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第二章 少年期編
異世界オネエ
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気配に敏感なルドルフでさえ、その存在に今の今まで気付けていなかった事に驚き、真っ先に彼が距離を取るようにバックステップを踏む。
「あら、そんなに驚いて失礼ね!」
くねくねと気持ち悪い仕草で非難するような声を上げる目の前の人物。
反応が遅れてしまったルカも、素早くその人物のほうに視線を移すと、予想外のビジュアルに目を見開いた。
つるつるのスキンヘッドに大きな輪っか状のピアス、ビューラーをかけたようなバチバチのまつ毛、共に黒で統一されたタートルネックのようなトップスとスキニーのパンツと、それとは逆に存在感を放つヒールの高い真っ赤な靴。
どちらかと言えば芋臭く、地味な格好が多いと思っていたこの街の人達の基準からすれば、明らかに浮きまくっていた。
「うわ………」
気配もなくいきなり現れたその存在に、警戒すべきと本能は語りかけるが、その異様すぎる見た目に気を取られてしまうルカ。
前世の都心の、あるエリアで良く見かけたようなビジュアルだが、懐かしさなどは全くなく、ただただ異様だという感情しか湧き上がってこなかった。
「なにか言ったかしらぁ?」
思わず気持ちわるげな声を出してしまったルカを睨むように、ギラリと見つめてくる彼(?)
「いや、なんでも…」
「あら、そう?アタシの美しさに感動の声を上げたのかと思ったわぁ」
んなわけねぇだろ!と、心の中で叫びながら、クワッと目を見開いたルカ。
しかしそれは声に出してはいけない。
なんとなくそれはわかった。
「なんでしょうね、この方は。私の長い人生の中でも出会った事がないタイプです」
そんなやりとりをしている中でも、警戒を解かずに武器を構えていたルドルフも、初めて見る人種に戸惑っていた。
「獣人にもこんなヤツらいないっす」
「別に出会う必要もないよ」
小声で話すルゥとルカ。
「みんな戸惑っても仕方ないわねぇ、まぁこのスタイルは宣伝中だし?じきに感度の高いセレブから真似をして、アタシのような美の化身が増えていくことだわ」
ぜひともその目論見は失敗に終わって欲しいと願う三人だった。
「で、このファッションの事をなが~くお話ししてもイイところなんだけど、とりあえず今のこれはどういう状況か教えてくれないかしら?上が騒がしいと思ったらお部屋の壁が綺麗になくなってるじゃない?」
そう言うと自分がどこから来たのかを示すように、床に開いたハッチのほうに視線を送る。
どうやらルカが壁を撃ち抜いた先のもう一つの部屋に、地下室への通路があったようだ。
「それは……」
僕の魔法で破壊しました、とは言えずに言い淀むルカ。
それを見ていたルドルフが代わりに説明をする。
「この娘のナイフがそこの冒険者に盗まれまして、取り返すために追いかけてきたんですが、そこでこの部屋にいた熊のような男に戦いを仕掛けられたのです」
「あぁ、ライモンドね。でも、それでここまで壊れるのかしら?」
「彼は魔斧を使ってきましたので、対抗するために全力で。おかげで高価な魔石をひとつ消費しました」
魔石による魔法による破壊。
この部分は明らかな嘘だが、話の大筋は間違っていないので現場にいた人間にしか真実はわからないだろう。
あくまで強力な攻撃への対抗で、たまたま。
そんな内容にすり替えて説明してみたのだ。
「ふぅん、そう。でも、あの熊ちゃん、あれだけあの武器はまだ試作段階だから使うなって言ったのに」
ルドルフが彼の言葉にぴくりと反応をする。
