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日常

第15話 煽るお前が悪い

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 一日中とはいわなくとも、それに近い時間を淫行に耽った翌日。

「おい、旭陽……」
 声をかけても、旭陽が布団の中から出てこない。

 昨日は、散々焦らして最奥の向こう側まで貫いた後、もう何も考えずにひたすら旭陽の体を貪った。

 今の体は、一日中ヤり続けても翌日に支障を来さない。
 数えきれないくらい失神していた旭陽も、魔王の贄として体力が大幅に強化されている。
 昨晩我に返った瞬間は今度こそヤり殺してしまったかと青褪めたが、単に完全にオチて目覚めなくなっただけだった。
 いや、それでも相当の大事だが。

 ぴくりとも動かない旭陽を見た時には正直、今度こそ熱じゃ済まないかと思ったぞ。
 血を吸ってヤってるだけで相手を強化できるって、改めて魔王すごい。魔王の力に感謝だ。

 色々驚いたが、贄認定した相手は俺が半ば暴走しても無事に済むのだと判明したのは嬉しかった。
 ……どうせ旭陽以外を手元に置くつもりも、手を出すつもりもないからな。過信してやりすぎないように、ちゃんと気を付けなきゃならないことに変わりはないんだが。

 ともかく、そう、無事なはずなんだ。
 今朝ベッドを出る前に見た旭陽は、ちょっと顔色は悪かったけど寝息はそこまで乱れてなかった。
 少し熱はあるようだったけど、前回に比べたら随分とましな程度だ。
 魘されてもなかったし、呼吸の音もおかしくはなかった。

 なのに、戻ってきたらベッドの上に白い塊がいる……

 どうしたんだ、旭陽。
 急に可愛いことするのやめてくれないか?
 流石に昨日あれだけめちゃくちゃやっておいて今日も襲ったら、元とはいえ人間としてちょっとやばいと思うから。
 煽らないでくれ。

「……バッカじゃねえの、お前……」
「え? ……あ、く、口に出てたか?」
「出まくってんだよ、絶倫」

 ……ん、んん。出てたか。
 何となく気恥ずかしくなって手で口を隠す。
 でもな、旭陽に『絶倫』って言われるのも正直かなりクるんだわ。

 ごほんと咳で誤魔化し、改めてシーツの塊を眺めた。

 正確には、ベッドの上で旭陽が大きな体に布団を巻き付けている。
 体を丸めて隠れようとするような奴じゃないから、単純に背中を向けてきているだけだ。
 でも黒髪の一部しか布団からは覗いておらず、頭から足元まで布団で隠れてしまっている。

 こんな寝方をする男でもないから、これは――俺に対する拒否の意思表示、だと思う。
 会話はしてくれてるんだし、完全な拒絶ではないだろう。
 締め出すほど怒ってるわけではないけど、機嫌は悪い……とか?
 それにしては声が不機嫌じゃないな。普段以上に低くはあるけど。


 よく分からないが、とりあえず顔が見たい。

「旭陽、布団剥いで良いか?」
「良いわけねえだろ……放っとけ」

 素気なく拒否されても、気にせずに布団に手をかける。
 訊いてはみたが、今の旭陽が俺を拒絶する権利はないんだし。

「おい……」

 そのまま布団を剥がそうと力を込めれば、褐色の手が出てきて布団を握った。
 布団から離させようと、抵抗している手を掴む。

「ッア、っ」

 低音が高く跳ねて、びくりと握った手が震えた。

「……え、」
「…………っ」

 思わぬ反応に驚いていると、握っていた手が俺の手の中から逃げて行こうとした。
 咄嗟に力を込めて掴み直し、指先しか見えていなかった手を布団から引っ張り出す。
 剥き出しの腕には手枷がない変わりに、衣服も纏っていない。
 どうせ脱がすんだし、要らないかと今日は着せていなかった。

「……何してやがる、晃。離せ」
「嫌だ」
「てめぇ……ッぁ、やめろッ……!」

 恫喝の声が響いてくる前に、旭陽の指間に俺の指を差し込む。
 するすると掌を撫でて互いの指を絡めていくと、肌が擦れる度に押し殺した吐息が聞こえた。
 指先に軽く歯を立てる。腫れている手首に舌を這わせれば、褐色の指がぴくぴくと反応を見せた。

 今なら、邪魔されないだろうか。
 布団を一気に撥ね退ければ、案の定反応が遅れた旭陽の体が白の中から現れた。

「放っとけっつったろ」

 体を覆う物を奪われた男が、嫌そうに顔を歪めて目を逸らした。
 その頬は明らかに色付いていて、唇が僅かに震えている。
 昨日の名残りで腫れ上がっている目元を撫でると、自由な手がシーツをぎゅうと握り締めた。

