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第7話
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次の日の朝、モイフナー様たちが帰る前に、渡し忘れていたと言うお土産を受け取った。
それは以前話していたレマダリ家が最近開発した蒸留酒。
父がこの前私と一緒にレマダリ家へお邪魔した際に、飲んでおいしいと言っていたから持ってきてくれたそう。
その時渡そうとしたけれど、在庫が家になく、また必ず持っていきますと約束していたらしい。
いいなお父様、ずるいな、飲んだとか私聞いてないな。
ずもも、と私の圧に気付いたのか父は焦りながらレマダリ子爵にお礼を言って、1ダース分の瓶が入った箱を受け取っていた。すぐにメイドのキャシーが走ってきて、回収して行ったけど。
「ではまた、ラーテリィ様。楽しいひと時でした」
「えぇ、私もですわモイフナー様」
にっこり笑みをお互い浮かべあい、彼らが帰って行くのを見送る。
馬車が地平線に消えていくのを確認し、屋敷に戻ってすぐ、父を問い詰めた。
「新しいお酒飲んだとか聞いてないんですけどっ!」
「いや、だって」
「お父様だけずるいです!半分ください!」
「わかったわかった、ごめんよラティ。…ずるいって言われると思ったから黙ってたんだけどな…」
最後の方の言葉、聞こえてますけどお父様。
でもいい。半分もらう約束はした。
まぁもともとくれるとは思っていたけれど。
レイにも飲ませてあげなくちゃ。
話によると、市場に流通してなくて、まだ試用販売中みたいなこと聞いたから。
おつまみはなにがいいかなぁ、なんて考えながら、私は自室に戻った。
___
_
モイフナー様と前回会ってから、文通を続けて2週間が経った。
他愛のない話ばかりだけれど、彼の文字や文章から優しい性格がにじみ出てる。
彼が好き、という恋愛感情は今のところないけれど…いい人だし、そのまま順調に進んでほしい。
レマダリ家から貰ったお酒はまだ飲んでないが、父がすごく絶賛してるから、美味しいに違いないし。
私がまだ飲んでない理由はレイと一緒に飲もうと思っているから。
本来は1週間のうちには飲めたはずだったけれど、レイ、最近忙しいようで、一緒に飲めてないんだよね。
いっそもういいかな、先に飲んじゃおかな…と思っていたら、忙しい時期が終わったのか、レイがこちらの家に来て飲むタイミングは案外早く来た。
「ひさしぶり、3週間ぶりくらい?」
「そのくらいかな。ちょっとバタついちゃってね」
「仕事?落ち着いたの?」
「うん、もう片付いたから大丈夫」
次期当主様はすることが多くて大変だなぁ。
たまにこうやって忙しくなって会えなくなる時がある。
まあいつもは週に1、2回のペースで会っていたから、長く会えてないと思うだけかもしれないけど。
それに今回は別にそこまで開いてないし。
「…それにしても上機嫌だね、にっこにこじゃん」
「そう?うーん、まあでもそうかも」
「そんなに大変な仕事だったんだ…」
お疲れ様、といいながらレマダリ子爵から貰ったお酒と氷が入ったグラスをテーブル上に置く。
見慣れないボトルだからか、レイはじっと私が出してきたお酒を見つめていた。
「じゃーん!これレマダリ家が新しく開発したお酒、もらったんだ~!」
「……へぇ、これが。美味しかった?」
「うん?まだ飲んでないよ、レイと飲むの待ってたから」
蓋を開けて、2つのグラスにコポコポとお酒を注ぐ。
そういえばレイにお酒の事話したっけ?覚えてないけど、多分お酒関係だし話しているだろう。
私はニコニコしながらはい、と透明なお酒が入ったグラスをレイに渡す。
変わらず上機嫌のレイは、ありがとうと綺麗な顔をほころばせながら受け取った。
「はい乾杯」
「乾杯」
カツンとレイのグラスに軽く合わせてから鼻の近くへ持っていき、楽しみにしていたお酒の香りをまずは嗅ぐ。
わぁすごいフルーティ。言ってた通りいい匂い。
…でもなんだか既視感があるな、と思いながら一口。
…ん?やっぱりなんか飲んだことあるような?
