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71.誤解、解ける
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今日は町の代官様の屋敷に泊まるらしい。
代官様のお屋敷はポズンの町を見下ろす山の上にある大きなお城で、王子が来たのを祝って晩餐会も開かれるらしい。
私は、正装であるこの辺りの民族衣装を着せて貰いながら、少し憂鬱だった。
東部の民族衣装は繊細で色鮮やかな刺繍で有名だ。
白いブラウス、緑と黒がベースになったスカートに白の花刺繍が施されたエプロン。ショート丈の革靴。
とっても可愛い民族衣装なのだが、いまいち気分は盛り上がらない。
支度をしてくれているお屋敷の侍女さん達の前でもついため息が漏れてしまった。
「どうなさいましたか、エルシー様」
「いえ、あの、すみません。もしかしてあまり歓迎されていないのなと思ってしまって……」
言われても困るよね……こんなこと。
思い直して、あわてて頭を振る。
「すみません。大丈夫です!」
でも遅かったようだ。
侍女さん達は顔を見合わせ、私に頭を下げる。
「申し訳ございません、エルシー様」
「えっ、あの……」
「実は皆、エルシー様のことを男の子だと誤解していたのです」
「えっ?」
「長年、王子殿下のお妃様が見つからずにおりました。都では王子妃様のお披露目があったらしいですが、なんとそれが竜を騙して王子妃になろうとした悪女だったとかで」
クラリッサさんのことかな?
そのことについては王家の名で国中に広くお触れを出したらしい。
ついでにお妃はエルシーに決まりましたよ、もお触れに書いてあったはずなんですが……。
「王子殿下がその件でどれほどご傷心かと私どもも心を痛めておりました」
「それはすみません……」
「そこで王子殿下が可愛いお小姓をお連れでしたので……つい」
「お小姓」
小姓は高貴なお方の身辺で雑用なんかをする男の子のことだ。
通常は七歳くらいから十五歳くらいまでの少年。
もう一回言う。
小姓は、少年。
竜に乗る時は私はパンツ見えないように半ズボンをはいているし、髪も帽子に入れていた。
ぱっと見は確かに男の子みたいだったかも。
それに令嬢、屋台のドーナツ食べないし、地べた座らない……。
女の子の民族衣装を着てちゃんとお化粧して王子と一緒に晩餐会の会場である大広間に入ると、集まった百人程の人々は一斉に立ち上がり、拍手が巻き起こる。
「お妃様万歳!」
って涙ぐみながら叫ばれて、騒がしいの嫌いな王子は不快そうに周囲をねめつける。
「大袈裟だ。やめろ」
と言ったので、怒ってやりましたよ!
「グレン様のせいですよ、反省して下さい」
「何故?」
「グレン様のせいで私、男の子だと思われたんです!」
ちょっとゴタゴタしたけど、晩餐会は賑やかで楽しかった。
「えっ、グレン様がここの領主なんですか?」
代官様が頷く。
「ここは王太子殿下のご領地のひとつです。代々王太子殿下がお治めのご領地なのです」
代官様は王子のお父様の代から二十年くらいポズンの町を含め、一帯の代官を任されているらしい。
「あっ、そうなんですか」
「この城の主も殿下でごさいます。こちらは妃殿下様であるエルシー様の城でもございます。家臣一同、誠心誠意お仕え致します」
「はあ…、ありがとうございます」
城。
規模が大きすぎて良く分からないけど、お礼は言った。
王家の直轄領の一つなので、ポズンは王家に忠誠も厚く、その分、王子の結婚は心配事の一つだったらしい。
「殿下は我らにとってはかけがえのない王太子であり、英邁なるご領主様でございますが、持って生まれた威厳がそうさせるのでしょうか、いささか近寄りがたく……」
大変気を遣った言い回しだが、要するに王子、とっつきにくいのだ。
「分かります。グレン様、なんかいつでも機嫌悪そうですからね」
「…………」
王子は無言でこっちを見ている。
何か言いたそうだが、無視した。
世間の評価を知れ。
「その殿下がエルシー様に柔らかいお顔で微笑んだり、愛しむようにお声がけをなさるのを見た時、これはもう……王家は殿下の代で潰えるのだと……」
「誤解させてすみません。私、女の子なんです。……あっ、そうだグレン様」
と隣に座る王子に声を掛ける。
「何だ?」
「今気付いたんですけど、昼間のあれはデートですね。初デートです。私、初めてデートしました」
王子も多分、今気付いた。
金色の目を見開く。
「デート……、愛し合う男女が会うこと。そうか、あれがデートか……」
と王子も感慨深そうだ。
「うううっ」と声が聞こえて、振り向くと代官様が泣いていた!
「このように楽しげに会話なさる殿下は初めてでこざいます。どうかエルシー様は末永く殿下のお側に……」
「えっ、はっ、はい……」
これで楽しそうって……今まで王子、どんな会話してたんだろう?
