樹属性魔法の使い手

太郎衛門

文字の大きさ
38 / 68
氷の大陸編

やっとゆっくりできる…かな?

しおりを挟む
 ラモンの家へと戻ってくると、ジャイとネグロはまだラノドンを食べている最中だった。
 レビタもちょうど、肉に手をつけるところで俺も輪に加わった。
 全く食べる気はしないけど。
 さっきのことが頭から離れないのだ。

「ちょっと聞きたいんだけどさ、なんか変な爺さんがいたんだけど知ってる?」
「ン?フゴフゴォ?」

 口に物を入れたまま声を出すレビタ。

 オークみたいな声を出すな。
 飲め!ごっくんしろバカっ!

「ング! ンゴング?」

 ネグロも食べてからしゃべれや。
 こいつらこれで会話出来てんのか?
 喉につっかえたのか、胸を叩いているし。

「ジイザン、イヅボビジニジル」

 ジャイくん、何言ってんの?
 一ミリも全く伝わって来ません。
 『じいさん、いつも、鼻痔煮汁』ね。
 あ、一ミリだけ伝わりましたね。
 すごいすごーい。

「ぷはぁ!  道端にいる爺さんな!  モウロクじいさんのことだろ?」

 耄碌もうろくじいさん?
 レビタは失礼な奴だな。
 たしかに耄碌していたようではあるけど…。
 あれ?そういえばコイツってどこまで見えるんだろ?
 一ツ目って視界が狭いのかな? 

「あの爺さんか。 いつも何かブツブツ言ってよな?」
「うん」

 ネグロの言葉にいつの間にか輪に入っていたラモンが返答する。

「━━お前何してんの?」

 レビタがネグロとラモンの方へ向いた隙に、横からバカにするようにベロベロバーをしてみた。

 そしたらなんと!こちらを見ずにレビタは気づいた。

「……いや、なんとなく」

 視界範囲はかなり広いんだな。
 失礼なのは俺でした。
 レビタのくせにすいません。

「あのお爺ちゃん、未来見る力ある。ミドラ様言ってた」

 ラモンがちゃんと喋るとこ初めてみた!
 レア!

 いやいや、それよりも未来……だと?

「けど、今は耄碌しているの?耄碌してだめなの?」
「ヴェルデ、お前失礼な奴だなー」
「えっ、だって、レビタお前…さっきモウロクじいさんって……」
「もう、ろくに力が使えないじいさん。モウロクじいさんだろ? 誰が耄碌してるじいさんだよ」

 知らねーよ。
 未来が見える。
 力が使えない。
 耄碌している。
   いや、それはしていない。
 
    ………。

 わからん。

「お爺ちゃん、力が使えたのは昔。 今はもう………」
「ンゴンガダ」

 ネグロ、食べながらへーみたいな顔するのやめれ。ンゴンガダ?そうなんだ?

「確かに今はもうあんな感じだしな。無理だろうな…。 で、…それが…フゴフガ? クッチャクッチャ」

 レビタ……。
 しゃべるなら口にモノを入れるなぁー!!
 しかし、俺は怒らない。
 何故なら大人だから。
   大目にみてやろうじゃないか。
 大人だから。

「……いや、ありがとう。 とりあえず大丈夫」
「ゴクンッ。ふーん…まぁいいか。 ネグロ、ヴェルデお前達はそろそろ村帰るか? 」
「ング!」

 ━━パンッ!

「ぼふぇ!」
「あ、ごめん」
 俺は思わずネグロの頬を平手打ちしてしまった。
 だって何か腹立ったから。
 口から肉をはみ出してる様がイラッとしてつい。
 というか、ずっと食ってんな。
 食ってんな…。
 喋りながら食ってんなよ!

「ぐふぉっ、ごほっごほっ━━。 いってーな、おいっ!」

 大人な俺は両手を合わせて謝った。

「ごめんごめん。 思わず…。 あっ! 結構時間遅くなってきたし、カーラも心配して待ってるかも! えっと、じゃあそろそろ帰る?!」
「カーラ? ああ!そうだな!カーラに心配はかけられねぇ! おい、さっさと帰るぞ!!」

 話は逸れたようだ。
 これぞ、テクニック!
 カーラをだしに全てを忘れさせるテクニック!
 あほや。

 ということで、俺達は今日のところは帰ることにした。
 俺は頭の中がまだ整理できていない。
 ローブの奴…箱のこと…。そして爺さんの言葉。
 どれ一つとして、考えたところで答えは出ない。

 あー、甘いものくいてぇ。
 糖分足りねー。

 俺とネグロはレビタ、ラモン、ジャイとミドラに挨拶を済ませると、雪白馬に跨がり村を後にした。
 少し慣れかけたブザンソンの寒さに対し、この村にいたことにより、俺の耐性は無くなってしまった。
 むしろマイナス。
 気温もマイナス。
 マイナス×マイナス=プラス。
 あれ?じゃあ、プラスか。
 あー、なんだか気持ちよくなってきた。
 眠たくなってきた……眠たく……眠……。

