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異世界冒険者編
ヤンキー Gランク冒険者になる
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「でっけえ街だな~」
冒険者ギルド近くに停めた馬車から降りると、ケンが感心したようにこぼした。
日本においても大規模な都市を見てきた彼だったが、さっきまで馬車で何もない平原を走ってきたせいか、高い外壁に囲まれ人が住むための場所として区画されているこの街が、より大きな存在として強調されていた。
それに街のスケールだけでなく、人の往来も多いことも影響しているのだろう。
通りは常に人でいっぱいの状態で、綺麗に整地された道に敷き詰められた石畳の上を忙しそうに歩いていた。
車道と思われる道の中央には馬車が走っていいたが、それらとスレスレで触れそうな近さのところを歩いていく人もおり、轢かれないかと思うぐらいだった。
「それはそうでしょう。この街は我が国グランナードでも4番目の規模を持つ街です」
馬車に追いつき、下馬したヘクターが眼鏡の位置を整えながら答えた。
「ほ~、どうりで」
グランナードというこの国の規模が分からないケンだったが、国の4番目の都市というと相当なものだろうと思った。
確かに街に入る時にも、大きな門には長蛇の列を成して入場者が待機していた。
「気に入っていただけましたか?」
ヘクターの補足でさらに感心していると、馬車を降りてきたクラウディアが肩越しに尋ねてきた。
「ああ、いい感じだな」
「よかったです」
「強そうな奴が多くてよ」
「あ、そういうことですか………」
自分の街が褒められて嬉しそうな顔をしていたクラウディアだったが、続けてのケンの言葉に呆れ顔になった。
「クラウディア様、もうこの脳筋は気にしたらダメだよ。戦うことしか頭に無いんだからさ。隊長とのやりとりでわかったでしょ?もういいからさっさと登録やっちゃおうよ」
見かねたアルが冒険者ギルドー周囲の建物の中でも唯一の三階建ーの方を指さして言った。
「そうですね」
その言葉を受けて苦笑いを浮かべながら歩を進めようとするクラウディア。
「お待ちください。彼の登録はアルに任せましょう」
自らが先頭でギルドのドアを開けようとしていたクラウディアを静止するアダン。
「え?でも………」
「そうだな、ゾロゾロいってもあれだし。オカッパ、頼むわ」
「だーかーらー!オカッパじゃなくて、アル!アルだよ僕は!それになんでいっつもこういうのは僕なのさ!勝手に決めないでよね!」
アダンの提案に乗っかりケンが軽い調子でアルに頼むと、それに抗議するようにケンとアダンの両者を睨みながら甲高い声を上げるアル。
「いえ、確かにこの面々で押しかけてはギルド員だけでなく、冒険者達も構えるでしょう。アル、同行してきなさい」
「いや、ヘクター!なんで君にも命令されなくちゃいけないの?」
煽るようなタイミングで追い討ちをかけるヘクターに再びキーキーと声を上げるアル。
「アル、やはり皆で………」
「あ~~~~~。クラウディア様、大丈夫だよ。皆の便利屋、アル君がやってきま~す!」
なおも皆で行こうとしていたクラウディアを遮り、アルが前に出てドアに手を掛けた。
「まあ、クラウディア様はケンの他の能力とか知りたいのかも知れないけど、それは後のお楽しみ、でさ!」
「い、いえ!それは………」
アルの言葉が図星だったのか、返事に詰まるクラウディア。
「ケン、じゃあサクッとやってこうか」
「ああ、頼んだわ」
まだ何かをモゴモゴと言っている様子のクラウディアを放置して、ようやくギルドのドアを開くアル。
ケンも彼女のほうをチラリと見ただけで、アルの後に続く。
ギシッ
ギルド内に入った事を知らせるように、板張りの床が鈍い音を立てた。
その音に釣られてか、中にいた人達の視線が二人に飛んでくる。
アルにとってはそれはいつも通りなのだろう、特に気にした様子もなく正面にあるカウンターに一直線に歩いていき、逆に相手の方もアルとわかると興味をなくしたように視線を戻していった。
