貴方と迎える三月は

Iris

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それから、パッと腕が離された。
けれど、不思議と寂しくはなかった。

「それと、辞めないから」
「え?」
「音楽。先生のトコに誘われてんだ。」
「そうだったんですね」

その返答に、安堵の溜息が溢れた。
一時期、音大には行かない選択をした先輩と、先生があまり上手くいっていないことは知っていたが、和解していたらしい。

「先輩は音楽を辞めない」。
それだけでも、幸せだと心底思えるくらい、
私は斗真先輩とともに、彼の人生、それから音楽そのものが好きだったから。

「それに」
「それに?」
「こんなイイもんもらってんだ。辞めれる訳ねぇだろ」

それからの私は泣きっぱなしで、ハッキリした記憶があまりない。

「ちゃんと稼げるようになったら、
その時は、本当に結婚しよう」

ヤケに漢らしかった、先輩のこと、もっと音楽に乗せることができたらな。
そうは思ったけれど。

二人きりの音楽室で、そっと贈られた口付けに、私は応えるだけで精一杯だった。
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