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32.お茶会の招待状②
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断ったら騎士様はびっくりしたみたいだった。
「なっ、何故ですか、王妃様からの直々のお誘いでありますぞ。どうかお考え直し下さい」
確かに本来の私の身分である子爵の娘なら、王妃様からのお茶会のお誘いを断れるはずない。
でもジェローム様は私をまだ結婚してないのに王子妃と呼び、この王国で一番高貴なのは私と言った。
王妃様とほぼ同格の立場なら、今回のお茶会のお誘いはちょっとおかしい。
余程仲の良い友達ならともかく、初対面の相手を翌日のお茶会にいきなり誘うなんてありえないのだ。
しかも今返事しろというのは明らかにマナーに反している。
私は騎士様に答えた。
「今、王子殿下がお城を離れておいでです。私の一存ではここを動けません」
王子は私を今この離宮に軟禁していることになっている。
本当は違うということは王妃様もご存じだろうけど、建前としてはそう。
実際、軟禁されているのにお家帰らないで、お茶会出るなんて変だし。
「エルシー様のお言葉です。お帰りを」
ジェローム様はそのままお茶会の招待状を騎士様に突っ返して追い出した。
***
「良かったですか?」
一応尋ねるとジェローム様は笑顔で頷いてくれた。
「ええ、バッチリよ」
「でもなんでさっき、正解を教えてくれなかったんですか?」
ジェローム様は肩をすくめるような仕草をする。
「行っても行かなくてもどちらでも良かったからよ。断るならそれでよし。行くんだったら行くで守るつもりだったもの。遅かれ早かれ、王妃様にはお目に掛かることになるわ」
「……じゃあ断らない方が?」
ジェローム様は冷たく言い放った。
「まさか。本当にエルシー様に来て欲しいならもう少しまともな招待をすべきよ」
翌日に、また使者の人が来て、でも今度は国王陛下の使者様だった。
陛下のご使者なので立ち上がってお迎えする。
やっぱりその人も騎士様で、私に一礼し、一通の手紙をジェローム様に渡す。
「エルシー様、国王陛下よりお茶会のお誘いでございます。明日と急でございますが、どうしても義妹になるあなた様にお会いしたいと国王陛下がお望みです。差し出がましいようですが、こちらのドレスを預かっております」
と騎士様は一着のドレスを私に差し出す。
今度はジェローム様は私の方を見た。
「はい。お目にかかるのを楽しみにしています。そう国王陛下にお伝え下さい」
そう答えたが、内心、心臓が止まりそうだった。
だって、国王陛下ですよ!
使者様が帰った後で、私はジェローム様に涙目ですがりついた。
「ジェローム様も一緒に来てくれますよね」
「もちろん行くわよ。明日ならもしかして王子も帰ってくるかも知れないし、そうしたら二人で行きなさいね」
「王子、帰ってくると良いなぁ」
真剣に祈ったが、王子は翌朝も帰ってこなかった。
かわりに付いてきてくれたのは、ジェローム様とアラン様だ。
「アラン様、王子と一緒じゃなかったんですか?」
「一緒じゃなかったんですよ。こういうこともあろうかと思いまして」
何故かアラン様はニヤリと笑った。
***
離宮から馬車に乗り、王宮の正面に回り、馬車を降りる。
すると辺りがざわめき、吸い寄せられるように私に視線が集まるのが分かった。
ジェローム様も今日は竜騎士の制服。
オネエ様、真面目な恰好するとかなりの美青年。
アラン様も美青年。
美形二人に囲まれてるが、それでも視線は普通の私に集まっている。
噂のお妃候補を一目見ようという人だろう。
私はまだ十六歳で社交界デビューもしていないから私を知る貴族はほんの一握りだ。
特に宮中に出入り出来るような高位の貴族に私はお目に掛かったことがない。
「あれが竜が選んだお妃様か」
「特に美しいとは思えんな。どうということがない小娘に見えるが」
皆、ひそひそ囁きあっているようだが、興奮してるのか少し声が大きめだ。
聞こえてますよ、と言いたい。
「子爵令嬢と言うが、確かに野暮ったい娘だな」
後から知ったが、国王陛下から贈られたこのドレスは王妃様のドレスだった。
濃紺と珍しい色の斬新で豪華なドレスなのだが、オシャレで有名な王妃様のドレスは、十六歳の小娘が着こなすのは難しく、服に着られている感しかない。
一言で言うと、野暮ったい。
まあ悪口ではなく、事実だからあまり気にならないかな。
「大丈夫?」
ジェローム様からは気を遣われたが、笑顔で答えられた。
「はい」