「まぁ、いいわ。そろそろここも用が無くなってきてたし。今回は痛み分けって事で。これほどの威力が出せる魔石なんて高いわよねぇ」
完全に納得している訳では無さそうだったが、彼も事情があるようだった。
明らかに被害のレベルで言えば大きいと思われたが、幕引きを宣言してきた。
「え?いいの?」
何かしらの抗議と賠償は確実だと思って俯いていたルカは、思わぬ提案にがばっと顔を上げる。
「あら?いいわよ。ただし、ひとつだけいいかしら?」
「なに?」
こういう時のお願いは一番危険。
それが分かっていたルカは真剣な表情になった。
「"グーラ"って知ってるかしら?」
「え?グーラ?」
キョトンとした表情で聞き返すルカ。
そのルカの反応と、他の二人の表情を見回して、満足そうな表情をうかべる彼。
「うん、大丈夫。分かったわ」
「え?今のでいいの?」
「いいの、いいの」
そう言うと、もと来た道を帰るように開いたままのハッチの方に歩いていく。
やけにあっさりした去り際に、三人とも拍子抜けしてしまっていたが、なぜかルカは気になって彼のステータスを確認しておかなければ、という衝動に駆られた。
『鑑定』
バレないように、こっそりと。
小さな声で呟くように唱えたスキル。
名前:レヴィア
年齢:43歳
レベル:101
体力:3050
魔力:5500
攻撃力:3200
防御力:2950
魔法力:6009
魔防:4536
回避:3212
運:223
属性: 闇、時
EXスキル:a'pd.×#ギ@、dgtx@3あ、闇の波動
COMスキル:聖級闇魔法、特級時魔法、特級錬金術、魔力操作特級、気配察知、魔具創造特級、
称号:○世界○、○者、コンバート、錬金術師、悲しき破壊者
「!!!!!」
(強い)
(強すぎる)
かつて探索の合間に見たルドルフのステータスよりも遥かに高い。
1000を超えるステータスがあれば超一流だと言われているが、レヴィアのステータスは運を除いた全てが2000超え。
それだけを見れば、まるでお伽話の勇者のようだった。
「あら?」
と、ハッチに向かって歩いていたレヴィアが急に立ち止まった。
すると、何もかも分かったような笑みを浮かべると、バチリとウインクをしながら言った。
「乙女の秘密を覗き見は良くないわよ?」
そう言うと、地下の通路に向けてサッと姿を消すレヴィア。
ルドルフとルカとルゥ。
先ほどの言葉の意味がわかったのは鑑定を使えるルカただひとり。
今までは誰にもバレずに行使できた神のスキル。
それが彼にはあっさりと看破された。
その事実と、隔絶したレヴィアのステータスにルカは心底戦いにならなくて良かったと安堵し、ドクドクと強く跳ねる心臓の鼓動が五月蝿いくらいに耳の奥で響いていた。
「あら、そんなに驚いて失礼ね!」
くねくねと気持ち悪い仕草で非難するような声を上げる目の前の人物。
反応が遅れてしまったルカも、素早くその人物のほうに視線を移すと、予想外のビジュアルに目を見開いた。
つるつるのスキンヘッドに大きな輪っか状のピアス、ビューラーをかけたようなバチバチのまつ毛、共に黒で統一されたタートルネックのようなトップスとスキニーのパンツと、それとは逆に存在感を放つヒールの高い真っ赤な靴。
どちらかと言えば芋臭く、地味な格好が多いと思っていたこの街の人達の基準からすれば、明らかに浮きまくっていた。
「うわ………」
気配もなくいきなり現れたその存在に、警戒すべきと本能は語りかけるが、その異様すぎる見た目に気を取られてしまうルカ。
前世の都心の、あるエリアで良く見かけたようなビジュアルだが、懐かしさなどは全くなく、ただただ異様だという感情しか湧き上がってこなかった。
「なにか言ったかしらぁ?」
思わず気持ちわるげな声を出してしまったルカを睨むように、ギラリと見つめてくる彼(?)