「あれ、これ…」
「どうかした?」
「……んーううん、なんでもない」
この前レイに一口もらったものと似ているような気がしたけれど、今飲んだ方が香りが強いし美味しいからきっと違うモノだろう。
私の勘違いだな、ともう一口。
「あ、そういえばさ。この前ちょっと話題に出た、ダヴィアン伯爵家のアンドレ様の婚約者相手、モイフナー様の幼馴染みだったんだよ」
「へぇそうなんだ」
レイは特に驚いた様子はなく、グラスを口につける。
「もしかして知ってた?」
「いや?知らなかったよ」
さらっと返されたので、あぁそう、とだけ私も返す。
「でもダヴィアン家さぁ、景気はすごくいいけど、…アンドレ様って」
「あぁ…彼はねぇ」
申し訳ないが、ほんとにいい評判は聞かない。ダメな意味で貴族っぽい。
自己中心的で、お家の財産を好き勝手使い、お仕事はしない。
基本下の階級の貴族や一般市民には上から目線で、女性関係も…だらしない。
何故そんなダメダメな彼にモイフナー様の幼馴染みであるアンジュ様が嫁いでしまったのかわからないけど、それこそお家問題だろう。
今のところ、私はお家のためにと強制的に嫁ぐことはないけれど…。
「変な男の人だけにはつかまりたくないなぁ…」
「…知らない間に変なのにつかまってそ」
「ちょっと!縁起でもない!でも、そういう時のレイでしょ!この人ヤバそうって気づいたらすぐに教えてよね!?」
「はは、もちろん。…ラティは大切な幼馴染みだからね、気づけるように毎回ちゃんと教えるんだよ」
「だからこの前も言ったじゃん~心配性だなあ、もちろん相談させていただきます!」
レイはなんだかんだ私のことを心配してくれるからね。
今回のモイフナー様との縁談が上手くいけばきっと、もう心配をかけることはなくなるだろうけど。
私はいつのまにか空になったグラスにまたお酒を注ぎ、おつまみとしてテーブルに出していたチーズを手でつかみ口の中に入れた。
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次の日の朝、モイフナー様たちが帰る前に、渡し忘れていたと言うお土産を受け取った。
それは以前話していたレマダリ家が最近開発した蒸留酒。
父がこの前私と一緒にレマダリ家へお邪魔した際に、飲んでおいしいと言っていたから持ってきてくれたそう。
その時渡そうとしたけれど、在庫が家になく、また必ず持っていきますと約束していたらしい。
いいなお父様、ずるいな、飲んだとか私聞いてないな。
ずもも、と私の圧に気付いたのか父は焦りながらレマダリ子爵にお礼を言って、1ダース分の瓶が入った箱を受け取っていた。すぐにメイドのキャシーが走ってきて、回収して行ったけど。
「ではまた、ラーテリィ様。楽しいひと時でした」
「えぇ、私もですわモイフナー様」
にっこり笑みをお互い浮かべあい、彼らが帰って行くのを見送る。
馬車が地平線に消えていくのを確認し、屋敷に戻ってすぐ、父を問い詰めた。
「新しいお酒飲んだとか聞いてないんですけどっ!」
「いや、だって」
「お父様だけずるいです!半分ください!」
「わかったわかった、ごめんよラティ。…ずるいって言われると思ったから黙ってたんだけどな…」
最後の方の言葉、聞こえてますけどお父様。
でもいい。半分もらう約束はした。
まぁもともとくれるとは思っていたけれど。
レイにも飲ませてあげなくちゃ。
話によると、市場に流通してなくて、まだ試用販売中みたいなこと聞いたから。
おつまみはなにがいいかなぁ、なんて考えながら、私は自室に戻った。
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モイフナー様と前回会ってから、文通を続けて2週間が経った。
他愛のない話ばかりだけれど、彼の文字や文章から優しい性格がにじみ出てる。
彼が好き、という恋愛感情は今のところないけれど…いい人だし、そのまま順調に進んでほしい。
レマダリ家から貰ったお酒はまだ飲んでないが、父がすごく絶賛してるから、美味しいに違いないし。