その横にいるケンに視線を向けた者もいたが、アルが同伴していることもあってか、特にそれ以上の事をしてくる者はほとんどいなかった。
ただしほとんど、である。
何人かの無遠慮な視線が、入り口から見て左奥に設置されたバーカウンターからケンに向けられているのを彼は感じていた。
ケンも冒険者登録さえしていないが、地球では喧嘩に明け暮れた日々だった。
そうなると当然、歓迎されていない空気や視線というものにも敏感になる。
そのニヤけた顔をぶん殴ってやる、と言わんばかりにケンがバーの方に足を踏み出そうとしたところをアルが静止した。
「ちょっと待とうよ。それはマズイって。向こうは見てきただけだから」
「あ?オカッパ。止めんのかよ」
「いや、僕もね?ほんとの他人だったら君の行動も無視するけど、僕も同伴してる訳だし、それに一応もうケンだって隊のメンバーだし?」
せめてクラウディア様の顔は潰さないようにしてよ、と周りに聞こえないような声で呟いた。
「わかった」
そう言われたら何も言えねぇぜ、と返しながらケンは未だニヤニヤしている連中を無視して、正面のカウンターに向かった。
チッと舌打ちするのが聞こえたが、これも堪える。
「仕事のご依頼でしょうか?それとも新規登録でしょうか?」
受付カウンターの前に立った二人に声を掛けてきたのは、ギルド職員と思われる女性だった。
先ほど絡んできた輩が所属している組織とは思えないほど、身なりはきっちりとしており、綺麗にアイロンの掛けられたベストやシャツ、真面目そうな四角のメガネに黒髪ストレートの長髪というセットが、役所のような印象を与える。
「あ、彼の登録だよ~」
「承知致しました。それではこちらが書類になります。必要事項に記入が出来ましたら登録料の銀貨10枚と適正の確認となります」
「はいはい~」
ゆるい調子で受付の女性とやり取りしていたアルが一枚の用紙を受け取ると、ケンの前に差し出した。
「はい!ってあれか、分かんないよね?代筆する?」
「ああ、頼む」
「はいはい~」
そうだったよね、ゴメンゴメンと呟きながらカウンター横にある机に向かうアル。
「えーっと、名前はケン・モガミでと。出身は不明っと」
「そんなんでいいのか?」
元日本人として、適当すぎる内容に違和感を覚えるケン。
「いいの、いいの。冒険者になる人も色々いるからね!出身が分からないなんて珍しくないよ」
「そうか………」
「そうそう。それで次は得意な得物だけど、棍棒でいいのかな?」
文化・文明の違いを感じ言葉に詰まったケンだったが、アルは気にせずに質問を続ける。
「バットだ」
「え?」
「だからバットだ」
「いや、そんな武器ないから」
お互いに何を言ってるんだ?という表情のケンとアル。
「本当にねえのか?」
「ないよ。君の言ってるのはあれの事?あの馬車に詰め込んでた金属の棍棒みたいなの?」
「棍棒じゃねえ、バットだ」
「あ~~~、わかったわかった。バットねバット」
拉致があかないよ、と心の中で呟きながらアルは公用語で棍棒と書いた。
「それでと、魔法の部分はと…」
「それなら聖…」
「うわっとっと!」
聖魔法と言い掛けたケンの口を慌てた様子で塞ぐアル。
「ちょっと!なに言おうとしてんのさ!せっかくSランクになろうとかそんなことまでしようとしてんのに!」
「あ、わりぃ」
小声で怒るという器用な事をしながらケンを注意するアル。
「もー!絶対この役損してるよ。終わったらクラウディア様になんか特別手当おねだりしよー」
プンプンという様子で怒るアルの様子は怖くも何ともなく、むしろ可愛げだったが、それを指摘するとまた怒り出しそうだったため、ケンは黙っていることにした。
「書類に書くのはここまでだし、魔法の適性も基本五属性と光、闇までだからさ、もうさっさとやってきてよ」
はい登録料、と言いながら記入済みの用紙と銀貨10枚をケンに渡すアル。
「いいのかよ?」
「お金の事?いやいや!あげないよ。これは先払いさ。隊員の給与から天引きしとくかららね」
