誰か私と結婚してくれ。〜婚活の邪魔をしていたのは公爵家の幼馴染みでした〜

こたきんぐ

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第5話

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レマダリ家に招待された日の前日、私は父とメイドのキャシーを含む数人の使用人たちと一緒に家を出て馬車を走らせた。
途中、小休憩や道中の町で宿を取って休んだりしながら目的地まで向かう。

私たちがレマダリ家についた時にはとっくに正午は過ぎており、時計の短い針は2を指していた。

たまに休憩を挟んでいたとは言っても、ずっと馬車に揺られていたので腰が痛い。
だがそこで、だらける姿を見せる令嬢ではないのを忘れないでほしい。

目的地に着き、馬車の扉を開けてもらった私は、しゃんと背筋を伸ばして綺麗な姿勢を保ちながらお淑やかに降りる。
屋敷の方をゆっくり顔を動かして見れば、レマダリ家の方達が私たちを出迎えるように立っていた。


「ハリー伯爵、ラーテリィ嬢…!この度は、遠路はるばるご足労いただきありがとうございます」
「こちらこそ招待ありがとう。前回会ったのは、娘の誕生日パーティだったかな」
「ええ、そうです。あの時からもますますラーテリィ嬢は綺麗になっていきますな」


レマダリ子爵にそう褒められ、私はありがとうございます、とにっこり笑みを浮かべた。
そして縁談相手である、長男モイフナー様の方へ視線を向けると目が合ったので再度にっと笑みを送っておく。


「さぁさ、どうぞ中に。お疲れでしょう」
「すまないね、お邪魔するよ」


私は父の後ろをついて、レマダリ子爵に案内されながら屋敷に入る。
それから少し親を交えて話してから、早々に後は若い者同士で…と綺麗な庭園で私とモイフナー様を残し、親たちは消えて行った。

私たちは庭園内に用意された白いガーデンテーブルと、同じ色をしたガーデンチェアがある場所へ案内され、そこに向かい合わせで腰を下ろした。

レマダリ家の使用人と、うちのメイドのキャシーが無駄のない動きでテーブル上に紅茶とケーキを用意していく。
私はありがとう、と彼女達にお礼を言って、ティーカップに手を伸ばした。

すると同時に、目の前の彼が本日初めて私に対して口を開く。



「…ラーテリィ様、改めてこの度はありがとうございます。急なお話で、驚かれたでしょう」
「…少しだけ、驚きましたわ。私、すっかりモイフナー様にはお相手がいるとばかり思っておりましたので」


持ちかけたカップを一旦ソーサーに戻し、口角を上げてそう答える。
すると彼は驚いたように少し目を見開いたかと思うと、すぐにすっと目を逸らし、とんでもございませんと小さく呟いた。

その反応に少しひっかかりはしたが、ただの謙遜だろうと再度紅茶を飲むためカップを手にもち、紅茶の香りを楽しんでから口に含んだ。
そして周りの景色を眺め、とても綺麗に手入れされている庭だということに気づく。


「とても綺麗なお庭ですわ。よく手入れが行き届いていて、いい庭師を雇っているのですね」
「あ、ありがとうございます。母や妹、…が花や自然が好きなのでこだわっているのです。温室も小さいながらありますので、あとで見学されていきませんか?」
「ぜひ」


ふふ、と手を口元に持っていき静かに笑う。

それから、最初は少し緊張していたのか表情や行動が硬かったモイフナー様だったけれど、お話しているうちに緊張が解けたのかいつもの柔らかい雰囲気に戻った。
実は甘いものは得意じゃないけれど、せっかく用意してくれたイチゴの乗った可愛いケーキにフォークを入れながら彼の話や、お家の話を聞く。
ちゃんとこうやって二人きりで話したことがなかったので、どこか新鮮で楽しかった。

好きな食べ物、好きな本、長く続けている趣味から、最近ハマっていることまで。
あとレマダリ家の話になった時、最近新しいお酒を開発し、売りに出そうとしていると聞いた。
思わず前のめりに話を聞きそうになったが、私がお酒好きとは彼は知らない。
そのため、父がお酒好きなので~と父のせいにして詳しく聞いた。


「このあたりの特産品のフルーツを使った蒸留酒になるのですが、色はなく透明で、フルーツの風味が強いものとなっております。口当たりも優しく飲みやすいのですが、度数は40%くらいでしょうか…、中々高く、油断しているとすぐに酔ってしまうと父は言っておりました」
「レマダリ子爵は確か私の父と同じくお酒がお好きでしたね」
「ええ、…私は酒に弱く、飲めないので、父と一緒に楽しめないのが残念でありません」


はは、と笑う彼に、私もです、ふふと笑って返す。

大ウソつきである。


「ラーテリィ様は、」
「?はい」


私の名前を呼んで、言葉を止めるモイフナー様。
なんだ酒飲みがバレたのか、と内心焦ったが、多分違う。

それではなんだろうか、と首を傾げると彼はまた優しい笑みを向けてくれた。


「とても優しく笑われますね。きっと貴方と過ごす日々は幸せでしょう」
「…ありがたいお言葉ですわ。モイフナー様も話していてとても落ち着きます」


にこにこと互い顔を見合わせ微笑み合う。

きっと彼と過ごす日々は穏やかで平和で、酒を彼の前で飲めない以外、ストレスのない日々が送れるだろう。

今のところ、私に悪い印象は持ってないように見える。
どっちかというと好印象を持ってくれてるように見えるけど…、まだわからない。

今までもそうだった、つかみは悪くない!って思ってたのに、何故か断られて。理由だってまともなこと言ってくれないし。
私に似合わないから、とか言ってさ。そんな理由続いてたまるか。
そんな自信ないなら最初からデートとか縁談を申し込まないでほしかった。

ふう、と思わず小さなため息が漏れると、モイフナー様が大丈夫ですか?と心配してくれた。
いけないけない、と笑顔を作り直しもちろんですと返す。

その後私たちは温室へ行き、花や植物を鑑賞しているといい時間になったので、レマダリ家の屋敷へ戻ることにした。
その際にモイフナー様が立ち止まり、胸に手をあて私の目をじっと見つめて口を開いた。



「ラーテリィ様さえよろしければ、またゆっくりと、2人でお話ししたいと思っております」



次のお誘いキタコレ。
今のところ順調だ、と心の中でガッツポーズする。



「私もですわ、モイフナー様」



彼のことはまだまだわからないことばかり、今から知っていくには時間が必要だ。
頼むから2回目は無しで~なんて連絡が来ませんように。

私は父とレマダリ家の屋敷でディナーをいただいて、一泊客室で泊まらせてもらい、次の日の朝にレマダリ家を出たのであった。




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