「やッ……めろ、って……っあ、う……ッ」

 ぴくぴくと震える喉に触れてみれば、堪えるような呼吸が荒さを増す。
 俺から逸らされた視線には、明らかに熱が灯っていた。

「……旭陽、感じてんのか?」

 そっと尋ねてみると、旭陽の肩が小さく跳ねる。

「う……るせえ、な」
「だって……ほら」

 上に圧し掛かってみても、抵抗はない。その変わりに、極力肌が触れないように身を捩られる。
 ずり上がろうとする体はひとまず好きにさせて、掌で腹部を擦ってみた。
 ざっと触れている場所に鳥肌が立って、旭陽の声が幾分か大きくなる。

「ッぁ、んうっ……っさ、わるな、晃……っ!」
「どうしてこんなになってるの? 俺の所為?」

 触れるだけでびくびくと震える姿を見ていれば、また頭に血が昇ってくる。
 合わなかった視線が不意にぶつかった。黄金の瞳は、熱を上げて微かに潤んでいた。

「――お前以外に誰が居るってんだ……! ックソ、怒鳴っただけでも響く……っン、あっ」

 旭陽が恨めしげな顔で睨み上げてきた。

 肌は発熱したように熱く、俺の指の動きに反応して震えを走らせている。
 膝を立てている足を掴んで開かせると、その間で逸物が熱を持って頭を掲げていた。
 先端からは先走りがとろとろと流れ出している。
 俺が戻ってくる前からこの状態であった証拠に、股座が透明の先走りでべったりと濡れていた。

 思わず問いの視線を向ければ、旭陽が不本意そうに眉を歪めた。

「……疼くんだよ。何かと擦れても、じっとしてても、全身……ッも、いいだろ。
 丸まってんのが一番マシだ。さっさと返せ」

 俺が奪った布団を視線で示して、旭陽が傲慢に命令してきた。
 ええ、まだそういう態度取れんのか……本当に何されても萎縮しないな、こいつ。

 いや、それより凄いこと言われてるぞ。
 犯されすぎて、全身が過敏になったまま収まらないってことだろ?
 抱き潰した直後、旭陽の意識がない時にはそういう状態にはなってたけど。
 今日は目が覚めてからも継続中、ってことだ。

「んー、どうしようかな……」

 ぼやきながら、旭陽の首筋に舌を滑らせる。

「っア、んぅっ……! ッバ、カ、やめろっ……!」

 太い血管を舌でなぞれば、旭陽の手が俺の肩を掴んだ。
 そのまま押し返してこようとするのを、手首を掴んで逆に捕まえる。
 先日から何度も痛めている場所を強く掴まれて、旭陽の眉が小さく歪んだ。

「なあ、何処が一番気持ちいい?」
「ッん、ンッ……! や、っめ、ッあっあう! ッア……っ」

 逃れようと捩られる体を押さえ付けながら、幾つもの朱痕が残っている肌を濡らしていく。
 鎖骨の辺りに強く吸い付けば、嫌がっていた声が高くなった。

 震えている両足の間に膝を割り込ませ、すっかり勃ち上がりきった雄へぐりぐりと押し付ける。

「ッぁ、あ!? ヒァあうっ! ッャっあぁぅッ!」

 突然の乱暴な刺激に、驚きの嬌声が上がった。
 咄嗟に事態を理解できていないまま、旭陽の吐き出したものが俺の膝を濡らす。
 身を捩って逃れようとする男の急所を、更に膝で刺激した。

「ッひっィ、ぃあア゛ッ! ッつァっ! ッ、あぐッぅっ!」

 射精したばかりの陰茎を固い膝で嬲られ続けて、男が腰を跳ね上げながら何度も連続で白濁を吐き出していく。
 暴れようとする腕を旭陽の頭上に引き上げる。
 両腕の手首を重ねて片手を乗せてみたが、指が微妙に届ききらない。
 逞しい腕を力技でシーツに押さえ付け、両手を引き上げられたことで晒された腋に舌を押し付ける。

「ッぁ! っゃ、ど、っどこッ舐めて……!?」

 ぎょっとした声が聞こえた。気にせずに肌を吸い上げる。

「ヒぅっ!」

 びくりと旭陽が跳ねれば、顔を寄せている場所から甘い香りがぶわりと分泌された。

 これ、旭陽の匂いだ。
 何もつけてないはずなのに、何でこんなに甘ったるい匂いがするんだろ、こいつ。
 昔から旭陽の体からは甘い匂いがした。でも、犯すごとにどんどん芳醇さが増していってる気がする。

「やっ、め、! ッやめろバ、カ、ッんぅン! っぁ、あっ……!」

 旭陽の膝が、俺の脇腹にがんがんと当たってくる。

 止めさせようとしてくる相手には反応せず、反対の腋にも舌を押し付けた。
 痕を残す勢いで、褐色に強く吸い付く。
 震える喉仏を撫でて、昨日噛んだ場所を指でなぞっていった。

「ッゃ、だッ、ッあぅう! っは、アッ、んあっ……!」

 快感だけにしてはやけに赤く顔を染めて、旭陽が俺を振り払おうとしてくる。
 何となく楽しくなってきて、黄金の瞳から涙が溢れるまで俺の戯れは続いた。
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