33 / 119
33.国王陛下のお茶会①
しおりを挟む
部屋には一組の男女と、後は侍従らしい方々がいた。
男性の方は、一目で国王陛下と分かった。
チェニックに豪華な毛皮のマントを羽織り、頭には輝くのは王冠。
肖像画も見たことあるし、何より王子に似ている。
青い髪、そして青い瞳。
顔かたちは王子に似ているが、一見きつそうな目つきの王子に比べるとかなり柔和そうだ。
それに王子は187センチメートルと背が高い人で、国王陛下もお背は高い方だが、そこまでではない。
あとは王子の方が騎士らしくごつい。
陛下は普通にスラリとしたお姿だ。
顔は王子の方が断然美形だが、貴公子然としているのは陛下の方かも知れない。
王子は無口だし、でっかいし、人によってはとっつきにくくて怖く感じるらしい。
御年三十歳と聞いている。
陛下と王子のご両親である前国王陛下は六年前に急死なさり、その跡を継いで陛下は二十四歳の若さで国王に即位された。
女性は、王妃様だ。こちらも肖像画で拝見したままのお姿。
年齢は二十七歳で、とてもお綺麗。
華やかなオレンジ色のクルクル巻き髪でピンクの瞳。
想像する高貴なご令嬢がそのまま大人になった様なお姫様のような王妃様だ。
二人並ぶと一対の人形のように綺麗なご夫婦だった。
「本日はお招きありがとうございます」
「いや、よくいらっしゃった。エルシー嬢」
とそれらしい挨拶を交わし、お茶会が始まる。
陛下は私を優しくねぎらってくれた。
「グレンは少し変わり者だが、上手くやっていけそうかな?」
「はい。まだ良く分かりませんが、お優しい方だとは思います」
「急なことだが私も義妹が決まって嬉しい。あれ一人が何もかも背負う状況は心苦しく思っていた。どうかグレンを支えてあげてくれ」
おおおっ、一応、色々押しつけていた自覚はあるのか?
「はい。私でお役に立てるなら、喜んでつとめを果たしたいと思います」
影派遣した人だが、悪気はなかったのか?
弟心配だっただけか?
恥ずかしかったぞ。止めてくれ。
だが、王妃様はちょっと私が気に入らないみたいだ。
扇を手にふぅーと大きくため息を吐く。
「愛してもいない人と結婚するなんて信じられないわ」
「…………」
そう言われて、何となくムッとしてしまった。
そうかも知れないけど、これしょうがない結婚だし、そんなの王妃様だってお分かりのはず。
もし本気で信じられないと思うならお妃選びなんて止めてくれれば良かったのだ。
いや、止められたら、この国滅んじゃう。
とにかくどうしょうもなくて王子は色々飲み込んで私と結婚することになった。
それなのに、何ですかその言い方は。
思わず王妃様と、その隣にいる国王陛下を見た。
王妃様は多分、悪気とかないんだろう。
ご自分は恋愛の末、陛下とご結婚なさったそうだし、相思相愛の王妃様には、しょうがない結婚はなかなか受けいられないのかも知れない。
「ですわよね、陛下」と国王陛下に向かって首をかしげている。
国王陛下の方は少し困った顔だが、それに「そうだね」と頷いた。
陛下の同意を得た王妃様は、扇を片手にチラリと私に視線を投げる。
「本当にグレン様は可哀想な人。愛のない結婚をしなければならないなんて」
そりゃあ可哀想だけど、王子は自分のことより国家を優先した立派な人なんだから!
