のために選んでくれたんだから文句なんて言えない。君たち魔族の時間感覚で言えば私の寿命なんて一瞬だから。すぐ解放されるよ。そもそも成長したら捨てられるかもしれないし。
言ってて悲しくなるけど、子猫が育ったらもう可愛くないからって捨てる飼い主とかいるしね。レオも子供の私が珍しいから飼ってるんだろうし。
あー、捨てられたらどうしよう、城で雇ってもらえるのかな?協力的な勇者達は殺さずに城で雇用してるみたいだし私も仲間に入れてもらえるかな。
「何を考えている。」
「レオに捨てられたら私も他の勇者みたいに城で働かせてもらえるのかなって。」
「捨てる気はない。」
「もしもの話。」
「良いぞ。」
「よかった。」
「働きたいのか。」
「働きたくない。」
「そうだろうな。」
私ってそんなにニートオーラ出てる?こう見えて地球では馬車馬の如く働いてたんだけどね。
まあとにかく、これで行ったこともない人間の国にポイ捨てされる心配もなくなった。私は安心してレオの肩に顎を乗せた。
「今日は執務室に行く。」
「はい。」
レオは膝に座った私をそのまま抱き上げると、ソファから立ち上がった。
「あ。」
「どうした。」
「朝ごはん。」
「ふむ…」
そんなにお腹は減ってないけど、子供の体では一度にたくさんは食べられない。三食きちんと食べないと必要カロリーが摂取できない。せっかくこんなにプニプニで可愛いんだから、これをキープしなきゃ。
「俺は仕事がある。ここで食べていろ。」
「いいの?」
「今日からアロンがいるからな。」
「食べ終わったらお城の中探検していい?」
「ふむ…いいぞ。昼には執務室に戻れ。」
「ありがとう!」
レオは私の頭ひと撫ですると、私をソファに下ろして部屋を出て行った。ミーアも朝食の用意をすると言って扉の向こうに消えた。
「…」
「…」
気まずい。相変わらずこっち見ない。軍人のプライドか、はたまた不満の表れか。
「ねえ。」
「…なんでしょう。」
一応返事はしてくれるみたい。こっち見ないけど。
「私のことどれくらい知ってるの?」
「…リナ様は魔王様のペットで、異世界から来た勇者です。魔王様の所有物を害そうとする愚かな魔族の盾になるようにと。」
「なるほど。これからよろしくね。」
「…王命ですから。」
嫌いそう~。この人、めっちゃ私のこと嫌いそうじゃん。無表情貫いてる気になってるっぽいけど、その眉間のしわがあなたの不満を物語ってますよ。嫌だなあ、こんな人と四六時中一緒だなんて。ミーアと二人きりの時は幸せだったなあ。
もうこれ以上会話してもしょうがない。きっとお互い不快な思いしかしないでしょ。私はアロンから目線を外し、ソファにもたれかかった。
「お待たせしました。」
流石ミーア。完璧なタイミングで戻ってきてくれた。今後はアロンの事は気にしないで過ごそう。ちょっと大きい家具くらいの気持ちで視界に収めておこう。うん、そうしよう。
「この後はいかがなさいますか?執務室に行かれますか?」
食後、私がポンポコリンのお腹を撫でて休憩していると、ミーアが食器を下げながらそう聞いてきた。だいぶ残しちゃったな、申し訳ない。レオがいなかったから残飯処理できなかったんだよね。
「レオがお城の中探検しても良いって。」
「まあ、良かったですね。どこか行きたい所はありますか?ご案内いたしますよ。」
「厨房に行きたいの。私のご飯を作ってくれてる人に会いたい。」
「つまり勇者に、ですか…かしこまりました。ではご案内しますね。」
「ありがとう!」
私はピョンとソファから飛び降りた。だいぶこの小さい身体にも慣れてきた。これくらいの高さなら転ばずに降りれる。レオの膝からは無理。
「自分で歩いても良い?」
「もちろんです。こちらですよ。」
ミーアに案内されながらノロノロと移動を開始する。歩き始めて早々に後ろからイライラオーラを感じる。
またお前か、アロン。少しは慈愛に満ちたミーアを見習え!まあ確かに2メートル近い君からしたら牛歩以下だとは思うけど。
気にしない気にしない。後ろにいるのは歩く家具。不機嫌な家具。帯剣してる家具。あっ今あの家具さりげなく剣の持ち手を触ってる。
いや気にしないとか無理。超気になる。
この男本質は人間踏み潰すマンじゃない?彼から一切の好意を感じられないもん。これ以上機嫌を損ねたら殺されるんじゃないかな。だって魔族にとっては人間の命って軽そうだし。元侯爵令状も気に入らないからってさくっと殺そうとしてたし。
いざと言う時はミーアに守ってもらおう。私はミーアのスカートにピタリと寄り添って歩いた。
「よろしくお願いします。」
色々あった謁見から次の朝、身支度を整えレオのいる居間に行くと、優雅にソファに座るレオの後ろに見知らぬ男が立っていた。黒い軍服に身を包んだその男は、私の護衛だと言う。
「護衛?」
「昨日のようなことがあるとお前が困るだろう。」
「そうだね、ビンタ一発で砕け散る程度の魔力しかないしね。」
「そう根に持つな。」
私はプクッと頬を膨らませながらレオの膝によじ登った。私が登りやすいようにさり気なく体勢を整えてくれるレオを見て、後ろに立つアロンが驚いたような顔をしていた。すぐに元の無表情に戻ったけど。
「アロンは近衛騎士だ。」
「ふうん。」
私はレオの膝に対面で座り、後ろのアロンを見上げた。灰色の髪に尖った耳。尻尾は少しモフっとしている。鋭い双眼は私達に視線を落とすでもなく、まっすぐに前を見つめている。軍人の見本のような姿勢だ。よく知らないけど。