絵画が並ぶ廊下を通り、鏡張りの長い回廊を渡り、辿り着いたのは中庭が見える王家の談話室というところだった。
「なっ、何故ですか、王妃様からの直々のお誘いでありますぞ。どうかお考え直し下さい」
確かに本来の私の身分である子爵の娘なら、王妃様からのお茶会のお誘いを断れるはずない。
でもジェローム様は私をまだ結婚してないのに王子妃と呼び、この王国で一番高貴なのは私と言った。
王妃様とほぼ同格の立場なら、今回のお茶会のお誘いはちょっとおかしい。
余程仲の良い友達ならともかく、初対面の相手を翌日のお茶会にいきなり誘うなんてありえないのだ。
しかも今返事しろというのは明らかにマナーに反している。
私は騎士様に答えた。
「今、王子殿下がお城を離れておいでです。私の一存ではここを動けません」
王子は私を今この離宮に軟禁していることになっている。
本当は違うということは王妃様もご存じだろうけど、建前としてはそう。
実際、軟禁されているのにお家帰らないで、お茶会出るなんて変だし。
「エルシー様のお言葉です。お帰りを」
ジェローム様はそのままお茶会の招待状を騎士様に突っ返して追い出した。
***
「良かったですか?」
一応尋ねるとジェローム様は笑顔で頷いてくれた。
「ええ、バッチリよ」
「でもなんでさっき、正解を教えてくれなかったんですか?」
ジェローム様は肩をすくめるような仕草をする。
「行っても行かなくてもどちらでも良かったからよ。断るならそれでよし。行くんだったら行くで守るつもりだったもの。遅かれ早かれ、王妃様にはお目に掛かることになるわ」
「……じゃあ断らない方が?」
ジェローム様は冷たく言い放った。
「まさか。本当にエルシー様に来て欲しいならもう少しまともな招待をすべきよ」
翌日に、また使者の人が来て、でも今度は国王陛下の使者様だった。
陛下のご使者なので立ち上がってお迎えする。
やっぱりその人も騎士様で、私に一礼し、一通の手紙をジェローム様に渡す。
「エルシー様、国王陛下よりお茶会のお誘いでございます。明日と急でございますが、どうしても義妹になるあなた様にお会いしたいと国王陛下がお望みです。差し出がましいようですが、こちらのドレスを預かっております」
と騎士様は一着のドレスを私に差し出す。
今度はジェローム様は私の方を見た。
「はい。お目にかかるのを楽しみにしています。そう国王陛下にお伝え下さい」
そう答えたが、内心、心臓が止まりそうだった。
だって、国王陛下ですよ!
使者様が帰った後で、私はジェローム様に涙目ですがりついた。
「ジェローム様も一緒に来てくれますよね」
「もちろん行くわよ。明日ならもしかして王子も帰ってくるかも知れないし、そうしたら二人で行きなさいね」
「王子、帰ってくると良いなぁ」
真剣に祈ったが、王子は翌朝も帰ってこなかった。
かわりに付いてきてくれたのは、ジェローム様とアラン様だ。
「アラン様、王子と一緒じゃなかったんですか?」
「一緒じゃなかったんですよ。こういうこともあろうかと思いまして」
何故かアラン様はニヤリと笑った。
***
離宮から馬車に乗り、王宮の正面に回り、馬車を降りる。
すると辺りがざわめき、吸い寄せられるように私に視線が集まるのが分かった。
ジェローム様も今日は竜騎士の制服。
オネエ様、真面目な恰好するとかなりの美青年。
アラン様も美青年。
美形二人に囲まれてるが、それでも視線は普通の私に集まっている。
噂のお妃候補を一目見ようという人だろう。
私はまだ十六歳で社交界デビューもしていないから私を知る貴族はほんの一握りだ。
特に宮中に出入り出来るような高位の貴族に私はお目に掛かったことがない。
「あれが竜が選んだお妃様か」
「特に美しいとは思えんな。どうということがない小娘に見えるが」
皆、ひそひそ囁きあっているようだが、興奮してるのか少し声が大きめだ。
聞こえてますよ、と言いたい。
「子爵令嬢と言うが、確かに野暮ったい娘だな」
後から知ったが、国王陛下から贈られたこのドレスは王妃様のドレスだった。
濃紺と珍しい色の斬新で豪華なドレスなのだが、オシャレで有名な王妃様のドレスは、十六歳の小娘が着こなすのは難しく、服に着られている感しかない。
一言で言うと、野暮ったい。
まあ悪口ではなく、事実だからあまり気にならないかな。
「大丈夫?」
ジェローム様からは気を遣われたが、笑顔で答えられた。
「はい」
絵画が並ぶ廊下を通り、鏡張りの長い回廊を渡り、辿り着いたのは中庭が見える王家の談話室というところだった。
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