貴方と迎える三月は

Iris

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しばしの沈黙の後、口を開いたのは同時だった。

「結婚しよう」
「音楽続けますか?」

また、沈黙が続いた。
それを破ったのは、私の泣き声だった。

「あーあ、順番が逆になっちゃったな」

諦めた声とともに、段々声量がこちらに近づいてくる気配がして、
気づけば手には何かが握らされていた。

「クサいけど、第二ボタン」
「あ…」
「何で、あげるの、第二ボタンか知ってる?」
「知らない、です…」

深い溜息とともに、今度は大好きな温もりが、私を支配していた。

「一番心臓にちけぇんだ。」
「…はい」
「やるよ、俺なら」
「先輩…」
「何…?」
「卒業しないでください…」
「何それ…」

抱き締めてくれる腕に、より力がこもった気がした。

 「珍しいじゃん、お前がしたいこと言うの」
「…そうですか?」
「そうだよ」
「…」
「おっ、偉い。…最近、謝らなくなったな」
「斗真先輩のおかげです…」

今度は、抱き締める力が弱くなって、代わりにコツンと額がぶつけられた。

「三月になんか生まれなけりゃ良かった」
「…どうしてですか?」
「後、一ヶ月遅く生まれてくりゃ、ひなと、学校でもっと一緒に居られたから」
「…私は、先輩な、先輩も好きです」
「…ありがとう」
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