「犬…」
「…!」
私の一言に眉間にシワを寄せるアロン。
「…狼?」
あ、眉間のしわが消えた。狼なんだ。
狼か。この世界ではあまりいい思い出はない。
「森にいる狼と一緒にするな。あいつらは獣、こいつは獣人族だろ。お前を護る盾だ。牙を向けたりしない。」
「うん。」
「俺と離れる時は常に連れて歩け。」
「トイレは?」
「扉の前に立たせろ。」
私はアロンをじっと見つめた。さっきからずっと見ているのに、アロンは私と目を合わせてくれない。近衛騎士って王様を守る為の騎士だよね。エリートの。それなのに急に人間の小娘の護衛に回されるなんて、気分は左遷。無表情を貫いているが、きっと内心は穏やかではないだろう。
でもレオが私のために選んでくれたんだから文句なんて言えない。君たち魔族の時間感覚で言えば私の寿命なんて一瞬だから。すぐ解放されるよ。そもそも成長したら捨てられるかもしれないし。
言ってて悲しくなるけど、子猫が育ったらもう可愛くないからって捨てる飼い主とかいるしね。レオも子供の私が珍しいから飼ってるんだろうし。
あー、捨てられたらどうしよう、城で雇ってもらえるのかな?協力的な勇者達は殺さずに城で雇用してるみたいだし私も仲間に入れてもらえるかな。
「何を考えている。」
「レオに捨てられたら私も他の勇者みたいに城で働かせてもらえるのかなって。」
「捨てる気はない。」
「もしもの話。」
「良いぞ。」
「よかった。」
「働きたいのか。」
「働きたくない。」
「そうだろうな。」
私ってそんなにニートオーラ出てる?こう見えて地球では馬車馬の如く働いてたんだけどね。
まあとにかく、これで行ったこともない人間の国にポイ捨てされる心配もなくなった。私は安心してレオの肩に顎を乗せた。
「今日は執務室に行く。」
「はい。」
レオは膝に座った私をそのまま抱き上げると、ソファから立ち上がった。
「あ。」
「どうした。」
「朝ごはん。」
「ふむ…」
そんなにお腹は減ってないけど、子供の体では一度にたくさんは食べられない。三食きちんと食べないと必要カロリーが摂取できない。せっかくこんなにプニプニで可愛いんだから、これをキープしなきゃ。
「俺は仕事がある。ここで食べていろ。」
「いいの?」
「今日からアロンがいるからな。」
「食べ終わったらお城の中探検していい?」
「ふむ…いいぞ。昼には執務室に戻れ。」
「ありがとう!」
レオは私の頭ひと撫ですると、私をソファに下ろして部屋を出て行った。ミーアも朝食の用意をすると言って扉の向こうに消えた。
「…」
「…」
気まずい。相変わらずこっち見ない。軍人のプライドか、はたまた不満の表れか。
「ねえ。」
「…なんでしょう。」
一応返事はしてくれるみたい。こっち見ないけど。
「私のことどれくらい知ってるの?」
「…リナ様は魔王様のペットで、異世界から来た勇者です。魔王様の所有物を害そうとする愚かな魔族の盾になるようにと。」
「なるほど。これからよろしくね。」
「…王命ですから。」
嫌いそう~。この人、めっちゃ私のこと嫌いそうじゃん。無表情貫いてる気になってるっぽいけど、その眉間のしわがあなたの不満を物語ってますよ。嫌だなあ、こんな人と四六時中一緒だなんて。ミーアと二人きりの時は幸せだったなあ。
もうこれ以上会話してもしょうがない。きっとお互い不快な思いしかしないでしょ。私はアロンから目線を外し、ソファにもたれかかった。
「お待たせしました。」
流石ミーア。完璧なタイミングで戻ってきてくれた。今後はアロンの事は気にしないで過ごそう。ちょっと大きい家具くらいの気持ちで視界に収めておこう。うん、そうしよう。
「この後はいかがなさいますか?執務室に行かれますか?」
食後、私がポンポコリンのお腹を撫でて休憩していると、ミーアが食器を下げながらそう聞いてきた。だいぶ残しちゃったな、申し訳ない。レオがいなかったから残飯処理できなかったんだよね。
「レオがお城の中探検しても良いって。」
「まあ、良かったですね。どこか行きたい所はありますか?ご案内いたしますよ。」
「厨房に行きたいの。私のご飯を作ってくれてる人に会いたい。」
「つまり勇者に、ですか…かしこまりました。ではご案内しますね。」
「ありがとう!」
私はピョンとソファから飛び降りた。だいぶこの小さい身体にも慣れてきた。これくらいの高さなら転ばずに降りれる。レオの膝からは無理。
「自分で歩いても良い?」
「もちろんです。こちらですよ。」
ミーアに案内されながらノロノロと移動を開始する。歩き始めて早々に後ろからイライラオーラを感じる。
またお前か、アロン。少しは慈愛に満ちたミーアを見習え!まあ確かに2メートル近い君からしたら牛歩以下だとは思うけど。
気にしない気にしない。後ろにいるのは歩く家具。不機嫌な家具。帯剣してる家具。あっ今あの家具さりげなく剣の持ち手を触ってる。
いや気にしないとか無理。超気になる。
この男本質は人間踏み潰すマンじゃない?彼から一切の好意を感じられないもん。これ以上機嫌を損ねたら殺されるんじゃないかな。だって魔族にとっては人間の命って軽そうだし。元侯爵令状も気に入らないからってさくっと殺そうとしてたし。
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