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第二章 少年期編
ルカの焦燥
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「当面の目標はどうされますか?」
「そうなるよね……」
ダンジョンに入ってすぐ、第一階層の一本道を歩きながら、ルドルフがルカに問いかけた。
気晴らしを求めるように来てしまったダンジョンで、サクサクと討伐出来てしまう中級のモンスター達に安心感を覚え、現実逃避してしまっている自分がいる事をルカも認識していた。
が、いざ目標と問われると答えに窮してしまう。
いや、実際には分かっている。
しかし、その目標を達成するまでにはそれなりの時間が掛かる。
奴がそんな悠長に過ごす時間を与えてくれるのか。
そんな不安も当然ある。
あの神の意図はあれど、この世界の住人になったのだ。
この世界への愛着も芽生えていた。
どうにかして一日も早く強くなれないか。
それがルカの思いだった。
「強くなりたいですか?ルカ様」
「ふぁっ!!?」
そんな事を考えているのが分かってしまったのだろうか。
何気ない感じで核心をついてきたルドルフの言葉に素っ頓狂な声を上げるルカ。
「な、なんで?」
「なんでと申されましても…」
そう返事をしながら、中衛のルゥに視線を送るルドルフ。
ルゥもその視線を受けてコクリと頷いた。
「ルカっち、口に出てたっすよ!」
「うわぁ………」
どうやら無意識に願望が口から漏れていたようだ。
思わずその恥ずかしさに頭を抱えるルカ。
「ま!焦っても仕方ないっすよ!もしルカっちがダンジョンでガンガン鍛えたいって言うなら僕もできるだけ協力するっすから!」
軽い調子のルゥの言葉。
「ありがとう」
ルカも少し柔らかくなった表情で返した。
「では、今日のところはどうされますか?」
二人の会話を先頭で見ていたルドルフは、今日のダンジョンの攻略について問う。
「うーん、第二層をくまなく探索してみたいけど、どうかな?」
「そうですね。一層は全く問題ないですし、二層も先日の感じであれば問題ないでしょう」
ルドルフが頷くと、ルゥもそれに合わせて頷いた。
「じゃあ、行こうか」
一行は間もなく見えて来た二層への入り口を目指して歩いて行った。
◇
「やっ!」
短い掛け声と共に白の刃が閃く。
「ギャッッ!!!」
眉間から綺麗に頭を割られたハウンドドッグは、引き攣ったような悲鳴を上げて絶命した。
「よっしゃーっす!!」
思うような結果だったのだろう、モンスターを討ったルゥは満足げだった。
「ルゥ、ナイス!」
「ありがとうっす。ルカっちの援護も助かったっすよ!」
第一層を抜けて、今ここは第二層。
三人はその第二層の、ルゥが横たわっていた広間の手前まで来ていた。
一層とは違ってモンスターの数は増えたが、危なげなく対処出来ている。
あの時取り返したナイフの調子も絶好調のようだった。
「あ、着いちゃったっすね…」
そうこうしている間に、その例の広間に着いた。
何の特徴もない、ただの広い空間。
そこは教室二室くらいの広さだったが、あの時のようにモンスターがいなければがらんとしていた。
「僕って馬鹿だったっすよねぇ」
広間の中央の、ちょうどルゥが横たわっていた辺りまで歩いていくと、何となくといった感じでその地面に触れるルゥ。
あの時少しでもルカ達が駆けつけるのが遅ければ。
おそらくルゥはこんな風に二人と探索に出かける事もできなかっただろう。
「うん、馬鹿だね。間違いなく」
「な!?そこは普通フォローするとこっすよ!」
「いやいや、そりゃあ挽回出来たりすることならいいけどね?あれはダメでしょ。僕らが来なければ死んでたよ?確実に」
「ゔっ!」
痛いところを突かれたように、腰を折るルゥ。
「僕も人のことは言えないけどさ、慎重にだよ。慎重に」
「うぅぅぅぅ。気をつけるっす~」
今度はルゥが頭を抱える番だった。