私がまだ飲んでない理由はレイと一緒に飲もうと思っているから。
本来は1週間のうちには飲めたはずだったけれど、レイ、最近忙しいようで、一緒に飲めてないんだよね。
いっそもういいかな、先に飲んじゃおかな…と思っていたら、忙しい時期が終わったのか、レイがこちらの家に来て飲むタイミングは案外早く来た。
「ひさしぶり、3週間ぶりくらい?」
「そのくらいかな。ちょっとバタついちゃってね」
「仕事?落ち着いたの?」
「うん、もう片付いたから大丈夫」
次期当主様はすることが多くて大変だなぁ。
たまにこうやって忙しくなって会えなくなる時がある。
まあいつもは週に1、2回のペースで会っていたから、長く会えてないと思うだけかもしれないけど。
それに今回は別にそこまで開いてないし。
「…それにしても上機嫌だね、にっこにこじゃん」
「そう?うーん、まあでもそうかも」
「そんなに大変な仕事だったんだ…」
お疲れ様、といいながらレマダリ子爵から貰ったお酒と氷が入ったグラスをテーブル上に置く。
見慣れないボトルだからか、レイはじっと私が出してきたお酒を見つめていた。
「じゃーん!これレマダリ家が新しく開発したお酒、もらったんだ~!」
「……へぇ、これが。美味しかった?」
「うん?まだ飲んでないよ、レイと飲むの待ってたから」
蓋を開けて、2つのグラスにコポコポとお酒を注ぐ。
そういえばレイにお酒の事話したっけ?覚えてないけど、多分お酒関係だし話しているだろう。
私はニコニコしながらはい、と透明なお酒が入ったグラスをレイに渡す。
変わらず上機嫌のレイは、ありがとうと綺麗な顔をほころばせながら受け取った。
「はい乾杯」
「乾杯」
カツンとレイのグラスに軽く合わせてから鼻の近くへ持っていき、楽しみにしていたお酒の香りをまずは嗅ぐ。
わぁすごいフルーティ。言ってた通りいい匂い。
…でもなんだか既視感があるな、と思いながら一口。
…ん?やっぱりなんか飲んだことあるような?
「あれ、これ…」
「どうかした?」
「……んーううん、なんでもない」
この前レイに一口もらったものと似ているような気がしたけれど、今飲んだ方が香りが強いし美味しいからきっと違うモノだろう。
私の勘違いだな、ともう一口。
「あ、そういえばさ。この前ちょっと話題に出た、ダヴィアン伯爵家のアンドレ様の婚約者相手、モイフナー様の幼馴染みだったんだよ」
「へぇそうなんだ」
レイは特に驚いた様子はなく、グラスを口につける。
「もしかして知ってた?」
「いや?知らなかったよ」
さらっと返されたので、あぁそう、とだけ私も返す。
「でもダヴィアン家さぁ、景気はすごくいいけど、…アンドレ様って」
「あぁ…彼はねぇ」
申し訳ないが、ほんとにいい評判は聞かない。ダメな意味で貴族っぽい。
自己中心的で、お家の財産を好き勝手使い、お仕事はしない。
基本下の階級の貴族や一般市民には上から目線で、女性関係も…だらしない。
何故そんなダメダメな彼にモイフナー様の幼馴染みであるアンジュ様が嫁いでしまったのかわからないけど、それこそお家問題だろう。
今のところ、私はお家のためにと強制的に嫁ぐことはないけれど…。
「変な男の人だけにはつかまりたくないなぁ…」
「…知らない間に変なのにつかまってそ」
「ちょっと!縁起でもない!でも、そういう時のレイでしょ!この人ヤバそうって気づいたらすぐに教えてよね!?」
「はは、もちろん。…ラティは大切な幼馴染みだからね、気づけるように毎回ちゃんと教えるんだよ」
「だからこの前も言ったじゃん~心配性だなあ、もちろん相談させていただきます!」
レイはなんだかんだ私のことを心配してくれるからね。
今回のモイフナー様との縁談が上手くいけばきっと、もう心配をかけることはなくなるだろうけど。
私はいつのまにか空になったグラスにまたお酒を注ぎ、おつまみとしてテーブルに出していたチーズを手でつかみ口の中に入れた。
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