『一言くらい言いたい』
そう思った時、アラン様がおもむろに口を開いた。
「誤解があるようですね、王妃殿下」
男性の方は、一目で国王陛下と分かった。
チェニックに豪華な毛皮のマントを羽織り、頭には輝くのは王冠。
肖像画も見たことあるし、何より王子に似ている。
青い髪、そして青い瞳。
顔かたちは王子に似ているが、一見きつそうな目つきの王子に比べるとかなり柔和そうだ。
それに王子は187センチメートルと背が高い人で、国王陛下もお背は高い方だが、そこまでではない。
あとは王子の方が騎士らしくごつい。
陛下は普通にスラリとしたお姿だ。
顔は王子の方が断然美形だが、貴公子然としているのは陛下の方かも知れない。
王子は無口だし、でっかいし、人によってはとっつきにくくて怖く感じるらしい。
御年三十歳と聞いている。
陛下と王子のご両親である前国王陛下は六年前に急死なさり、その跡を継いで陛下は二十四歳の若さで国王に即位された。
女性は、王妃様だ。こちらも肖像画で拝見したままのお姿。
年齢は二十七歳で、とてもお綺麗。
華やかなオレンジ色のクルクル巻き髪でピンクの瞳。
想像する高貴なご令嬢がそのまま大人になった様なお姫様のような王妃様だ。
二人並ぶと一対の人形のように綺麗なご夫婦だった。
「本日はお招きありがとうございます」
「いや、よくいらっしゃった。エルシー嬢」
とそれらしい挨拶を交わし、お茶会が始まる。
陛下は私を優しくねぎらってくれた。
「グレンは少し変わり者だが、上手くやっていけそうかな?」
「はい。まだ良く分かりませんが、お優しい方だとは思います」
「急なことだが私も義妹が決まって嬉しい。あれ一人が何もかも背負う状況は心苦しく思っていた。どうかグレンを支えてあげてくれ」
おおおっ、一応、色々押しつけていた自覚はあるのか?
「はい。私でお役に立てるなら、喜んでつとめを果たしたいと思います」
影派遣した人だが、悪気はなかったのか?
弟心配だっただけか?
恥ずかしかったぞ。止めてくれ。
だが、王妃様はちょっと私が気に入らないみたいだ。
扇を手にふぅーと大きくため息を吐く。
「愛してもいない人と結婚するなんて信じられないわ」
「…………」
そう言われて、何となくムッとしてしまった。
そうかも知れないけど、これしょうがない結婚だし、そんなの王妃様だってお分かりのはず。
もし本気で信じられないと思うならお妃選びなんて止めてくれれば良かったのだ。
いや、止められたら、この国滅んじゃう。
とにかくどうしょうもなくて王子は色々飲み込んで私と結婚することになった。
それなのに、何ですかその言い方は。
思わず王妃様と、その隣にいる国王陛下を見た。
王妃様は多分、悪気とかないんだろう。
ご自分は恋愛の末、陛下とご結婚なさったそうだし、相思相愛の王妃様には、しょうがない結婚はなかなか受けいられないのかも知れない。
「ですわよね、陛下」と国王陛下に向かって首をかしげている。
国王陛下の方は少し困った顔だが、それに「そうだね」と頷いた。
陛下の同意を得た王妃様は、扇を片手にチラリと私に視線を投げる。
「本当にグレン様は可哀想な人。愛のない結婚をしなければならないなんて」
そりゃあ可哀想だけど、王子は自分のことより国家を優先した立派な人なんだから!
『一言くらい言いたい』
そう思った時、アラン様がおもむろに口を開いた。
「誤解があるようですね、王妃殿下」
16
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。
airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。
どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。
2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。
ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。
あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて…
あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
不能と噂される皇帝の後宮に放り込まれた姫は恩返しをする
矢野りと
恋愛
不能と噂される隣国の皇帝の後宮に、牛100頭と交換で送り込まれた貧乏小国の姫。
『なんでですか!せめて牛150頭と交換してほしかったですー』と叫んでいる。
『フンガァッ』と鼻息荒く女達の戦いの場に勢い込んで来てみれば、そこはまったりパラダイスだった…。
『なんか悪いですわね~♪』と三食昼寝付き生活を満喫する姫は自分の特技を活かして皇帝に恩返しすることに。
不能?な皇帝と勘違い姫の恋の行方はどうなるのか。
※設定はゆるいです。
※たくさん笑ってください♪
※お気に入り登録、感想有り難うございます♪執筆の励みにしております!
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる