樹属性魔法の使い手

太郎衛門

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氷の大陸編

戦いの後

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 死者は四種族合わせて十六人。
 その内半分は鬼族だった。
 巨人族に死者はなし。
 それでも怪我人はそれなりに出ていたが、元々参戦した数が少なかったこともあり、被害は軽微だった。
 その巨人族を抜いた三種族の重軽傷者は、五十名あまりに上った。 
  
 ┼┼┼

 俺も含め、戦場で傷を負った者達は各村へと戻り、養生することとなった。
 養生ということで、俺は村へと戻ったが、もちろん自分で治せたので、村へ到着次第すぐに完治した。
 そして、鬼族の怪我人をまず治し、その足で各村へと周り、重傷軽症問わずに治療していったのだ。
  幸いにして、鬼ババとアスワドの治療に間に合うことができた。
 二人とも生きているのが不思議なほどに傷ついていた。

 俺は治療した者、その家族みんなからそれはもう感謝感謝の嵐だった。
 ここも頼れるのは上薬草だったから、一瞬にして魔法で治す度に大層驚かれた。
 話を聞き付けた村人が行列をなし、気づけば関係ないとこで怪我した者も列びに並んでいた。
 中には歯が痛いだの、頭痛がするだのと言う奴までいたけど、とりあえず魔法はかけてやったさ。
 治ったかどうかは知らないけど。

 それと、倒したのは家臣とはいえ、三王の一角を退けたこともあってか、どこに行っても英雄として持て囃された。
  目立つのがあまり好きではない俺だが、ちやほやされるのも悪い気分ではなかった。 


 ┼┼┼ 

 そして、それから三週間後。

「まあ、バイタは決まりだけど、あとの二人は誰になるんだろうな?」
「バイタがあの眼鏡とやるとして、悪魔王の相手ができるのはアスワド様くらいじゃないのか? あとあのゴツイ奴はお前のとこの鬼ババか?」
「ばかっ! ババ様は既に高年齢なんだぞっ!あと十年したらさらにご老体で戦えるわけないだろ。 なぁ?バイタ」
「あのさ。ネグロもレビタも『バイタ』ってやめてくんないかな? ヴェルデでいいわ」
  
 俺とネグロとレビタは今、三ツ目族の村にいる。
 ラモンの家で顔を合わせて座り、あーだこーだと話をしている真っ最中だ。
 ラモンはミドラの所に行っていて不在。
 ジャイは…知らない。

 それで、どうして俺がこの二人にバイタと呼ばれるようになったか。
 それは、俺の名前を知らない奴等が、俺の杖を見て『ブラク』と呼ぶようになったのが始まりだ。
 戦いの一部始終を見ていた奴等なのか、治療して奴等がなのかは分からないが、『ブラクナムバイタ』を知っている奴がいたようだ。
 使っていた黒い杖はもちろん黒王樹なのだが、そのことを知る者はいない。
 中には下だけをとって『バイタ』と呼んでくる者もいる。
 そっちは完全に面白半分だ。
 コイツらももちろんその類いだ。
 そのフレーズは良くない。
 俺の印象にもよくない。
 だからやめてほしいのだが……。
  
「やだね」「カーラから手を引いたらやめてやるよ」
「………」
  
 コイツらはこういう奴等だ。

 そうそう、カーラは何故かあれから俺に対する態度が柔らかくなった気がする。
 元々そんなツンケンとかしてはいなかったけど、なんだろ…甘えてる?いや、違うな。
 何かこうスキンシップとか多い気ががするし、よく話しかけてくるというか、絡んでくるというか…。
 スカーレットデスペアの影響で精神に異常をきたしてしまったのだろうか。
 まあそれはおいといてだ。
  
「まあ兎に角さ、 誰がやるにしてもこのままではあっさりと負けちゃうよね。 俺も何の成長もしなかったら次はないだろうし。だから修行だ、修行」
「そうだな。 俺も強くなりたいし!バイタに負けてらんねーな」
「ヴェ、バイタっ!  俺が修行して強くなったらカーラを賭けて勝負だ! 」
  