私は、色んな珍しいものが見られて、食べれて、お土産も買ったり貰ったりして、楽しい旅を終えて王都に戻った。
代官様のお屋敷はポズンの町を見下ろす山の上にある大きなお城で、王子が来たのを祝って晩餐会も開かれるらしい。
私は、正装であるこの辺りの民族衣装を着せて貰いながら、少し憂鬱だった。
東部の民族衣装は繊細で色鮮やかな刺繍で有名だ。
白いブラウス、緑と黒がベースになったスカートに白の花刺繍が施されたエプロン。ショート丈の革靴。
とっても可愛い民族衣装なのだが、いまいち気分は盛り上がらない。
支度をしてくれているお屋敷の侍女さん達の前でもついため息が漏れてしまった。
「どうなさいましたか、エルシー様」
「いえ、あの、すみません。もしかしてあまり歓迎されていないのなと思ってしまって……」
言われても困るよね……こんなこと。
思い直して、あわてて頭を振る。
「すみません。大丈夫です!」
でも遅かったようだ。
侍女さん達は顔を見合わせ、私に頭を下げる。
「申し訳ございません、エルシー様」
「えっ、あの……」
「実は皆、エルシー様のことを男の子だと誤解していたのです」
「えっ?」
「長年、王子殿下のお妃様が見つからずにおりました。都では王子妃様のお披露目があったらしいですが、なんとそれが竜を騙して王子妃になろうとした悪女だったとかで」
クラリッサさんのことかな?
そのことについては王家の名で国中に広くお触れを出したらしい。
ついでにお妃はエルシーに決まりましたよ、もお触れに書いてあったはずなんですが……。
「王子殿下がその件でどれほどご傷心かと私どもも心を痛めておりました」
「それはすみません……」
「そこで王子殿下が可愛いお小姓をお連れでしたので……つい」
「お小姓」
小姓は高貴なお方の身辺で雑用なんかをする男の子のことだ。
通常は七歳くらいから十五歳くらいまでの少年。
もう一回言う。
小姓は、少年。
竜に乗る時は私はパンツ見えないように半ズボンをはいているし、髪も帽子に入れていた。
ぱっと見は確かに男の子みたいだったかも。
それに令嬢、屋台のドーナツ食べないし、地べた座らない……。
女の子の民族衣装を着てちゃんとお化粧して王子と一緒に晩餐会の会場である大広間に入ると、集まった百人程の人々は一斉に立ち上がり、拍手が巻き起こる。
「お妃様万歳!」
って涙ぐみながら叫ばれて、騒がしいの嫌いな王子は不快そうに周囲をねめつける。
「大袈裟だ。やめろ」
と言ったので、怒ってやりましたよ!
「グレン様のせいですよ、反省して下さい」
「何故?」
「グレン様のせいで私、男の子だと思われたんです!」
ちょっとゴタゴタしたけど、晩餐会は賑やかで楽しかった。
「えっ、グレン様がここの領主なんですか?」
代官様が頷く。
「ここは王太子殿下のご領地のひとつです。代々王太子殿下がお治めのご領地なのです」
代官様は王子のお父様の代から二十年くらいポズンの町を含め、一帯の代官を任されているらしい。
「あっ、そうなんですか」
「この城の主も殿下でごさいます。こちらは妃殿下様であるエルシー様の城でもございます。家臣一同、誠心誠意お仕え致します」
「はあ…、ありがとうございます」
城。
規模が大きすぎて良く分からないけど、お礼は言った。
王家の直轄領の一つなので、ポズンは王家に忠誠も厚く、その分、王子の結婚は心配事の一つだったらしい。
「殿下は我らにとってはかけがえのない王太子であり、英邁なるご領主様でございますが、持って生まれた威厳がそうさせるのでしょうか、いささか近寄りがたく……」
大変気を遣った言い回しだが、要するに王子、とっつきにくいのだ。
「分かります。グレン様、なんかいつでも機嫌悪そうですからね」
「…………」
王子は無言でこっちを見ている。
何か言いたそうだが、無視した。
世間の評価を知れ。
「その殿下がエルシー様に柔らかいお顔で微笑んだり、愛しむようにお声がけをなさるのを見た時、これはもう……王家は殿下の代で潰えるのだと……」
「誤解させてすみません。私、女の子なんです。……あっ、そうだグレン様」
と隣に座る王子に声を掛ける。
「何だ?」
「今気付いたんですけど、昼間のあれはデートですね。初デートです。私、初めてデートしました」
王子も多分、今気付いた。
金色の目を見開く。
「デート……、愛し合う男女が会うこと。そうか、あれがデートか……」
と王子も感慨深そうだ。
「うううっ」と声が聞こえて、振り向くと代官様が泣いていた!
「このように楽しげに会話なさる殿下は初めてでこざいます。どうかエルシー様は末永く殿下のお側に……」
「えっ、はっ、はい……」
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