「いや、なんでも…」
「あら、そう?アタシの美しさに感動の声を上げたのかと思ったわぁ」
んなわけねぇだろ!と、心の中で叫びながら、クワッと目を見開いたルカ。
しかしそれは声に出してはいけない。
なんとなくそれはわかった。
「なんでしょうね、この方は。私の長い人生の中でも出会った事がないタイプです」
そんなやりとりをしている中でも、警戒を解かずに武器を構えていたルドルフも、初めて見る人種に戸惑っていた。
「獣人にもこんなヤツらいないっす」
「別に出会う必要もないよ」
小声で話すルゥとルカ。
「みんな戸惑っても仕方ないわねぇ、まぁこのスタイルは宣伝中だし?じきに感度の高いセレブから真似をして、アタシのような美の化身が増えていくことだわ」
ぜひともその目論見は失敗に終わって欲しいと願う三人だった。
「で、このファッションの事をなが~くお話ししてもイイところなんだけど、とりあえず今のこれはどういう状況か教えてくれないかしら?上が騒がしいと思ったらお部屋の壁が綺麗になくなってるじゃない?」
そう言うと自分がどこから来たのかを示すように、床に開いたハッチのほうに視線を送る。
どうやらルカが壁を撃ち抜いた先のもう一つの部屋に、地下室への通路があったようだ。
「それは……」
僕の魔法で破壊しました、とは言えずに言い淀むルカ。
それを見ていたルドルフが代わりに説明をする。
「この娘のナイフがそこの冒険者に盗まれまして、取り返すために追いかけてきたんですが、そこでこの部屋にいた熊のような男に戦いを仕掛けられたのです」
「あぁ、ライモンドね。でも、それでここまで壊れるのかしら?」
「彼は魔斧を使ってきましたので、対抗するために全力で。おかげで高価な魔石をひとつ消費しました」
魔石による魔法による破壊。
この部分は明らかな嘘だが、話の大筋は間違っていないので現場にいた人間にしか真実はわからないだろう。
あくまで強力な攻撃への対抗で、たまたま。
そんな内容にすり替えて説明してみたのだ。
「ふぅん、そう。でも、あの熊ちゃん、あれだけあの武器はまだ試作段階だから使うなって言ったのに」
ルドルフが彼の言葉にぴくりと反応をする。
「まぁ、いいわ。そろそろここも用が無くなってきてたし。今回は痛み分けって事で。これほどの威力が出せる魔石なんて高いわよねぇ」
完全に納得している訳では無さそうだったが、彼も事情があるようだった。
明らかに被害のレベルで言えば大きいと思われたが、幕引きを宣言してきた。
「え?いいの?」
何かしらの抗議と賠償は確実だと思って俯いていたルカは、思わぬ提案にがばっと顔を上げる。
「あら?いいわよ。ただし、ひとつだけいいかしら?」
「なに?」
こういう時のお願いは一番危険。
それが分かっていたルカは真剣な表情になった。
「"グーラ"って知ってるかしら?」
「え?グーラ?」
キョトンとした表情で聞き返すルカ。
そのルカの反応と、他の二人の表情を見回して、満足そうな表情をうかべる彼。
「うん、大丈夫。分かったわ」
「え?今のでいいの?」
「いいの、いいの」
そう言うと、もと来た道を帰るように開いたままのハッチの方に歩いていく。
やけにあっさりした去り際に、三人とも拍子抜けしてしまっていたが、なぜかルカは気になって彼のステータスを確認しておかなければ、という衝動に駆られた。
『鑑定』
バレないように、こっそりと。
小さな声で呟くように唱えたスキル。
名前:レヴィア
年齢:43歳
レベル:101
体力:3050
魔力:5500
攻撃力:3200
防御力:2950
魔法力:6009
魔防:4536
回避:3212
運:223
属性: 闇、時
EXスキル:a'pd.×#ギ@、dgtx@3あ、闇の波動
COMスキル:聖級闇魔法、特級時魔法、特級錬金術、魔力操作特級、気配察知、魔具創造特級、
称号:○世界○、○者、コンバート、錬金術師、悲しき破壊者
「!!!!!」
(強い)
(強すぎる)
かつて探索の合間に見たルドルフのステータスよりも遥かに高い。
1000を超えるステータスがあれば超一流だと言われているが、レヴィアのステータスは運を除いた全てが2000超え。
それだけを見れば、まるでお伽話の勇者のようだった。
「あら?」
と、ハッチに向かって歩いていたレヴィアが急に立ち止まった。
すると、何もかも分かったような笑みを浮かべると、バチリとウインクをしながら言った。
「乙女の秘密を覗き見は良くないわよ?」
そう言うと、地下の通路に向けてサッと姿を消すレヴィア。
ルドルフとルカとルゥ。
先ほどの言葉の意味がわかったのは鑑定を使えるルカただひとり。
今までは誰にもバレずに行使できた神のスキル。
それが彼にはあっさりと看破された。
その事実と、隔絶したレヴィアのステータスにルカは心底戦いにならなくて良かったと安堵し、ドクドクと強く跳ねる心臓の鼓動が五月蝿いくらいに耳の奥で響いていた。
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