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第1話
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「なぁんで 結婚 できない のッ!!」
どんっ!と持っているワインボトルをテーブルへ振り下ろし、派手に音を鳴らす。
その反動で皿に入ったナッツが跳ねて、テーブルの上にぽろりと落っこちた。
それを向かい側に座る男__レイの細い指が伸びてきて拾う。レイはそのまま落ちたナッツを口の中に入れ、カリコリと子気味のいい音をさせ咀嚼した。
そして自身のグラスに入った真っ赤なワインを喉に流し込むと、私を嘲笑するかのように口を開く。
「そういうとこじゃない?」
「うるさい違う!!」
瞬時に返す言葉と一緒に、もう一度握ったボトルを振り下ろそうとしたが、やめる。
別にレイに言われたからじゃない。木でできたテーブルがこれ以上雑な扱いしたら割れちゃいそうだからやめただけ。
だからそのふっ、て鼻で笑うのやめて。
「…私が酒豪だってこと、皆知らないんだよ。こんな姿、この家の人達とレイしか知らないのに、皆知らないのに!」
「んー…にじみ出てるとか?」
「で、出てるわけ…。ちゃんと表では上手くやって…、レイだって言ってたじゃん!
『社交界のラティは別人みたいにおしとやかな令嬢だ』
って!あれ嘘?嘘だったの?」
嘘だとは言わないで欲しい。
それなりに努力しているつもりだから。
私、ラーテリィ・コルケリアは伯爵家の長女として生まれ育った。
貴族であるため、淑女としての立ち振る舞いは幼き頃にマスターしている。歩き方、仕草、話し方。その全て社交界では気を使い、関わる全ての人にいい印象だけを残してきた。
ハズなのだ。
「嘘ではないよ。本当に社交界での君は綺麗で、穏やかで、お淑やかなご令嬢さ。でもほら、人間誰しもボロが出る時は出るし」
「出した覚えない」
「あとは本能的な勘とか」
「皆勘が良すぎるよ」
はは、と笑うレイにジトっとした視線を送る。
笑い事じゃない、いや1周2周回って笑えてもくるけれど。
はあ、とため息をついて私は掴んでいるボトルの栓を慣れた手つきでグッグッと抜いていく。
すぽんっ、と軽い音を鳴らして開いた口から、直接飲もうとしたが理性が働いてやめる。
本日2本目のお酒は、レイが1ヶ月前くらいに持ってきてくれた真っ赤なワイン。隣国の有名なワインらしく、あとストックが3本くらいある。
香りがすごく良かった記憶があるから、ちゃんとグラスを使おうと思って。
自室にある食器棚から新しいワイングラスを取りに行くため立ち上がる。
先程別のワインを1本開けた後だったけれど特にふらつきもなく、真っ直ぐ立てて、真っ直ぐ歩けているあたり、自分の酒の強さに改めて感心する。
本当に、父からの遺伝であるアルコールの強さには感謝だ。
父も私同様お酒が大好きで、強く、ザルであった。
多分今頃、レイのお父様であるヴァンおじ様と一緒に談笑しながらお酒をがぶがぶ飲んでいるのだろう。
何の話をしているのかな、私の結婚が遅いとかそういう話をしてるのかな。
でもお父様が急がなくていいとか言って、ずっと呑気だったから、今の今までその娘は結婚できてないわけだが。
「はあ~…私もう今年で20歳になるのに…」
「つい2カ月前、19になったばかりじゃないか」
「1年なんてあっという間でしょ?今の時点で婚約者の1人もいないのは流石にヤバい」
「婚約者は1人いれば十分だろう」
「うん、その1人がまずいないんだよね。
ねぇレイ、やっぱり紹介してよ。レイの紹介だったら私も、家族も安心だしさ」
「…そうだね。けれどこの前も言った通り、紹介できる方達は皆婚約者がいたり、すでに結婚していてね…」
「そうだったね、そうだよね知ってた」
ゴポゴポゴポ、と勢いよく先ほど開けたワインをグラスに注ぎ入れ、ぐいっと煽った。
香りを楽しむの忘れたな、と思い、空になったグラスへまたワインを注ぎ入れて鼻に近づける。
うん、これこれ、とふわりと香る芳醇な香りを楽しんだ後、また一気に煽った。
「……私、このまま一生結婚できないのかな」
これまでに…、特にここ数カ月でそう思えるいろんなことがありすぎて、つい弱音が漏れてしまった。
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「なぁんで 結婚 できない のッ!!」
どんっ!と持っているワインボトルをテーブルへ振り下ろし、派手に音を鳴らす。
その反動で皿に入ったナッツが跳ねて、テーブルの上にぽろりと落っこちた。
それを向かい側に座る男__レイの細い指が伸びてきて拾う。レイはそのまま落ちたナッツを口の中に入れ、カリコリと子気味のいい音をさせ咀嚼した。
そして自身のグラスに入った真っ赤なワインを喉に流し込むと、私を嘲笑するかのように口を開く。
「そういうとこじゃない?」
「うるさい違う!!」
瞬時に返す言葉と一緒に、もう一度握ったボトルを振り下ろそうとしたが、やめる。
別にレイに言われたからじゃない。木でできたテーブルがこれ以上雑な扱いしたら割れちゃいそうだからやめただけ。
だからそのふっ、て鼻で笑うのやめて。
「…私が酒豪だってこと、皆知らないんだよ。こんな姿、この家の人達とレイしか知らないのに、皆知らないのに!」
「んー…にじみ出てるとか?」
「で、出てるわけ…。ちゃんと表では上手くやって…、レイだって言ってたじゃん!