 ビシッと俺を指差すネグロ。
 なんだコイツ。 
 無視だ。無視無視。

「まあ、カーラのことは置いといても、実戦さながらに模擬戦のようなことは沢山したほうがいいかもね」
「そうだな、それはいいかもな! あとは狩りとかしたほうがいいか?」
「それがいいと思うぞ。 レビタ、お前は俺と違って才能がないからな」

 ふふんと言いながら、三本の角を見せつけるネグロ。
 それに対するレビタは単眼族だ。
 それをされたところで悔しさの感情なんて、ひとつも湧かなかった。
  
「鬼族の角のことなんて知らねーし、お前が才能があるとも思えない。 その片鱗も見たことないし、そもそもラモンに見てもらったが大した魔力量無かったし」
「お、俺は! 大器晩成型なんだよ! なんだバカヤロー!」
  
 キレたら負け。
 はい、ネグロの負け。
 大器晩成なんて才能なのかどうかもよく分からないし。 

 そんな話はさておき、十年後の戦いについては、各族の族長村長が定期集会を開きこれからゆっくりと考えていくのだという。
 それと合わせて、温厚な魔族は四種族以外にもいるから、そっちにも働きかけていくらしい。
 噂では、代表を決める武闘大会のようなことも計画中だとか。
 まあ、それはまだ先のお話。

「あ、魔力量と言えばさ、お前のどうなってんの?」
「どうなってんの?とは?」
「あれ? ラモンから聞いてないか?」
「うん」
「あら。  まあ…いいか。 あの日、俺はラモンとジャイと戦いの場にいたんだよ。といっても、相当離れてた場所から見てただけなんだけどな。ちょうど着いたあたりで空にアイツらが見えさ、それでラモンが魔力量を確認したわけなんだけど、そこで初めてお前の魔力量が分かったんだってさ」
「……えーっと…というと?」 
「見れたんだよ、お前の魔力が。遠く離れた所からなら確認できたわけ」
「……えっと……」
「だから、お前の魔力量が多過ぎて、近くだとすっぽり入っちゃってたから分からなかったんだよ!察しが悪いな━。 緑のデカイやつが遠くから見たら、目の前まできてるのが見えたんだってよ。緑ってお前のだろ? デカ過ぎて、誰のかわからないけど、お前しかいないじゃん」
「まあ確かに樹属性って俺しかいなそうだけど……俺か━?」

 いくら魔法使っても魔力切れしないなとは思っていたけど…。
 でも俺なのかな。
 正確な数字が見れないし、何とも言えないよな。 
 やっぱりそのうち数字で見れるやつで計ってほしいな。
  
「ちなみに空には黒、黒、紫が見えたって。一つデカイ黒があったらしいけだど、緑の方が圧倒的にデカかったってさ!」
「ふ━ん」
「ふーんって、お前…」
「いやさ、実感わかないし、俺なのかよく分からないしね…」
「まあ確かにな━」
「あ、そういえばさ、アイツらって空飛んでたけど、あれって魔族はみんなできるの?」
「あー、あれはな……」

 何だ?
 何だかあまり言いたくなさそうだな。
 地雷だったか?

「ごめん。言いたく無ければいいけ━━」
「……中位魔族以上にだけ認められた力だよ」
「えっ?」
「━━だから、それが下位魔族と中位魔族以上との境目だ。あれは…あの飛行術が使えるのは中位魔族以上である証なんだよ」
「━━それは違うぞ、レビタよ」
  