くれるのかと期待した目で見たケンに、顔の前でバツ印を作って否定するアル。
なんだよ、と呟きながらケンは受付に書類と登録料を渡した。
「はい、ありがとうございます。書類、登録料ともに問題ございません。先ほどお伝えしました適正の検査をもって登録を完了とし、ギルドカードの発行となります」
「わかった」
「はい、それでは適性検査にはこちらの魔道具を使用します。こちらに手を当てていただいてよろしいですか?」
そう言って受付の女性が一枚のタブレットPC大の板を持ってきた。
「んだこれ?」
「はい、こちらが古代の遺跡から発掘された、魔法適性を確かめるための魔道具です」
ただの板じゃねえか、と言いそうになったが、後ろからアルの催促とも取れる咳払いが聞こえてきたためケンは目の前の魔道具に手を伸ばした。
「ピッ!」
手のひらが板に触れると、短く電子的な音が響いた。
「はい、ありがとうございます。それでケン様の適性は………あっ!」
ケンが手を置いた上の部分に表示された文字を見て、驚きの声を上げる女性。
「あ、僕もみた~い。どれどれ~」
早くしろと催促していたアルだったが、ニョキっとケンの肩越しに魔道具の結果を覗く。
それを見た彼は一瞬驚いた表情をし、未だ固まったままだった女性の方に視線を向けると、黙っててねとでも言うようにウインクした後に、イグレシアス家の紋章 ー 波型の剣に炎が纏われている ー が縫い付けられているスカーフを見せた。
「え!!あ………。はい、それではこちらで登録は完了となります」
スカーフの紋章を見てもう一度硬直してしまった彼女だが、ハッと我に返ると慌てた様子で板を操作すると一枚のカードを差し出してきた。
「ケン・モガミ様、改めましてご登録ありがとうございます。今この時点をもって貴方もGランク冒険者です」
「おう、ありがとよ」
特に自分がなにを成し遂げたわけではないが、冒険者という新しい肩書きに柄にもなく胸が躍るケン。
茶色の少し安っぽいギルド証を受け取り、獲物を見つけたとしか思えない獰猛な笑みを浮かべるのだった。
冒険者ギルド近くに停めた馬車から降りると、ケンが感心したようにこぼした。
日本においても大規模な都市を見てきた彼だったが、さっきまで馬車で何もない平原を走ってきたせいか、高い外壁に囲まれ人が住むための場所として区画されているこの街が、より大きな存在として強調されていた。
それに街のスケールだけでなく、人の往来も多いことも影響しているのだろう。
通りは常に人でいっぱいの状態で、綺麗に整地された道に敷き詰められた石畳の上を忙しそうに歩いていた。
車道と思われる道の中央には馬車が走っていいたが、それらとスレスレで触れそうな近さのところを歩いていく人もおり、轢かれないかと思うぐらいだった。
「それはそうでしょう。この街は我が国グランナードでも4番目の規模を持つ街です」
馬車に追いつき、下馬したヘクターが眼鏡の位置を整えながら答えた。
「ほ~、どうりで」
グランナードというこの国の規模が分からないケンだったが、国の4番目の都市というと相当なものだろうと思った。
確かに街に入る時にも、大きな門には長蛇の列を成して入場者が待機していた。
「気に入っていただけましたか?」
ヘクターの補足でさらに感心していると、馬車を降りてきたクラウディアが肩越しに尋ねてきた。
「ああ、いい感じだな」
「よかったです」
「強そうな奴が多くてよ」
「あ、そういうことですか………」
自分の街が褒められて嬉しそうな顔をしていたクラウディアだったが、続けてのケンの言葉に呆れ顔になった。
「クラウディア様、もうこの脳筋は気にしたらダメだよ。戦うことしか頭に無いんだからさ。隊長とのやりとりでわかったでしょ?もういいからさっさと登録やっちゃおうよ」
見かねたアルが冒険者ギルドー周囲の建物の中でも唯一の三階建ーの方を指さして言った。
「そうですね」
その言葉を受けて苦笑いを浮かべながら歩を進めようとするクラウディア。