『社交界のラティは別人みたいにおしとやかな令嬢だ』
って!あれ嘘?嘘だったの?」
嘘だとは言わないで欲しい。
それなりに努力しているつもりだから。
私、ラーテリィ・コルケリアは伯爵家の長女として生まれ育った。
貴族であるため、淑女としての立ち振る舞いは幼き頃にマスターしている。歩き方、仕草、話し方。その全て社交界では気を使い、関わる全ての人にいい印象だけを残してきた。
ハズなのだ。
「嘘ではないよ。本当に社交界での君は綺麗で、穏やかで、お淑やかなご令嬢さ。でもほら、人間誰しもボロが出る時は出るし」
「出した覚えない」
「あとは本能的な勘とか」
「皆勘が良すぎるよ」
はは、と笑うレイにジトっとした視線を送る。
笑い事じゃない、いや1周2周回って笑えてもくるけれど。
はあ、とため息をついて私は掴んでいるボトルの栓を慣れた手つきでグッグッと抜いていく。
すぽんっ、と軽い音を鳴らして開いた口から、直接飲もうとしたが理性が働いてやめる。
本日2本目のお酒は、レイが1ヶ月前くらいに持ってきてくれた真っ赤なワイン。隣国の有名なワインらしく、あとストックが3本くらいある。
香りがすごく良かった記憶があるから、ちゃんとグラスを使おうと思って。
自室にある食器棚から新しいワイングラスを取りに行くため立ち上がる。
先程別のワインを1本開けた後だったけれど特にふらつきもなく、真っ直ぐ立てて、真っ直ぐ歩けているあたり、自分の酒の強さに改めて感心する。
本当に、父からの遺伝であるアルコールの強さには感謝だ。
父も私同様お酒が大好きで、強く、ザルであった。
多分今頃、レイのお父様であるヴァンおじ様と一緒に談笑しながらお酒をがぶがぶ飲んでいるのだろう。
何の話をしているのかな、私の結婚が遅いとかそういう話をしてるのかな。
でもお父様が急がなくていいとか言って、ずっと呑気だったから、今の今までその娘は結婚できてないわけだが。
「はあ~…私もう今年で20歳になるのに…」
「つい2カ月前、19になったばかりじゃないか」
「1年なんてあっという間でしょ?今の時点で婚約者の1人もいないのは流石にヤバい」
「婚約者は1人いれば十分だろう」
「うん、その1人がまずいないんだよね。
ねぇレイ、やっぱり紹介してよ。レイの紹介だったら私も、家族も安心だしさ」
「…そうだね。けれどこの前も言った通り、紹介できる方達は皆婚約者がいたり、すでに結婚していてね…」
「そうだったね、そうだよね知ってた」
ゴポゴポゴポ、と勢いよく先ほど開けたワインをグラスに注ぎ入れ、ぐいっと煽った。
香りを楽しむの忘れたな、と思い、空になったグラスへまたワインを注ぎ入れて鼻に近づける。
うん、これこれ、とふわりと香る芳醇な香りを楽しんだ後、また一気に煽った。
「……私、このまま一生結婚できないのかな」
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