 ラモンに肩をかりながら音もなく入口から入って来たミドラ。
 相変わらずの縫われた目はホラーだ。
  
「ミドラ婆っ!」
「フォッフォッフォ。 人族の客人よ、この度はご苦労であった。 皆を代表してお礼を言うぞ」

 頭を下げるミドラ。
 しかし、その先にいる相手はネグロである。
  
「ミドラ様、そっちはネグロ。 人間こっち」
  
 すると、ミドラはすまんすまんと言いながら、俺に向けて改めて頭を下げた。
  
「全然いいんですけど、それより、違うというのは?」
「ああ、そうじゃったな。飛行術というのは、本来、魔族なら誰でも使えるものなのじゃ。ただし、膨大な魔力を使うから実力の無い者に使えんだけなのじゃ」
「え、そうなの?! ……それは知らなかった」
「レビタよ、それにのぉ、下位や中位というのは勝手に奴等がそう言っているだけじゃ。 そんな区分けなど存在せんのじゃて。かつて、天魔戦争が行われた時、羽を持つ天界人に対抗するために飛行術は開発された。 それは魔族が魔族のために作り、細胞へと刻み込んだ。ワシには仕組みはわからんがの。そして、それは代々血で受け継がれ、今では知性があり、力がある魔族なら誰でも持ちうる能力となったのじゃ」

 へー、細胞へと刻み込むね。
 刻印魔法の類いなのだろうか。
 細胞レベルで刻印とは、昔の魔族は凄かったんだな。
 今がどうのってことではないけど、少なくとも、それをしなければならないほどに追い込まれていたのか…? 
 空から一方的に攻撃されたら確かにヤバイな。
 あれ?もしかして、アイツが空を飛ぶ選択してたら俺は負けてたのだろうか。
 俺の攻撃範囲外から酸を降らされてたら?
 うん、もしかしてじゃなく、確実にやられてたな…。

 しかし、羽か…天界人とはどんな感じなんだろか。
 いつか見てみたいな。 
 俺が飛べたら天界人の大陸にすぐにいけるんだろか。
 というか、飛べるなら帰れるんじゃないか!

「ミドラ様、俺には飛行術は使えないんですよね?」
「うーむ……。人族には同じ飛行術を使うのは難しいじゃろな。  若人よ、お主の属性はなんじゃ?」
「俺は、メインが樹属性で、風属性も少々…」
「うむ。 もしかしたらじゃが、風属性ならいけるかもしれんの。 理論上でじゃが…」
  
 な、なんとっ!
 まさかのなんと!
 ここにきて光明が見えた。

「風魔法にはそういうのがあるってことですか?」
「あるというか、ないというか…。 風魔法に飛行魔法はない。じゃが、浮遊魔法はある。飛行と浮遊の違いは分かるかの?」
「はい。飛行なら飛んで動けるけど、浮遊は浮かんでいるだけですよね?」
「ま、まあそうじゃな。そして、吹き飛ばす風魔法もある。ということはじゃ、浮遊魔法を維持しつつ、吹き飛ばす魔法を使う。無詠唱や詠唱破棄できるなら理論上は可能なのじゃが……今までにできた奴をワシは見たことはない…」
「確かに、それはキツそうですね…。浮遊魔法は使用中も魔力を消費していくし、そもそも浮かんでいるのを維持するのが難しい。 そこへきて、もう一つの魔法を使うのか…」
「そういうことじゃ。 まあゆっくり考えるとええ。エエ。では、ワシは戻るからの。 ゆっくりしていくのじゃぞ、フォッフォッフォ」 

 ふぅ。
 浮遊魔法か。
 一応、使えるには使える。
 まだ維持できずに、ゆっくりと落ちてっちゃうけど。
 吹き飛ばす魔法を使えるようにもならなくちゃ。
 …よし、いける!帰るぞ!ひたすら練習だな。

「ネグロ、レビタ。 そういうわけだから、俺は空を飛べるように修行してくるわ」
「え?今から?お前がやるなら俺もやってやる! バイタには負けてらんねー」
「レビタがやるなら俺もやるぞっ! カーラを乗せて飛ぶんだ!」
  
 君達はまず魔力量を増やすところからだな。
 どうやって増やすのだろう?
  
 とにもかくにもこうして俺達は、強くなる為の修行、ではなく、空を飛ぶ修行をすることとなったのだった。
  
 来る日も来る日もひたすら練習だ。
 肉を食べ、力を付け、イメージを大事にひたすら魔法を使い続けた。
 元々、メインが樹属性の俺には、それはもう考えていたよりも難易度は相当高く、気づいたときには、ここにきて五年の歳月が流れていた。
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