「お待ちください。彼の登録はアルに任せましょう」
自らが先頭でギルドのドアを開けようとしていたクラウディアを静止するアダン。
「え?でも………」
「そうだな、ゾロゾロいってもあれだし。オカッパ、頼むわ」
「だーかーらー!オカッパじゃなくて、アル!アルだよ僕は!それになんでいっつもこういうのは僕なのさ!勝手に決めないでよね!」
アダンの提案に乗っかりケンが軽い調子でアルに頼むと、それに抗議するようにケンとアダンの両者を睨みながら甲高い声を上げるアル。
「いえ、確かにこの面々で押しかけてはギルド員だけでなく、冒険者達も構えるでしょう。アル、同行してきなさい」
「いや、ヘクター!なんで君にも命令されなくちゃいけないの?」
煽るようなタイミングで追い討ちをかけるヘクターに再びキーキーと声を上げるアル。
「アル、やはり皆で………」
「あ~~~~~。クラウディア様、大丈夫だよ。皆の便利屋、アル君がやってきま~す!」
なおも皆で行こうとしていたクラウディアを遮り、アルが前に出てドアに手を掛けた。
「まあ、クラウディア様はケンの他の能力とか知りたいのかも知れないけど、それは後のお楽しみ、でさ!」
「い、いえ!それは………」
アルの言葉が図星だったのか、返事に詰まるクラウディア。
「ケン、じゃあサクッとやってこうか」
「ああ、頼んだわ」
まだ何かをモゴモゴと言っている様子のクラウディアを放置して、ようやくギルドのドアを開くアル。
ケンも彼女のほうをチラリと見ただけで、アルの後に続く。
ギシッ
ギルド内に入った事を知らせるように、板張りの床が鈍い音を立てた。
その音に釣られてか、中にいた人達の視線が二人に飛んでくる。
アルにとってはそれはいつも通りなのだろう、特に気にした様子もなく正面にあるカウンターに一直線に歩いていき、逆に相手の方もアルとわかると興味をなくしたように視線を戻していった。
その横にいるケンに視線を向けた者もいたが、アルが同伴していることもあってか、特にそれ以上の事をしてくる者はほとんどいなかった。
ただしほとんど、である。
何人かの無遠慮な視線が、入り口から見て左奥に設置されたバーカウンターからケンに向けられているのを彼は感じていた。
ケンも冒険者登録さえしていないが、地球では喧嘩に明け暮れた日々だった。
そうなると当然、歓迎されていない空気や視線というものにも敏感になる。
そのニヤけた顔をぶん殴ってやる、と言わんばかりにケンがバーの方に足を踏み出そうとしたところをアルが静止した。
「ちょっと待とうよ。それはマズイって。向こうは見てきただけだから」
「あ?オカッパ。止めんのかよ」
「いや、僕もね?ほんとの他人だったら君の行動も無視するけど、僕も同伴してる訳だし、それに一応もうケンだって隊のメンバーだし?」
せめてクラウディア様の顔は潰さないようにしてよ、と周りに聞こえないような声で呟いた。
「わかった」
そう言われたら何も言えねぇぜ、と返しながらケンは未だニヤニヤしている連中を無視して、正面のカウンターに向かった。
チッと舌打ちするのが聞こえたが、これも堪える。
「仕事のご依頼でしょうか?それとも新規登録でしょうか?」
受付カウンターの前に立った二人に声を掛けてきたのは、ギルド職員と思われる女性だった。
先ほど絡んできた輩が所属している組織とは思えないほど、身なりはきっちりとしており、綺麗にアイロンの掛けられたベストやシャツ、真面目そうな四角のメガネに黒髪ストレートの長髪というセットが、役所のような印象を与える。
「あ、彼の登録だよ~」
「承知致しました。それではこちらが書類になります。必要事項に記入が出来ましたら登録料の銀貨10枚と適正の確認となります」
「はいはい~」
ゆるい調子で受付の女性とやり取りしていたアルが一枚の用紙を受け取ると、ケンの前に差し出した。
「はい!ってあれか、分かんないよね?代筆する?」
「ああ、頼む」
「はいはい~」
そうだったよね、ゴメンゴメンと呟きながらカウンター横にある机に向かうアル。
