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31.お茶会の招待状①
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お昼ご飯の後は仕立屋さんが来るという。
ここではなく、仕立てをする時に使うという大きな鏡のあるダンスルームに移動する。
「離宮、広いですね。色んな部屋あるし」
私はすごく感心したが、ジェローム様は首を横に振る。
「ここは離宮としてはそう広くはないわ。三階建てで、一階は竜騎士の詰め所。二階と三階が王家の居住区になっているの。部屋数は全部合わせても四〇くらい。ただ、竜舎に近いこの離宮は代々王太子殿下がお住まいなの。特に格式は高く、調度品もゴージャスでしょう?」
ジェローム様は優雅に廊下を歩きながら、壁に掛かっている絵画や壺に目をやる。
素人目にも高価そうだ。
置かれている家具はどれもこれも見たことがないくらい手が込んでいる逸品ばかりだった。
「はい」
「ここは竜のための離宮だから、王太子宮はまた別にあってそっちもゴージャスよ。パーティーとかお茶会はそっちでやるの」
「あの、なんで仕立屋さん来るんですか?」
ジェローム様はピタリと足を止めた。
腰に手を当て、呆れたような表情で私を見下ろす。
「仕立屋来る用事は一つしかないでしょう。ドレスよ、ドレス。夜会用、昼間用、儀式用、色々作らないといけないでしょう?でも何と言っても最優先はあなたの結婚式のウェディングドレス」
「うっ、ウェディングドレスですか?」
なんか顔が赤くなる。
「ええ、結婚式は半年後。今から作らないと間に合わないわ」
そうか、結婚。
王子と結婚……。
「ところでエルシー様、身長小さいわね。いくつよ」
「157センチです。小さくないです」
小さくはない。普通だ。
騎士様がでかいのだ。
「王子187センチよ。三十センチ違いか」
でかいと思っていたが、そんなにあるのか、王子。
***
「あなたが噂のエルシー様ね」
やってきた王家専属のデザイナーという人は、男性で、やっぱりオネエ様だった。
オネエ様は私を見て首をかしげた。
「美人と言うより、可愛い系かしら。王子、こういうのが良かったのね。おっぱいなし、背丈普通」
おっぱいなし、言われた!
普通なのに!
「これだと、ドレスはあまり奇をてらうことなくクラシカルで上品なのがお似合いだわ。色は何がお好き?エルシー様?」
「えっ、うーん、何でも良いです」
「確かに悩むわね。白味がかった栗毛の綺麗な髪ね。目は栗色。あら、意外とまつげ長いわね。色白くてお肌ピチピチ、いいわね若くて。赤系もイケるし、淡い色は何でも合うわね。ピンクとか、ベージュ、グリーン系もいいわ。少し候補出すから気に入ったのあったら教えてね。髪は切らないで伸ばして欲しいわ。綺麗な髪の毛だけど、今からもっと頑張ってお手入れしてね。後日焼けしないで。イメージ狂うから」
「あっ、はい」
「あとご実家にも聞いてみましょう」
「実家?」
「お母様、いらっしゃるでしょう。花嫁の母なんだから娘のお支度は気になるわよぅ。こっちも全部のご要望は聞けないかも知れないけど、素敵なドレスにしましょうね」
「えっ、母の意見も聞いてくれるんですか?」
誰に言われたわけではないけれど、そんなの駄目だと思っていた。
「まだご実家バタバタしてるらしいから今は帰らない方が安全だけど、こちらに呼ぶことは出来るわ。ドレス見て貰いましょう」
とジェローム様が言った。
「えっ?いいんですか?」
オネエ様二人はにっこり頷いた。
「もちろんよ、今日は先に寸法測らせてね」
わーい。お母様に会える。
あちこち寸法測られながら、オネエ様二人とおしゃべりする。
「王子のお妃様のためにすごいシルクの布取ってあるから楽しみにしてね。光沢と張りがあって手触りが本当に良いものなの」
そう言うと、オネエ様はハンカチでそっと涙を拭った。
「王子が二十歳になる歳から機織り部が毎年ね、今年こそはお嫁さん決まりますようにって心を込めて織り続けて計六着分。ようやく報われるわ」
「あ、色々すみません」
「妊婦バージョンも考えているから安心して子作りしてね」
「あっ、はい」
その気遣いは微妙?
