名を呼ぶ異世界地主 〜地霊と灰の契約譚〜

せんみつ

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リーヴ村再生編

第3話 声のない村

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村の空気は、どこか“止まって”いた。

風が吹かない。
木の葉も揺れず、草もさざめかない。
遠くで家畜の鳴き声が一度だけ響いたが、それもすぐに静寂へと溶けた。

カインは村の広場に立ち尽くし、息を吸った。
だが、胸に入ってくるはずの空気がどこか浅い。
まるでこの村そのものが、呼吸を忘れてしまったようだった。

**

「……どこも、こんな感じなのか?」

「はい」

リアナの声は控えめだったが、明確だった。

「畑は育たず、水は濁り、風も吹かない。村の人たちは、地主が戻ったと聞いても……ほとんど期待していません」

カインは、視線の先の畑を見やった。
手入れはされている――だがその表情に、耕す者の“意思”は感じられなかった。

「……ただ、続けているだけか」

「ええ。そうしないと、今を生きていけないから。でも……前を向けている人は、もうほとんどいません」

カインは黙って頷いた。

それは、東京で疲弊しながら働いていた頃の、自分とよく似ていた。

**

「地主、ってのは……こういう村を、どうすればいいんだ?」

「“名”を、思い出させるんです」

リアナの答えは、意外なほど即答だった。

「この村は、かつて“リーヴ”と呼ばれていました。土地にも、場所にも、名前がありました。
でもそれが呼ばれなくなり、忘れられて、静かになってしまったんです」

「名が……なくなった?」

「名がある限り、土地は応えます。でも、誰も呼ばないなら――土地は眠ってしまう。
だから、地主様。どうか……土地の声に耳を傾けてください」

その言葉に、カインの胸がわずかに熱を帯びた。

**

しばらくして、リアナはカインを屋敷の奥へと導いた。
かつて地主たちが集い、契約を交わしたという部屋。

「ここです。“契約の間”」

リアナは机の上に広げられた地図へと手を伸ばした。

――この先に、“名を呼ぶ者”としての旅が始まることを、カインはまだ知らなかった。
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