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第二章 少年期編

再登場

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「お主忘れておったな?」

 唐突にドアップの状態で問いかけできたのは、一人の老人だった。

 少し懐かしいような、どこかで見た顔だった。

「あ…………神様」
「お主!今の間はワシのことも忘れておったのか!?」
「いえ、そんな事は…」

 あった。

 あれ?どこかで見たけど誰だったか。

 そんな表情を一瞬は浮かべてしまっていた。

「あれ?」

 凝視してくる神の視線に耐えられず、目を逸らすと視界に入った自らの両手。

 さっきまで見ていたすべすべのそれではなく、骨張った大人の手だ。

「ふむ、それも今気付いたか。ここでは魂に刻まれた時間によってその姿が変わる。地球でいた年月のほうが長いのだから当然じゃな。しかし、その年月だけでなく、得た経験の濃さや密度でもそれは変わるんじゃがな。例えばほれ、その髪のように」

 言われて一本抜いてみた髪の毛は金色だった。

「なかなか似合っておるぞ」

 半笑いの顔で言われても全く信用できない。

 それはそうだろう。

 修は特徴のない、のっぺりしたザ日本人という顔だった。

 それが欧米人のように綺麗な金髪になったところで似合うはずもない。

 大学生デビューで張り切っちゃいました。

 そんな風にしか見えない。

「まぁ、冗談はさておき、お主色々忘れておったようじゃな?」

 神の顔を含めて。

「いえ、確かにそうとも言えますが、その件についてはそちらの手落ちもあるのではないですか?あの時、具体的な指示や目標も教えてくれなかったのですから」
「ぐ………開き直りおって。それを言われると痛いんじゃがな」

 修の反論に苦い顔の神。

「それに前回の転生の時の会話から、もう三年が経っています。それまで何のアクションもなかったのですから忘れもします」
「わかった、わかった!ワシが悪かった!」

 更なる修の追撃に、降参したように両手を上げる神。

 その姿を見て修も満足したようだ。

「分かりました。それでは今までの事は水に流して話を聞きましょう」
「ぐ………。なぜワシがこんな言われ方を。まぁよい、そこまで時間がある訳ではないから早速話すが、お主、ここに何故呼ばれたか分かるかの?」

 時間がないという割には質問形式だな、と心の中で呟く修。

「お主忘れたのか?ワシは心が読めるんじゃぞ?」
「はい、覚えています」
「此奴………」

 ぬけぬけと返事をする修に苦虫を噛み潰したような顔をする神。

「ふぅ、もうええわい。実は…」
「あのレヴィアという人物の事でしょう?それに彼の所属するグーラという組織も」
「此奴!!分かっとるではないか!」

 諦めて答えを言おうとした神に被せるように回答する修。

 敢えてやったのが丸わかりなだけに、神もクワッと目を見開いて大声を出して怒った。

「いつぞやの仕返しですよ」
「本当に良い性格をしとるわい………」

 ジト目の神にも動じない修。

「あ~~~、そうじゃ、そうじゃ!そのグーラとレヴィアがマナを大量に消費しておる元凶じゃ!」
「やはり………」

 投げやりに答えた神に対して、修は予想が的中してしまったことに頭を抱えたくなった。

 得てして嫌な予感は的中するものであるが、よりにもよってあの化け物のようなステータスのレヴィアが神から課されたミッションに関係する人物だとは。

 それに当初神から聞いた内容からすると、特定の個人や団体が成しているというよりは、世界規模の流れか何かと修は理解していた。

 そうなると疑問が湧くのは当然で。

「何故あの時に言わなかったのですか?」
「分からなかったんじゃ」
「は?」

 予想外の回答に、阿保面を晒す修。

「だから!彼奴ら、神であるワシすらも欺く方法を使ってきよったんじゃ」
「そんな事があるんですか?」

 あなたは全知全能ではないのか?

 そんな疑問を浮かべながら、修は問うた。

「ある」
「なんと」
「じゃが、ないに等しいほど稀じゃ」

 ではなぜ実際に起こっているのか。

「あのレヴィアという者がお主と同じように異世界から来たからじゃよ」
「え!?」
「それにお主の場合は地球で死んで、転生してこの世界に来たじゃろ?」
「はい」

 こくりと頷く修。

「その場合は神であるワシの所を必ず通ってこの世界に来ることになるが、彼奴は違う」
「というと?」
「うむ。この世界の者たちが異世界召喚によって喚びだしたのじゃ。そのような者の場合、召喚前の世界で得たスキルを持ったままこちらに来る場合もあっての。ワシも知らぬようなものも中にはあるんじゃ」

 異世界召喚に未知のスキル!

 久しぶりのファンタジーワードに心が躍った修だったが、目の前の神の表情は優れない。

「お主にとって字面は良いかも知れぬが、これはその召喚の行使者によっては最悪の結果をもたらすんじゃ」

 何かを思い出すように苦い顔になった神は、そのまま何かを言おうとした。

「それは………」

 ブツン!!!

 と急に、停電したように修の視界が暗転する。

 さっきまで目の前にいた神の姿も一瞬のうちに消えてしまっていた。

「え???」

 重要そうな部分を聞く前の、あまりに急すぎる幕引きに思わず戸惑いの声が漏れる。

 視界も相変わらず真っ暗なままだったが、そのまま瞬きを繰り返していると、ぼんやりと白い天井が見えてきた。

「あ………」

 そこまで来るとようやくここがどこかがわかったのか、はぼんやりと呟いた。

「戻ってきたのか」

 覚醒し切っていない頭で夢の中での出来事をルカは思い出しながら、どうにも釈然としない終わり方に、もやもやだけが募っていった。








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