そこに侍従の人が来て、私達にこう告げた。
「王妃様よりご使者が参りました」
「おっ、王妃様?」
私はすごく驚いたが、ジェローム様は落ち着き払った声で侍従の方に答える。
「お通しして。エルシー様、そこの椅子に腰掛けてね」
指示通りに座るとさっとオネエ様が近づき、ドレスの裾を直してくれた。
その後でオネエ様がジェローム様に尋ねた。
「ワタシ、下がる?」
「あら、良いわよ、乱入してきたのは向こうだもの」
***
王妃様の使者はてっきり女性かと思ったが、男性の騎士だった。竜騎士の方々とは制服が違うので、多分、近衛騎士様だろう。
その人は私に一礼し、一通の手紙をジェローム様に渡す。
「王妃殿下より、エルシー様にお茶会のお誘いでございます。明日と急でございますので、出来ましたら今すぐにお返事下さいますよう」
「…………」
私はちらっとジェローム様を見たが、ジェローム様はこちらを見ないで、ただ前を見て楚々と立っている。
これは、多分、私の一存で決めていいということだ。
じゃあ、当然。
「お断り致します。そう、妃殿下にはお伝え下さいませ」
ここではなく、仕立てをする時に使うという大きな鏡のあるダンスルームに移動する。
「離宮、広いですね。色んな部屋あるし」
私はすごく感心したが、ジェローム様は首を横に振る。
「ここは離宮としてはそう広くはないわ。三階建てで、一階は竜騎士の詰め所。二階と三階が王家の居住区になっているの。部屋数は全部合わせても四〇くらい。ただ、竜舎に近いこの離宮は代々王太子殿下がお住まいなの。特に格式は高く、調度品もゴージャスでしょう?」
ジェローム様は優雅に廊下を歩きながら、壁に掛かっている絵画や壺に目をやる。
素人目にも高価そうだ。
置かれている家具はどれもこれも見たことがないくらい手が込んでいる逸品ばかりだった。
「はい」
「ここは竜のための離宮だから、王太子宮はまた別にあってそっちもゴージャスよ。パーティーとかお茶会はそっちでやるの」
「あの、なんで仕立屋さん来るんですか?」
ジェローム様はピタリと足を止めた。
腰に手を当て、呆れたような表情で私を見下ろす。
「仕立屋来る用事は一つしかないでしょう。ドレスよ、ドレス。夜会用、昼間用、儀式用、色々作らないといけないでしょう?でも何と言っても最優先はあなたの結婚式のウェディングドレス」
「うっ、ウェディングドレスですか?」
なんか顔が赤くなる。
「ええ、結婚式は半年後。今から作らないと間に合わないわ」
そうか、結婚。
王子と結婚……。
「ところでエルシー様、身長小さいわね。いくつよ」
「157センチです。小さくないです」
小さくはない。普通だ。
騎士様がでかいのだ。
「王子187センチよ。三十センチ違いか」
でかいと思っていたが、そんなにあるのか、王子。
***
「あなたが噂のエルシー様ね」
やってきた王家専属のデザイナーという人は、男性で、やっぱりオネエ様だった。
オネエ様は私を見て首をかしげた。
「美人と言うより、可愛い系かしら。王子、こういうのが良かったのね。おっぱいなし、背丈普通」
おっぱいなし、言われた!
普通なのに!
「これだと、ドレスはあまり奇をてらうことなくクラシカルで上品なのがお似合いだわ。色は何がお好き?エルシー様?」
「えっ、うーん、何でも良いです」
「確かに悩むわね。白味がかった栗毛の綺麗な髪ね。目は栗色。あら、意外とまつげ長いわね。色白くてお肌ピチピチ、いいわね若くて。赤系もイケるし、淡い色は何でも合うわね。ピンクとか、ベージュ、グリーン系もいいわ。少し候補出すから気に入ったのあったら教えてね。髪は切らないで伸ばして欲しいわ。綺麗な髪の毛だけど、今からもっと頑張ってお手入れしてね。後日焼けしないで。イメージ狂うから」
「あっ、はい」
「あとご実家にも聞いてみましょう」
「実家?」
「お母様、いらっしゃるでしょう。花嫁の母なんだから娘のお支度は気になるわよぅ。こっちも全部のご要望は聞けないかも知れないけど、素敵なドレスにしましょうね」
「えっ、母の意見も聞いてくれるんですか?」
誰に言われたわけではないけれど、そんなの駄目だと思っていた。
「まだご実家バタバタしてるらしいから今は帰らない方が安全だけど、こちらに呼ぶことは出来るわ。ドレス見て貰いましょう」
とジェローム様が言った。
「えっ?いいんですか?」
オネエ様二人はにっこり頷いた。
「もちろんよ、今日は先に寸法測らせてね」
わーい。お母様に会える。
あちこち寸法測られながら、オネエ様二人とおしゃべりする。
「王子のお妃様のためにすごいシルクの布取ってあるから楽しみにしてね。光沢と張りがあって手触りが本当に良いものなの」
そう言うと、オネエ様はハンカチでそっと涙を拭った。
「王子が二十歳になる歳から機織り部が毎年ね、今年こそはお嫁さん決まりますようにって心を込めて織り続けて計六着分。ようやく報われるわ」
「あ、色々すみません」
「妊婦バージョンも考えているから安心して子作りしてね」
「あっ、はい」
その気遣いは微妙?
そこに侍従の人が来て、私達にこう告げた。
「王妃様よりご使者が参りました」
「おっ、王妃様?」
私はすごく驚いたが、ジェローム様は落ち着き払った声で侍従の方に答える。
「お通しして。エルシー様、そこの椅子に腰掛けてね」
指示通りに座るとさっとオネエ様が近づき、ドレスの裾を直してくれた。
その後でオネエ様がジェローム様に尋ねた。
「ワタシ、下がる?」
「あら、良いわよ、乱入してきたのは向こうだもの」
***
王妃様の使者はてっきり女性かと思ったが、男性の騎士だった。竜騎士の方々とは制服が違うので、多分、近衛騎士様だろう。
その人は私に一礼し、一通の手紙をジェローム様に渡す。
「王妃殿下より、エルシー様にお茶会のお誘いでございます。明日と急でございますので、出来ましたら今すぐにお返事下さいますよう」
「…………」
私はちらっとジェローム様を見たが、ジェローム様はこちらを見ないで、ただ前を見て楚々と立っている。
これは、多分、私の一存で決めていいということだ。
じゃあ、当然。
「お断り致します。そう、妃殿下にはお伝え下さいませ」
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