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第4話
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「ラティ、気になる人はいたかい?」
「お父様…。うーん…、何人かには絞ってみたのですけれど」
届いた縁談のお手紙を、自室でメイドのキャシーと一緒に整理していると、父が部屋の扉をノックして入ってきた。
トントン、と選んだ手紙を机で整え隅に置き、それ以外はキャシーに渡す。
ありがたいことに縁談はたくさんいただくので、そこから選ばせていただくわけだがどうしても慎重になる。
だって4度うまく行ってない。それも短期間に。
結婚を急いでいると言っても、いい人じゃなければ意味がないし。失敗だってしたくない、幸せになりたいと思うのは誰だって当然だと思う。
「…?お父様、その手に持っている…お手紙は?」
「一応私宛に届いたものなんだが…、レマダリ家からでね」
レマダリ家。
爵位は子爵。悪い評判は一度も聞いたことはないが、特に目立ったこともない貴族という印象だ。
レマダリ家現当主と父は、若い頃からの知り合いで友人だという。なんでもレマダリ家の当主もお酒が好きなんだとか…。
レイの一家のように家族ぐるみですごく仲がいいわけじゃないが、お互い主催のパーティを開くなら必ず招待状を送り合っており、夫人やご子息とは顔見知りである。
「長男のモイフナー君との縁談を持ちかけてきた」
「えっ、今までなかったのにですか?」
昔からの仲であったが一度もそういう話は出なかった。
すっかりもう婚約者や許嫁がいるもんだと思っていたのだ。
確か私の4つ年上だった。お父様譲りの淡いライトベージュの髪に、優しげな若葉色の瞳。
失礼ながらパッとした顔はしていないけれど、決して整っていないわけではない、いい人そうな顔をしている。
結構な頻度でレイの顔面を見ているからか、変に目が肥えてしまっていて…とんだ弊害だ。
性格も高圧的ではなく、とても穏やかで仕事も真面目にこなされているようだし。
爵位は関係ないし、当主である彼のお父様はお酒が好きだからお家にはたくさんお酒はあるらしいし、もちろん目の前でガバガバ飲む気は一ミリも無いが。
「来週レマダリ家に呼ばれているのだが…どうだろうか」
「…そうですね。…わかりました、行きましょう」
悪い縁談ではない。
父と昔ながらの間柄。本人とも何度かパーティでお話をしている顔見知り。
変に断られるとは思わないし、うまくいって、彼の妻に迎え入れられればきっと大切にしてくれると思う。
もしかしたら今回、もしかしたらなんじゃないだろうか。
5度目の正直、私は次こそはと息巻いた。
そして本日の夕方、レイ一家が私の家にくる予定が入っていた。
早くレイに話したかったから、ちょうどいいタイミングである。
予定通りレイの一家はまだ日が沈んでいない夕方にやってきた。
いつも通り私の家でディナーを食べて、父はレイのお父様と、私はレイと自室で晩酌。
母はレイのお母様と食後のティータイムだ。
あと私には14歳になる双子の弟たちがいる。
その弟たちは食後、母たちとデザートのケーキを食べた後はさっさと自室に戻るらしい。
たまにレイと私がいる部屋に遊びに来るのだが、まあ、すごく自由で生意気な弟たちで。
「でね、次はレマダリ子爵のご子息モイフナー様との縁談がきたの!それで来週お家に招待されてて」
「…へえ、そうなんだ。意外だな、来ると思ってなかったんだけど」
「?え、なに私もしかしてレマダリ家の皆さんに嫌われてた!?そういう噂聞いたの!?」
「はは、違う違う。…なんとなくだよ。ほら、来るならもっと早くくるんじゃないかなぁって」
「あ、だよね。私もそれは思ってた」
私がずっと許嫁や婚約者がいないことはわかっていたはずだからね。
でもそんなことどうでもいいのだ、遅かれ早かれ、現在相手がいないのは確かで、このタイミングでお誘いを受けているのだから関係ない。
「ラティはそのご子息のこと、どう思っているんだい?」
レイは自分のグラスに白ワインを注ぎながら言う。
このワインは本日レイがお土産に持ってきてくれたもので、この国の貴族から最近人気があり今の流行もの。
結構出回っているものだが飲みやすくて好きだ。
私も持っている空のグラスをレイの方へ向けてついでに注いでもらう。
チン、と互いのグラスを軽く当て、口当たりの良いワインを口へ含む。
毎回前回のようにやけ酒しているわけじゃない。ちゃんと嗜む時がほとんどなのだから勘違いしないでほしい。
私はごく、とワインを飲みこんでから、うーんと手を顎に持っていき考える。
「悪い印象は全然ないんだよね。優しいイメージもあるし、大事にしてくれそうだし。いい縁だとは思ってるよ」
「なるほど。ラティがそう思うなら、俺は応援してる」
にっこりと私に笑いかけるレイに、つられて笑顔でありがとうと返す。
