転校サバイバーズ

藤沢 南

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扇町中学編

中学最後の夏

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中3の夏休みは、テニス部も引退したので、暇な時間が多かった。

思い起こせば、楽で新聞配達とも両立できるからという理由で選んだ軟式テニス部だったが、大量の入部者の人数を減らすために、急にハードな練習になってしまい、面食らったのは笑い話だった。
そしてそのしごきに耐えた根性ある少年たちが10人ほど。その中に入れた僕とクマはさらにきついテニス部を思い知ることとなった。

休みはテスト期間の5日前から。月一の日曜日だけが定休日というハードな部活になり、ずる休みをすると、他のメンバーからの叱咤が飛んでくる。おかげで鍛えられたものの、クマとジョニー以外には気を許せなかったのはまた悲しい現実だった。なんとか続けられたのは、クマのおかげだったと言うべきか。クマは成績は振るわない反面、あまり人間関係で悩まない男だった。そんなクマが僕の相棒でいてくれた事は、幸せだった。

しかし、埼玉時代から続けている新聞配達は中2ごろからだんだん日数を減らし、テニスの引退直前に辞めてしまった。今は臨時のヘルプのみになった。でも、仕方ない、部活も遠泳大会の練習も忙しかった。そしてジョニーの相手もあった。

テニス部引退後の夏休みは、ジョニーの提案で、広島の原爆ドームの前で、観光客の外国人に英語で無料でガイドをする事にした。ジョニーは英語が堪能で、最初のうちは僕は彼の話す英語を聞いているだけだったが、そのうちに慣れていき、かなりブロークンな英語だが、夏休みの終わりには少しだけど話せるようになった。ジョニーを家に呼んだことがあったが、母親がとても喜んでくれたのを覚えている。
「孝典に、埼玉の時のような友達ができて嬉しいわ。」
ちょっと引っかかるようなコメントで、母はジョニーの事を歓迎した。母は頭のいい子が大好きだった、という事だろうか…。

これから、どこの高校を受けるんだろうか。ジョニーも僕も。

深川は、名門の元町高校一本に絞っているようだ。僕はそこまで上の高校は望めないので、広島仁志高校辺りかな、と漠然と考えている。それでも広島市では3番目ぐらいの学校だ。
気になるのは、公立中学に戻ってきた杉原だった。元町高校なら、附属中の生徒も受ける学校だ。国立中学は、エスカレーター式で上の高校に進むという進路だけでなく、外部の高校を受けることも可能のようだ。
『またあの女どもが一緒になるのか』
仲の悪い女同士が同じ高校に行くのは、ちょっと心配だった。春田と杉原の例もある。

水軍のお嬢、村上はどうやら広島仁志高校を志望しているようだ。体育はじめ実技教科は得意なので、いかにして主要5教科を上げていくかが課題のようだ。親は水産高校を勧めているようだが、本人は『天下を取る』のが目標なので、普通科高校を希望するようだ。

夏休みの終わり。8月31日、僕とジョニーは原爆ドーム前での自発的なボランティアを終え、2人で打ち上げ会を行った。このおかげで英語力も上がった?と思われるが、いかがなものだろうか。

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