「えーっと、名前はケン・モガミでと。出身は不明っと」
「そんなんでいいのか?」
元日本人として、適当すぎる内容に違和感を覚えるケン。
「いいの、いいの。冒険者になる人も色々いるからね!出身が分からないなんて珍しくないよ」
「そうか………」
「そうそう。それで次は得意な得物だけど、棍棒でいいのかな?」
文化・文明の違いを感じ言葉に詰まったケンだったが、アルは気にせずに質問を続ける。
「バットだ」
「え?」
「だからバットだ」
「いや、そんな武器ないから」
お互いに何を言ってるんだ?という表情のケンとアル。
「本当にねえのか?」
「ないよ。君の言ってるのはあれの事?あの馬車に詰め込んでた金属の棍棒みたいなの?」
「棍棒じゃねえ、バットだ」
「あ~~~、わかったわかった。バットねバット」
拉致があかないよ、と心の中で呟きながらアルは公用語で棍棒と書いた。
「それでと、魔法の部分はと…」
「それなら聖…」
「うわっとっと!」
聖魔法と言い掛けたケンの口を慌てた様子で塞ぐアル。
「ちょっと!なに言おうとしてんのさ!せっかくSランクになろうとかそんなことまでしようとしてんのに!」
「あ、わりぃ」
小声で怒るという器用な事をしながらケンを注意するアル。
「もー!絶対この役損してるよ。終わったらクラウディア様になんか特別手当おねだりしよー」
プンプンという様子で怒るアルの様子は怖くも何ともなく、むしろ可愛げだったが、それを指摘するとまた怒り出しそうだったため、ケンは黙っていることにした。
「書類に書くのはここまでだし、魔法の適性も基本五属性と光、闇までだからさ、もうさっさとやってきてよ」
はい登録料、と言いながら記入済みの用紙と銀貨10枚をケンに渡すアル。
「いいのかよ?」
「お金の事?いやいや!あげないよ。これは先払いさ。隊員の給与から天引きしとくかららね」
くれるのかと期待した目で見たケンに、顔の前でバツ印を作って否定するアル。
なんだよ、と呟きながらケンは受付に書類と登録料を渡した。
「はい、ありがとうございます。書類、登録料ともに問題ございません。先ほどお伝えしました適正の検査をもって登録を完了とし、ギルドカードの発行となります」
「わかった」
「はい、それでは適性検査にはこちらの魔道具を使用します。こちらに手を当てていただいてよろしいですか?」
そう言って受付の女性が一枚のタブレットPC大の板を持ってきた。
「んだこれ?」
「はい、こちらが古代の遺跡から発掘された、魔法適性を確かめるための魔道具です」
ただの板じゃねえか、と言いそうになったが、後ろからアルの催促とも取れる咳払いが聞こえてきたためケンは目の前の魔道具に手を伸ばした。
「ピッ!」
手のひらが板に触れると、短く電子的な音が響いた。
「はい、ありがとうございます。それでケン様の適性は………あっ!」
ケンが手を置いた上の部分に表示された文字を見て、驚きの声を上げる女性。
「あ、僕もみた~い。どれどれ~」
早くしろと催促していたアルだったが、ニョキっとケンの肩越しに魔道具の結果を覗く。
それを見た彼は一瞬驚いた表情をし、未だ固まったままだった女性の方に視線を向けると、黙っててねとでも言うようにウインクした後に、イグレシアス家の紋章 ー 波型の剣に炎が纏われている ー が縫い付けられているスカーフを見せた。
「え!!あ………。はい、それではこちらで登録は完了となります」
スカーフの紋章を見てもう一度硬直してしまった彼女だが、ハッと我に返ると慌てた様子で板を操作すると一枚のカードを差し出してきた。
「ケン・モガミ様、改めましてご登録ありがとうございます。今この時点をもって貴方もGランク冒険者です」
「おう、ありがとよ」
特に自分がなにを成し遂げたわけではないが、冒険者という新しい肩書きに柄にもなく胸が躍るケン。
茶色の少し安っぽいギルド証を受け取り、獲物を見つけたとしか思えない獰猛な笑みを浮かべるのだった。
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