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第三章 学園編
間一髪
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「大丈夫ですか?」
未だ地面にへたり込んだままの少女に声をかけるルカ。
彼女はしばらくパチパチと瞬きをし、状況が今ひとつ飲み込めていない様子だったが、ルカが再度「あの……」と遠慮がちに声を掛けると、ハッとしたように頭を跳ね上げた。
軽くしゃがみ、様子を伺っていたルカとようやく視線が合う。
歳の頃は4歳ぐらい。
ちょうどルカと同じくらいの歳に見え、その紺色のストレートの長い髪と、タレ目で下がり眉という容姿から、いかにも大人しそうな印象だった。
「ありがとう」
「いえ、礼には及びませんよ。間一髪でしたけど、無事なようでよかったです」
よそ行きの喋り方のルカに対し、未だぼんやりとし、モンスターの襲撃の混乱から覚めていない様子の彼女。
「掴まって下さい」
「……あ、ごめん」
ルカの差し出した手にも一瞬遅れて反応した。
ひんやりと冷えた手が、遠慮がちに触れてくる。
ルカがぐっと力を入れて引き上げると、特に痛めているような箇所もないようで、彼女はすっと立ち上がった。
身長はルカと同じくらいだ。
「お話を聞いても?」
「うん」
「分かりました。あっ!その前にあなた他に誰かいなかったのですか?」
「あ!?」
付け加えたルカの言葉にハッとなる少女。
そして、ぐるっと急に後ろを振り返ったかと思うと、ルカ達を置いて走り出してしまった。
「あっ!」
ルカもルドルフも、これには一瞬反応が遅れてしまい声が漏れる。
しかしすぐに気を取り直すと、今も走って背後の林の方に進んでいく彼女の背中を追った。
幸いなことに、幼い子供の足の速さだっために離されることは無さそうだ。
林の中でも、一際大きな木をぐるりと回り込んだところで彼女も立ち止まったため、ちょうどそこで追いついた。
「急に走り出すと危ないよ」
そう彼女の背中に声を掛けようと口を開こうとしたルカ。
しかし、立ち止まった彼女の背中が小さく震えているように見え、違和感を覚えたルカは咄嗟に口を噤んだ。
そして、それの正体はすぐに分かる。
大きな木の影に隠れるように、無惨に破壊された馬車が横倒しになっており、その馬車の側に少女とそっくりな髪色の男性が倒れていたのだ。
「パパ!!!」
彼女もようやくこの目の前の惨事を理解できたのだろう。
大きな掛け声と共に足を踏み出すと、父と呼んだ男の側に駆け寄り、しゃがみ込む少女。
彼の周りには事切れたゴブリンが複数体地面に倒れており、彼のものか、モンスターのものかも知れない血に地面は染められており、壮絶な戦闘の跡が見て取れた。
「パパ!ねぇ、パパってば!!!」
そんな冷静な観察をルカがしている間にも、周囲には少女の悲痛な声が響き渡る。
彼女が父親の身体を揺り動かすが、反応がないことからすると恐らくは最悪の事態もあり得る。
そんな事をルカが考えいると、横に並んでその様子を見ていたルドルフが徐に自分のバッグを漁り出した。
するとすぐに目的のものがあったのかそれを取り出すと、ついには涙を流し始め嗚咽する彼女の側に近付き、肩に優しく触れた。
「大丈夫ですよ」
「えっ?お、じさん………」
死者を蘇生するような、伝説の霊薬などはルカ達も持ち合わせていない。
と、なれば。
「う………………」
微かに、蚊の鳴くような小さな声が男性の口から漏れる。
「間に合いますよ」
そう笑顔で、少女に優しい笑みを向けると、ルドルフはポーションによる治療を開始した。
未だ地面にへたり込んだままの少女に声をかけるルカ。
彼女はしばらくパチパチと瞬きをし、状況が今ひとつ飲み込めていない様子だったが、ルカが再度「あの……」と遠慮がちに声を掛けると、ハッとしたように頭を跳ね上げた。
軽くしゃがみ、様子を伺っていたルカとようやく視線が合う。
歳の頃は4歳ぐらい。
ちょうどルカと同じくらいの歳に見え、その紺色のストレートの長い髪と、タレ目で下がり眉という容姿から、いかにも大人しそうな印象だった。
「ありがとう」
「いえ、礼には及びませんよ。間一髪でしたけど、無事なようでよかったです」
よそ行きの喋り方のルカに対し、未だぼんやりとし、モンスターの襲撃の混乱から覚めていない様子の彼女。
「掴まって下さい」
「……あ、ごめん」
ルカの差し出した手にも一瞬遅れて反応した。
ひんやりと冷えた手が、遠慮がちに触れてくる。
ルカがぐっと力を入れて引き上げると、特に痛めているような箇所もないようで、彼女はすっと立ち上がった。
身長はルカと同じくらいだ。
「お話を聞いても?」
「うん」
「分かりました。あっ!その前にあなた他に誰かいなかったのですか?」
「あ!?」
付け加えたルカの言葉にハッとなる少女。
そして、ぐるっと急に後ろを振り返ったかと思うと、ルカ達を置いて走り出してしまった。
「あっ!」
ルカもルドルフも、これには一瞬反応が遅れてしまい声が漏れる。
しかしすぐに気を取り直すと、今も走って背後の林の方に進んでいく彼女の背中を追った。
幸いなことに、幼い子供の足の速さだっために離されることは無さそうだ。
林の中でも、一際大きな木をぐるりと回り込んだところで彼女も立ち止まったため、ちょうどそこで追いついた。
「急に走り出すと危ないよ」
そう彼女の背中に声を掛けようと口を開こうとしたルカ。
しかし、立ち止まった彼女の背中が小さく震えているように見え、違和感を覚えたルカは咄嗟に口を噤んだ。
そして、それの正体はすぐに分かる。
大きな木の影に隠れるように、無惨に破壊された馬車が横倒しになっており、その馬車の側に少女とそっくりな髪色の男性が倒れていたのだ。
「パパ!!!」
彼女もようやくこの目の前の惨事を理解できたのだろう。
大きな掛け声と共に足を踏み出すと、父と呼んだ男の側に駆け寄り、しゃがみ込む少女。
彼の周りには事切れたゴブリンが複数体地面に倒れており、彼のものか、モンスターのものかも知れない血に地面は染められており、壮絶な戦闘の跡が見て取れた。
「パパ!ねぇ、パパってば!!!」
そんな冷静な観察をルカがしている間にも、周囲には少女の悲痛な声が響き渡る。
彼女が父親の身体を揺り動かすが、反応がないことからすると恐らくは最悪の事態もあり得る。
そんな事をルカが考えいると、横に並んでその様子を見ていたルドルフが徐に自分のバッグを漁り出した。
するとすぐに目的のものがあったのかそれを取り出すと、ついには涙を流し始め嗚咽する彼女の側に近付き、肩に優しく触れた。
「大丈夫ですよ」
「えっ?お、じさん………」
死者を蘇生するような、伝説の霊薬などはルカ達も持ち合わせていない。
と、なれば。
「う………………」
微かに、蚊の鳴くような小さな声が男性の口から漏れる。
「間に合いますよ」
そう笑顔で、少女に優しい笑みを向けると、ルドルフはポーションによる治療を開始した。
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