 ┼┼┼ 

「━━おいっ! 起きろっ!!ヴェルデ!」

 体が揺らされているのは分かる。
 が、体が怠く、頭もボーッとする。
 知っている天井。
 木製の天井で、古い傷跡がちょこちょこと見える年期の入ったそれは見たことがある。

「━━起きたっ!」

 覗き込んでくるのはカーラだ。
 天井の光が逆光でよく見えないが、声はカーラだった。
 すると、隣からぬっと二つの顔が出てきた。

「ネグロ……鬼ばば……俺はどうなったの…?」 
「あー、危なかった……。お前…、途中から意識なくなってて、俺の体とヒモで縛り付けて戻ってきたんだ。ちなみに一日経ってるからな? あー、まじでやばかっ━━」

 ━━ドンドンドンッ!

 突如、扉を叩く音が鳴り響いた。

「ばば様っ!鬼ばばさまぁー!!」

 扉の向こうが聞こえてくる大きな男の声。
 この村で暮らしている男のようだが。

「なんじゃ騒々しい! 入れっ」

 ハァハァと息を切らしながら入ってくるのは鬼族のおっさん。
 知っているようで知らない顔だ。
 というか、鬼族のおっさんのほとんどを俺はしっているようで知らない。
 おっさんの八割は早朝に狩りにでて、遅くに帰ってくる。二割のおっさんと交代しつつなんだろうけど、おっさん達の顔はみんな似ていて見分けがつかない。
 どのおっさんが俺の知っているおっさんで、知らないおっさんなのか分からない。

「おっ、サン!」
 ネグロが片手を上げる。

 おっさんだけども。
 こいつ、おっさんに向かっておっさんと呼ぶんだな。
 おっさんは、膝に手をつき腰を落としてハァハァだ。
 よっぽど走って来たのか。
 おっさんで体力がないだけなのか。
 いやいや、そんな言い方したら他のおっさんに怒られるな。

「サンよ、どうしたのかえ?」

 ああ、サンね。
 まっぎらわしい。
 おっさん扱いしてごめんなさい。
 悪いのは紛らわしくしたネグロだ。
 そんな名前をしているサンだ。

 と、そんなことよりもだ。

 なんだが、顔色があまりよく無いように見える。

「ハァ…ハァ…。す、すいません。 あの、あの、魔物が…と、突然大量に現れて…おじき達が━━」
「ん…。……ッ! あ、あ…ああ……、 サンよ、 日は色づいているかえ?」
「ばば様……?。 もしかして……」

 カーラはハッとして口を手で押さえている。
 ネグロはよく分からないといった顔だ。

「えっと…色づき? たしか、いつもよりも赤いようでしたが……えっ、もしかして……」
「ああ……、忘れておった……なんてことじゃ…サン、村長には?!」
「ハァ…ハァ…はい…村長にはゲンが伝えにいってます…」
「そうかえ。じゃあ、ネグロ、サンよ、村の者をすぐに広場へ集めよ」
「はい」「は、はい」

 返事をするやすぐに出ていく二人。

「 カーラは小僧とここで待つかえ?」
「…いえ、少ししたら行きます」

 鬼ばばは、首肯するとゆっくりと外へと出ていった。
 残されたのは俺とカーラだけだ。
 開いた扉から見えた外は、昼間の明るさではあったが赤いように感じられた。

「カーラ、どうなってるの?」
「……実は…十年に一度日が離れ赤く染まる日、この世界グラースにおいて魔物が大量発生し、そして活発化するの。 ヴェルは…初めてなのね…。 どこからともなく現れた魔物は、本能のままに生き物へ襲いかかるのよ。 
 日の出より徐々に赤く染まり始め、日が沈むと共に終わるわ。
 私もネグロも生まれて間もなくに経験してるから実際には覚えてないのだけど……」
「そして、それが今日…? 」
「そう……。 ごめんね、ヴェル。 一人で大丈夫? …私も行かなくちゃ…」
「大丈夫だよ。  カーラ……気を付けて」
「うん。 私は戦わないから大丈夫よ」

 そうしてカーラは出ていった。

 俺はというと、体に怠さを感じるのもあり、まあ、そこは魔法を使えばスッキリできるけど、何だか久しぶりに一人でのんびり出来そうだし、このままゆっくりしちゃおうと決め込んだ。
 二度寝じゃ、二度寝。
 一応念のため、村の広場の場所も教えてもらったけどね。
 それと、サンはおっさんじゃなかった。
 ネグロと同い年の十歳だ。
 うん、どうでもいい情報だね。
しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!

nineyu
ファンタジー
 男は絶望していた。  使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。  しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!  リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、  そんな不幸な男の転機はそこから20年。  累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~

eggy
ファンタジー
 もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。  村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。  ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。  しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。  まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。  幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命
ファンタジー
 前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。  しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。  悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。  ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...