来週ドレス何着て行こうかな、とぼんやり考えながら、グラスに入ったワインを一気に喉の奥へ流し入れた。
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「ラティ、気になる人はいたかい?」
「お父様…。うーん…、何人かには絞ってみたのですけれど」
届いた縁談のお手紙を、自室でメイドのキャシーと一緒に整理していると、父が部屋の扉をノックして入ってきた。
トントン、と選んだ手紙を机で整え隅に置き、それ以外はキャシーに渡す。
ありがたいことに縁談はたくさんいただくので、そこから選ばせていただくわけだがどうしても慎重になる。
だって4度うまく行ってない。それも短期間に。
結婚を急いでいると言っても、いい人じゃなければ意味がないし。失敗だってしたくない、幸せになりたいと思うのは誰だって当然だと思う。
「…?お父様、その手に持っている…お手紙は?」
「一応私宛に届いたものなんだが…、レマダリ家からでね」
レマダリ家。
爵位は子爵。悪い評判は一度も聞いたことはないが、特に目立ったこともない貴族という印象だ。
レマダリ家現当主と父は、若い頃からの知り合いで友人だという。なんでもレマダリ家の当主もお酒が好きなんだとか…。
レイの一家のように家族ぐるみですごく仲がいいわけじゃないが、お互い主催のパーティを開くなら必ず招待状を送り合っており、夫人やご子息とは顔見知りである。
「長男のモイフナー君との縁談を持ちかけてきた」
「えっ、今までなかったのにですか?」
昔からの仲であったが一度もそういう話は出なかった。
すっかりもう婚約者や許嫁がいるもんだと思っていたのだ。
確か私の4つ年上だった。お父様譲りの淡いライトベージュの髪に、優しげな若葉色の瞳。
失礼ながらパッとした顔はしていないけれど、決して整っていないわけではない、いい人そうな顔をしている。
結構な頻度でレイの顔面を見ているからか、変に目が肥えてしまっていて…とんだ弊害だ。
性格も高圧的ではなく、とても穏やかで仕事も真面目にこなされているようだし。
爵位は関係ないし、当主である彼のお父様はお酒が好きだからお家にはたくさんお酒はあるらしいし、もちろん目の前でガバガバ飲む気は一ミリも無いが。
「来週レマダリ家に呼ばれているのだが…どうだろうか」
「…そうですね。…わかりました、行きましょう」
悪い縁談ではない。
父と昔ながらの間柄。本人とも何度かパーティでお話をしている顔見知り。
変に断られるとは思わないし、うまくいって、彼の妻に迎え入れられればきっと大切にしてくれると思う。
もしかしたら今回、もしかしたらなんじゃないだろうか。
5度目の正直、私は次こそはと息巻いた。
そして本日の夕方、レイ一家が私の家にくる予定が入っていた。
早くレイに話したかったから、ちょうどいいタイミングである。
予定通りレイの一家はまだ日が沈んでいない夕方にやってきた。
いつも通り私の家でディナーを食べて、父はレイのお父様と、私はレイと自室で晩酌。
母はレイのお母様と食後のティータイムだ。
あと私には14歳になる双子の弟たちがいる。
その弟たちは食後、母たちとデザートのケーキを食べた後はさっさと自室に戻るらしい。
たまにレイと私がいる部屋に遊びに来るのだが、まあ、すごく自由で生意気な弟たちで。
「でね、次はレマダリ子爵のご子息モイフナー様との縁談がきたの!それで来週お家に招待されてて」
「…へえ、そうなんだ。意外だな、来ると思ってなかったんだけど」
「?え、なに私もしかしてレマダリ家の皆さんに嫌われてた!?そういう噂聞いたの!?」
「はは、違う違う。…なんとなくだよ。ほら、来るならもっと早くくるんじゃないかなぁって」
「あ、だよね。私もそれは思ってた」
私がずっと許嫁や婚約者がいないことはわかっていたはずだからね。
でもそんなことどうでもいいのだ、遅かれ早かれ、現在相手がいないのは確かで、このタイミングでお誘いを受けているのだから関係ない。
「ラティはそのご子息のこと、どう思っているんだい?」
レイは自分のグラスに白ワインを注ぎながら言う。
このワインは本日レイがお土産に持ってきてくれたもので、この国の貴族から最近人気があり今の流行もの。
結構出回っているものだが飲みやすくて好きだ。
私も持っている空のグラスをレイの方へ向けてついでに注いでもらう。
チン、と互いのグラスを軽く当て、口当たりの良いワインを口へ含む。
毎回前回のようにやけ酒しているわけじゃない。ちゃんと嗜む時がほとんどなのだから勘違いしないでほしい。
私はごく、とワインを飲みこんでから、うーんと手を顎に持っていき考える。
「悪い印象は全然ないんだよね。優しいイメージもあるし、大事にしてくれそうだし。いい縁だとは思ってるよ」
「なるほど。ラティがそう思うなら、俺は応援してる」
にっこりと私に笑いかけるレイに、つられて笑顔でありがとうと返す。
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