その様子を見ながら、ルカとルドルフは二人で顔を見合わせてクスリと笑うのだった。
「そうなるよね……」
ダンジョンに入ってすぐ、第一階層の一本道を歩きながら、ルドルフがルカに問いかけた。
気晴らしを求めるように来てしまったダンジョンで、サクサクと討伐出来てしまう中級のモンスター達に安心感を覚え、現実逃避してしまっている自分がいる事をルカも認識していた。
が、いざ目標と問われると答えに窮してしまう。
いや、実際には分かっている。
しかし、その目標を達成するまでにはそれなりの時間が掛かる。
奴がそんな悠長に過ごす時間を与えてくれるのか。
そんな不安も当然ある。
あの神の意図はあれど、この世界の住人になったのだ。
この世界への愛着も芽生えていた。
どうにかして一日も早く強くなれないか。
それがルカの思いだった。
「強くなりたいですか?ルカ様」
「ふぁっ!!?」
そんな事を考えているのが分かってしまったのだろうか。
何気ない感じで核心をついてきたルドルフの言葉に素っ頓狂な声を上げるルカ。
「な、なんで?」
「なんでと申されましても…」
そう返事をしながら、中衛のルゥに視線を送るルドルフ。
ルゥもその視線を受けてコクリと頷いた。
「ルカっち、口に出てたっすよ!」
「うわぁ………」
どうやら無意識に願望が口から漏れていたようだ。
思わずその恥ずかしさに頭を抱えるルカ。
「ま!焦っても仕方ないっすよ!もしルカっちがダンジョンでガンガン鍛えたいって言うなら僕もできるだけ協力するっすから!」
軽い調子のルゥの言葉。
「ありがとう」
ルカも少し柔らかくなった表情で返した。
「では、今日のところはどうされますか?」
二人の会話を先頭で見ていたルドルフは、今日のダンジョンの攻略について問う。
「うーん、第二層をくまなく探索してみたいけど、どうかな?」
「そうですね。一層は全く問題ないですし、二層も先日の感じであれば問題ないでしょう」
ルドルフが頷くと、ルゥもそれに合わせて頷いた。
「じゃあ、行こうか」
一行は間もなく見えて来た二層への入り口を目指して歩いて行った。
◇
「やっ!」
短い掛け声と共に白の刃が閃く。
「ギャッッ!!!」
眉間から綺麗に頭を割られたハウンドドッグは、引き攣ったような悲鳴を上げて絶命した。
「よっしゃーっす!!」
思うような結果だったのだろう、モンスターを討ったルゥは満足げだった。
「ルゥ、ナイス!」
「ありがとうっす。ルカっちの援護も助かったっすよ!」
第一層を抜けて、今ここは第二層。
三人はその第二層の、ルゥが横たわっていた広間の手前まで来ていた。
一層とは違ってモンスターの数は増えたが、危なげなく対処出来ている。
あの時取り返したナイフの調子も絶好調のようだった。
「あ、着いちゃったっすね…」
そうこうしている間に、その例の広間に着いた。
何の特徴もない、ただの広い空間。
そこは教室二室くらいの広さだったが、あの時のようにモンスターがいなければがらんとしていた。
「僕って馬鹿だったっすよねぇ」
広間の中央の、ちょうどルゥが横たわっていた辺りまで歩いていくと、何となくといった感じでその地面に触れるルゥ。
あの時少しでもルカ達が駆けつけるのが遅ければ。
おそらくルゥはこんな風に二人と探索に出かける事もできなかっただろう。
「うん、馬鹿だね。間違いなく」
「な!?そこは普通フォローするとこっすよ!」
「いやいや、そりゃあ挽回出来たりすることならいいけどね?あれはダメでしょ。僕らが来なければ死んでたよ?確実に」
「ゔっ!」
痛いところを突かれたように、腰を折るルゥ。
「僕も人のことは言えないけどさ、慎重にだよ。慎重に」
「うぅぅぅぅ。気をつけるっす~」
今度はルゥが頭を抱える番だった。
その様子を見ながら、ルカとルドルフは二人で顔を見合わせてクスリと笑うのだった。
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